毎朝、長いToDoリストを眺めてため息をついていませんか。会議に追われ、メールに埋もれ、気づけば夜。今日も何も達成できなかったという虚しさだけが残る。GoogleやYouTube出身のジェイク・ナップとジョン・ゼラツキーが書いた『とっぱらう──自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」』は、そんな私たちに革命的なアプローチを提案しています。それは「今日、最も大切な1つのこと」に集中するという、驚くほどシンプルな方法です。
ToDoリストという呪縛から解き放たれる
私たちは長年「生産性を上げることが良いことだ」と信じてきました。より多くのタスクをこなし、より多くのメールに返信し、より多くの会議に参加する。しかし本書は、この考え方そのものに疑問を投げかけています。
本書が提案するハイライトという概念は、驚くほどシンプルです。それは、長大なToDoリストの代わりに「その日に最も重要な1つの仕事」を選ぶ習慣で、そのタスクをやり遂げられればたとえ他が未完でも満足感が得られると説きます。
あなたは今日、何を達成したいですか。プレゼン資料の完成でしょうか。部下との大切な面談でしょうか。それとも家族との夕食の時間でしょうか。ハイライトは仕事だけに限りません。人生で大切だと思うこと全てが対象になるのです。
3つの基準で選ぶ、あなただけのハイライト
ハイライトの選択には三つの基準があります。それは「緊急性」「満足感」「喜び」です。
締め切りが迫っている重要な仕事でもいいし、達成すると充実感を得られるタスクでもいい。あるいは、純粋に楽しいと感じる活動でも構わないのです。この柔軟性こそが、本書のアプローチを持続可能なものにしています。
例えば月曜日は緊急の提案書作成、火曜日は部下との信頼関係を深めるための1対1面談、水曜日は新しい企画のアイデア出し。毎日違っていいのです。大切なのは、その日あなたが「これをやり遂げた」と言える1つを選ぶことです。
完璧を目指さない勇気が成功への鍵
本書の真髄は、完璧を求めないことにあります。87の戦術が提案されていますが、すべてを実践する必要はありません。むしろ、自分に合った戦術を選び、実験し、調整していくプロセスこそが重要なのです。
多くの時間術の本は「意志力を鍛えよ」と説きます。しかし本書のアプローチは根本的に異なります。著者たちは、集中力とは意志力の問題ではなく、注意散漫になりにくい環境を構築することだと主張しています。
スマホを別の部屋に置く。通知をオフにする。メールチェックの時間を決める。こうした小さな環境の変化が、あなたのハイライトに集中する力を劇的に高めてくれるのです。意志の力で戦うのではなく、環境を味方につける。これが現代人に必要な知恵なのかもしれません。
40代管理職が実践すべき具体的ステップ
部下とのコミュニケーションに悩み、会議での存在感を発揮できないと感じているあなたへ。ハイライトはあなたの味方になります。
朝、出社したら最初にやることを決めてください。「今日のハイライトは、田中さんとの1対1面談で信頼関係を築くこと」。そう決めたら、その面談の準備に最優先で時間を使うのです。メールは後回し、緊急でない会議は断る勇気を持ちましょう。
ハイライトを決めることで得られる最大の恩恵は、選択と集中です。あれもこれもではなく、たった1つ。その1つをやり遂げることで、あなたは確実に前進している実感を得られます。その積み重ねが、数か月後、数年後に大きな違いを生むのです。
家庭でもハイライトは機能する
仕事だけではありません。家庭生活にもハイライトは応用できます。
「今日のハイライトは、子どもと30分じっくり話すこと」。そう決めれば、スマホを見る時間、テレビを見る時間よりも、その会話を優先できます。妻との関係がぎくしゃくしているなら、「今日のハイライトは、妻の話を遮らずに最後まで聞くこと」でもいいでしょう。
ハイライトは、あなたの価値観を行動に変える装置です。大切だと思っていることを、実際に大切にする時間に変えてくれるのです。
満足感という報酬が習慣を作る
なぜハイライトは効果的なのでしょうか。それは、達成感という報酬が確実に得られるからです。
10個のタスクのうち7個しか終わらなければ、未完了の3個が気になります。しかし1個のハイライトを完了すれば、100パーセントの達成です。この心理的な満足感が、翌日もまたハイライトを設定しようという意欲につながります。
本書は単なるテクニック集ではありません。それは、現代社会の「忙しさ信仰」に対する静かな反逆であり、本当に大切なことに時間を使う勇気を与えてくれる指南書なのです。

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