毎日の料理に疲れていませんか?土井善晴が教える「おいしくなくていい」という救い

毎日の食事作りに追われていませんか。朝は家族の朝食を用意し、夜は仕事から帰って夕食の支度。休日も三食作らなければならず、気づけば料理が重荷になっている。そんなあなたに、料理研究家の土井善晴さんと政治学者の中島岳志さんが対談した『料理と利他』は、料理に対する考え方を根本から変えてくれる一冊です。本書が提案する「家庭料理はおいしくなくていい」という言葉は、多くの人に驚きと同時に、深い安心感を与えてくれます。

Amazon.co.jp: 料理と利他 (MSLive!Books) : 土井善晴, 中島岳志: 本
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家庭料理はおいしくなくていい

土井善晴さんがテレビの料理番組でよく口にする「いい加減でいいんですよ」という言葉に救われた女性が多くいました。中島岳志さんは、そこに利他の精神を見出しています。

料理を作るのは一汁一菜の仏師が一月の中から仏様を取り出すような感覚で、力ずくでなく「おのずと」料理ができてくるというのが理想的だと土井さんは語ります。一汁一菜の料理人には共通する「おのずと」料理ができてくることのできる、「家庭料理の思想」が詰まった一冊なのです。

レシピの分量主義とは対極にあるこの発想は、食材を無理に沿わせて作るのではなく、食材それ自体を尊重して整わせることを料理と考えればよいのです。おいしくておいしくなくても、それは素材まかせなのだから、さほど落ち込む必要もありません。

料理に込められた「自然に沿う」という思想

土井さんは「自分というものをなくすところに日本文化がある」とおっしゃっています。料理を作る人も食べる人も、自力やはからいからではなく、無名性のなかで淡々と仕事をしていくうちに他力の美しさが現れてきます。

例えば親鸞は、自力によって賢しらなはからいを苦しめていると認め、自然法爾の思想の「自」は「みずから」ではなく「おのずから」を意味しているという見解は、二つの料理のベクトルの違いをよく表しています。

素材に無理に沿わせて作り出すのではなく、素材それ自体を尊重して整わせることを料理と考えれば、おいしくておいしくなくても、それは素材まかせなのだから、さほど落ち込む必要もないのです。毎日の生活の中で料理を作る側が疲れないというのはとても大切なことです。

作る人と食べる人の関係に宿る利他

「自分ー作る人ー食べる人」という関係のあいだに、利他がはたらきます。土井善晴さんは、中島岳志さんとの対談の中で、料理と利他の関係を浄土真宗の「聖道の慈悲」と「浄土の慈悲」の話から解き明かそうとします。

料理を作ろうとして作る料理法ではない、おいしいものはもともとおいしいからそれを整える、他力の料理法であるというのです。しかし、レシピの分量主義とは対極にあるこの発想は、言い換えれば常に素材と対話するということになります。

作り手の自力やはからいからではなく、無名性のなかで淡々と仕事をしていくうちに他力の美しさが現れてくるのです。素材そのものの力を信じて、それを邪魔しない。そこに「おのずと」料理ができてくる喜びがあるのです。

現代人が失いつつある「おのずから」の感覚

土井善晴さんは疲れている時は冷蔵庫にあるもので一汁一菜でいいと言っています。毎日、ハレの食卓を作らなければとプレッシャーを負う必要はないと言っているのです。

事実、土井善晴さんは河井寛次郎の「民藝」に出会い、そこからそれまで料理人として上に見ていた家庭料理に対する考えを改め、家庭料理こそ民藝だという料理感を持ちます。

作業や仕事ではなく、自力やはからいからではなく、無名性のなかで淡々と仕事をしていくうちに他力の美しさが現れる。そして、自然に沿って料理で作るのと、常に素材と対話する必要があります。けれども、わからないければ常に素材と対話するのではなく、そういった質を感じたときの受け答えや態度を見ているのではないでしょうか。

和食の考え方にある利他の精神

中島岳志さんは対談の中で、料理と利他の関係を浄土真宗の「聖道の慈悲」と「浄土の慈悲」の話から解き明かします。土井さんのこの提唱は、いささか衝撃的であった「家庭料理はおいしくなくていい」という言葉にもつながっているようです。

いさぎよく思って作る料理法ではなく、おいしいものはもともとおいしいからそれを整える、他力の料理法であるという発想。おいしくて栄養バランスがいい料理を作ろうとして作る料理法ではないのです。

和食の考え方は、素材の持っている本来の力を信じることにあります。だからこそ「いい加減でいいんですよ」という言葉が生まれるのです。完璧を目指さなくていい、素材に任せていい。そんな土井さんの言葉は、多くの人の心を軽くしてくれます。

料理を通して見える日本文化の本質

そして、そこからそれまで料理人として上に見ていた家庭料理に対する考えを改め、家庭料理こそ民藝だという料理感を持つようになりました。そこから、自然に沿って料理ができるのと、咀嚼を取り戻したいという思惟が大きくなったのも事実です。

まなざしから始めよう、です。料理をする側が病気になっては元も子もないのですから。和食の考え方は、素材の持っている本来の力を信じることにあり、だからこそ「いい加減でいいんですよ」という言葉が生まれるのです。

本書を読むことで、料理をもっと楽しめるようになります。料理をしたくなります。料理をよりほぼ正確にすべくより深く知りたくなります。そして、食を通して生き方を考えるきっかけになるはずです。料理と利他の関係を知ることで、あなたの毎日がもっと楽になり、家族との関係も良くなっていくことでしょう。

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NR書評猫908 土井善晴, 中島岳志 料理と利他

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