「頑張っています」が通じない組織の作り方──飯山辰之介/SHIFT解剖 究極の人的資本経営/成果の数値化

「あのメンバーは確かに頑張っているんだが、何をどれだけやったかが見えにくくて……」。評価の時期になるたびに、こんな言葉が頭をよぎる管理職は少なくありません。頑張りを認めたい気持ちはある。でも数字がなければ、他のメンバーとの比較もできないし、上位職への説明もできない。その曖昧さが積み重なると、チーム全体の評価への信頼が揺らいでいきます。

本書『SHIFT解剖 究極の人的資本経営』が紹介するSHIFTの組織文化は、この問題に対して冷徹なほど明確な答えを持っています。「数値で示せないのは諦め」――間接部門を含むあらゆる業務成果にKPIを設定し、自らの価値を数字で証明することが求められる。著者の飯山辰之介氏はその文化を、価値観の異なる多様な人材が共通言語でフェアに議論するための基盤だと位置づけています。

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「頑張っている」という言葉が組織の議論を止める理由

日本の職場では長らく、努力の姿勢や態度を重視する評価文化が根付いてきました。遅くまで残っている、積極的に動いている、雰囲気を明るくしている――これらは確かに職場に価値をもたらしますが、「どれだけ貢献したか」を議論するための共通言語にはなりません。

多様な背景を持つメンバーが集まるチームほど、この問題は深刻になります。価値観が異なれば「頑張る」の定義も変わります。ある人にとっての全力と、別の人にとっての全力は、まったく別の基準で測られています。共通の数字がなければ、評価の議論は水かけ論になるのです。

SHIFTが「数値化」を組織文化の中心に据えたのは、この問題を解決するためでした。数字は、価値観の違いを超えて誰もが理解できる唯一の共通言語です。

総務部門のKPIが示す「数値化の本質」

本書が特に印象的なのは、間接部門――たとえば総務――においても数値化を求めているという点です。総務の業務成果を数字で示すことは難しい、と多くの人が思うでしょう。しかしSHIFTでは「特定の作業を何日短縮したか」という形でKPIを設定します。

この発想の核心は、「価値を生み出しているという事実」と「その価値を他者に伝える能力」を切り離さないことにあります。どれだけ良い仕事をしていても、それが見えなければ組織への貢献として認識されません。逆に言えば、自分の仕事を数字で語れる人は、同じ成果を出していても評価で圧倒的に有利になります。

これはプレゼンテーションの力そのものです。「先月の改善で手続きが3日短縮されました」と言える人と、「業務効率が上がったと思います」と言う人とでは、伝わる説得力がまるで違います。

数字で語ることが部下の信頼を生む理由

数値化の文化が部下の信頼に直結するのは、評価の根拠が透明になるからです。「あなたの貢献はこの数字で見えている」と伝えられる上司と、「なんとなく頑張っていたね」と言う上司とでは、部下が感じる安心感がまるで異なります。

あなたが部下の評価をするとき、どれだけ具体的な数字を持っていますか。商談件数、課題解決にかかった日数、チームの問い合わせ対応率――こうした数字を日頃から把握していれば、評価の場面でも根拠のある言葉が出てきます。「これだけの数字を出してくれたから、この評価になった」という説明は、部下にとって最も納得しやすい言葉です。

数字で語ることは冷たい管理ではなく、部下の努力を正確に認める行為です。

「フェアな議論」のための共通言語を作る

本書が強調するのは、数値化がフェアな議論の基盤になるという点です。チームの中にエンジニア、営業、企画と異なる役割のメンバーが混在していても、それぞれの貢献をKPIで語れるなら、横断的な比較と議論が可能になります。

中間管理職として会議で発言するとき、数字を持っているかどうかで発言の重みが変わります。「うちのチームはこの指標でこれだけ改善しました」という一言は、感想ではなく事実として場を動かす力があります。逆に数字なしの意見は、どれだけ正しくても「主観」として扱われるリスクを常に抱えています。

自分の主張を通したいなら、数字を先に準備する。その習慣がプレゼンの質を変え、会議での存在感を変えます。

家庭での「見えにくい貢献」を数字にしてみる

数値化の発想は、家庭のコミュニケーションにも応用できます。たとえば、配偶者が担っている家事や育児のタスクを一度書き出して、週に何時間かかっているかを計算してみることです。感謝の言葉は伝えていても、実際の負担の大きさを数字で確認したことがない人は多いのではないでしょうか。

「いつもありがとう」という言葉に「週に20時間分の仕事を担ってくれていると気づいた」という具体性が加わると、相手の受け取り方が変わります。数字は冷たいものではなく、見えにくい貢献を可視化して伝える道具です。職場での評価文化と同じ原理が、家族への感謝にも機能するのです。

「数字を持つ習慣」が積み重なるものを変える

本書が描くSHIFTの文化は、個人への要求として見れば厳しいように映ります。しかし裏返せば、数字を持っている人間が必ず報われる環境でもあります。

あなたのチームでも、今日から始められることがあります。週次の振り返りで「何件」「何日」「何パーセント」という数字を一つ入れるだけで、議論の質が変わります。部下にも「成果を数字で話す習慣」を促すことで、チーム全体のプレゼン力と評価の透明性が上がっていきます。

「頑張っています」ではなく「これだけやりました」と言える組織は、強いだけでなく、働いている人が報われやすい組織でもあります。その文化をチームの中に少しずつ作っていくことが、信頼されるリーダーへの着実な一歩になるのです。

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NR書評猫1825 飯山辰之介 SHIFT解剖_究極の人的資本経営

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