職場で女性部下から「体調不良」と言われたとき、あなたはどう対応していますか?「また休むのか」と思ったことはありませんか?実は、日本の職場では月経痛や更年期症状など、女性特有の健康課題が長年タブー視されてきました。その結果、優秀な女性社員のパフォーマンス低下や離職を招いているのです。産婦人科専門医の吉岡範人氏による『フェムテック 女性の健康課題を解決するテクノロジー』は、こうした状況を打破するヒントを与えてくれる一冊です。本書を通じて、管理職として、そして家庭の一員として、女性の健康課題にどう向き合うべきかを考えていきましょう。
日本でフェムテックが普及しない本当の理由
フェムテックとは、女性の健康課題をテクノロジーで解決する取り組みのことです。2025年には世界市場規模が約5兆円に達すると予測される成長分野でありながら、日本での普及は遅れています。その背景には、単なる技術の問題ではなく、日本特有の構造的な壁が存在するのです。
本書が指摘する最大の問題は、法規制と文化的慣習という二重の壁です。欧米では当たり前のフェムテック製品やサービスが、日本では簡単に導入できません。それはなぜでしょうか。
まず薬機法や医療機器規制の問題があります。企業側は医療品として扱われると莫大な時間とコストがかかるため、雑貨として販売せざるを得ません。しかし雑貨では終末市場での信頼を得られず、フェムテックが普及していかないのです。現在の法令では、せっかく新しいフェムテックの製品やサービスが考え出されても、医療器具や医療サービスとして認可を得るのに膨大な時間とコストが掛かります。
タブー視される女性の健康課題が生む損失
日本では3割負担で診療を受けられる医療サービスへのアクセスの良さがあります。それにもかかわらず、婦人科のハードルが高いのは、もっと心理的な部分が大きいのです。婦人科をより身近にするには、メディアも上手く活用すべきだと本書は指摘しています。
職場でのタブー視はさらに深刻です。「ピルはあくまでも避妊のためのもの」「膣に何物を入れるなんてもってのほか」といった偏見的な新商品もタブー視されてしまい、状況は相変わらずです。理系の女性研究開発者や製品企画者が増えると拡張も進むように思いますが、女性研究開発者や製品企画者が増えても、男性では進まないような発想で新しい製品が生まれる可能性があります。
あなたの職場ではどうでしょうか。女性社員が月経痛で辛そうにしていても、「そういった話をタブー視する雰囲気があったり、話せるが無理解で否定的だったり、謎の母乳神話により液体ミルクの導入が遅れていたりする」といった状況が、実は会社の生産性を大きく下げているのです。
保険制度の壁とエビデンス不足が招く悪循環
日本は3割負担で診療を受けられる医療サービスへのアクセスの良さがあります。それにもかかわらず、フェムテック関連製品を消費者側が受け入れる土壌も成熟していないのです。
例えば「ピルはあくまでも避妊のためのもの」という画期的な新商品も、タブー視されて状況は相変わらずです。企業や医療者、消費者を含めたすべての人がフェムテックには及び腰なのです。
さらに深刻なのは、日本の保険医療制度とエビデンスの弱さです。日本では3割負担で診療を受けられる医療サービスへのアクセスの良さがある一方で、フェムテック関連の診療や製品は保険適用外のものが多く、消費者の経済的負担が大きくなります。また、婦人科へのハードルが高いのは、心理的な部分が大きいのです。
企業が今すぐ取り組むべき職場環境の改善
管理職として、あなたができることは何でしょうか。本書は、単に製品やサービスを導入するだけでなく、理解と対話の環境を作ることの重要性を説いています。
女性たちが少しでも楽に快適になるために、テクノロジーとその産物であるフェムテックが有効であるのなら、それを利用しない手はありません。エビデンスが少ないというのなら、利用しながら作り上げていけばよいというのが筆者の主張です。
具体的には以下のような取り組みが考えられます。まず、女性社員が体調不良を伝えやすい雰囲気づくりです。「大丈夫か」「無理しないで」という一言が、どれだけ救いになるか想像してみてください。
次に、在宅勤務やフレックスタイム制度の活用です。月経痛が激しい日に自宅で仕事ができれば、休まずに済むかもしれません。
そして最も重要なのが、管理職自身の知識のアップデートです。本書を読むことで、月経、妊娠、出産、更年期といった女性のライフステージごとの健康課題を理解できます。この知識があるだけで、部下との信頼関係は大きく変わるでしょう。
家庭でのコミュニケーション改善にも役立つ視点
本書は職場だけでなく、家庭でのコミュニケーション改善にも役立ちます。妻が「しんどい」と言ったとき、あなたはどう反応していますか。
フェムテックに関連する相談も多く寄せられるといいます。女性たちが少しでも楽に快適になるために、テクノロジーとその産物が有効であるのなら、それを利用しない手はありません。
妻の更年期症状や、娘の月経に関する悩みを理解することは、家族との関係を良好にする第一歩です。本書で学んだ知識を活かして、家族が抱える健康課題に寄り添う姿勢を持つことができます。
「こういった話をタブー視する雰囲気」を家庭から排除し、オープンに話せる環境を作ることが、充実した家庭生活につながるのです。
なぜ男性管理職こそフェムテックを学ぶべきなのか
女性活躍が叫ばれる中、多くの男性リーダーや経営者の方に、どうすれば女性の体調を良くできるか、パフォーマンスが良くなるか、またどのような環境が必要なのかを理解していただきたいとの願いで本書は執筆されています。
企業や医療者、消費者を含めたすべての人がフェムテックには及び腰なのですが、この動きをもっと加速してほしいと感じます。QOLは大事だし、それは本人だけではなく社会全体での理解があってこそ実現するものだと思っています。
本書から得られる最大の学びは、女性の健康課題は個人の問題ではなく、組織全体で取り組むべき課題だということです。優秀な人材を活かすためにも、チームの生産性を高めるためにも、そして何より人間として他者に寄り添うためにも、フェムテックの知識は不可欠なのです。
テクノロジーと理解が生み出す新しい職場
本書が示すのは、テクノロジーだけでも、制度だけでもない、人間的な理解と最新技術の融合が生み出す可能性です。
フェムテック市場の成長は止まりません。2025年には世界で約5兆円の市場規模になると予測されています。この波に乗り遅れないためにも、今から知識を身につけておくことが重要です。
管理職として部下を理解し、家族の一員として妻や娘を支え、そして社会の一員として女性が活躍できる環境を作る。そのすべてに、本書で学べる知識が役立つはずです。
『フェムテック 女性の健康課題を解決するテクノロジー』は、IT業界で働く40代男性管理職にとって、職場でのリーダーシップ向上と家庭でのコミュニケーション改善の両方に役立つ必読書です。明日から、あなたの部下や家族への接し方が変わるかもしれません。

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