「すぐ答えを出す上司」ほど部下が育たない──共創という最強のタイパ仕事術

「部下に仕事を教えても、いつまでも自分で動けるようにならない」「結局、自分がやったほうが早いと思って抱え込んでしまう」――そんな悩みを持つ管理職の方は少なくないはずです。昇進直後は特に、「答えを出せる上司」でいなければという焦りから、部下の相談に即座に解決策を示そうとしてしまいがちです。

しかし越川慎司氏の著書『最速で結果を出す超タイパ仕事術』は、そのアプローチこそがチーム全体の生産性を下げる原因になっていると指摘します。800社・17万3000人をAIで行動分析したデータが示す驚くべき結論――最高のタイパは、一人で速く処理することではなく、他者と共に創ることでしか生まれない。本記事では、この共創という発想が管理職の仕事と職場をどう変えるかをお伝えします。

最速で結果を出す超タイパ仕事術
今すぐやめるべき仕事を見極めるテクニック。多くの仕事は、本来やらなくてはならないことを漏らさず実行し、結果を出すことが最も重要とされています。そのために大切なのが時間の使い方。限られた時間の中で最大限パフォーマンスを発揮するには、時にタスク...

タイパの本質は「速く処理する」ことではなかった

タイムパフォーマンスという言葉を聞いたとき、多くの人は「一人でいかに速く仕事を片付けるか」をイメージします。ショートカットキーを覚える、会議を短縮する、メールの返信を素早くこなす――そうした個人の作業スピードを上げることがタイパの本質だと思い込んでいる方も多いでしょう。

越川氏はこの思い込みを根本から覆します。一人でできる作業の限界は、個人の時間という有限な資源によって厳しく制約されます。しかし他者の力を借りることができれば、その制約は一気に広がります。本書が示す最高のタイパとは、自分一人の処理速度を上げることではなく、他者との協働によって生まれるものだという考え方です。

この発想の転換は、特に管理職にとって大きな意味を持ちます。部下を持つ立場になった今、あなたの仕事の成果はあなた一人の作業量では決まりません。チーム全体がどれだけ動けるかが、あなたの評価と直結しているのです。

「解決策をすぐに出す」ことの隠れたコスト

部下から相談を受けたとき、あなたはどう対応していますか。多くの管理職は、自分の経験と知識をもとに素早く解決策を提示しようとします。それは一見、頼りがいのある上司の姿に見えます。しかし越川氏はこのアプローチに大きな問題があると指摘します。

上司がすぐに答えを出してしまうと、部下は考える機会を失います。相談するたびに答えが降ってくる環境では、部下は自分で考える必要がなくなり、やがて指示待ちの状態が定着します。その結果、上司への相談件数は増え続け、管理職の時間はどんどん奪われていきます。

本書では、これを「解決策の提示をやめて共創する」という秘策として提示しています。解決策をすぐに出す上司は、短期的には頼りになるように見えても、長期的にはチーム全体のタイパを下げているのです。自分一人で答えを出し続けることの隠れたコストに、多くの管理職は気づいていません。

「発問」が部下の自律性を引き出す

では、解決策の提示をやめた後、上司はどう動けばいいのか。越川氏が勧めるのは、質問ではなく「発問」です。

質問は、答えを求めるためのものです。一方、発問は相手に考えさせるための問いかけです。部下から相談を受けたとき、「あなた自身はどうすれば一番良いと思う?」と問い返す。これが発問です。

一見すると遠回りに思えるかもしれません。即座に答えを出せばその場は解決するのに、なぜあえて時間をかけて部下に考えさせるのか――そう感じる方も多いでしょう。しかし発問によって部下が自分の頭で考え、自分なりの答えを見つけていく経験を積むうちに、自律性が育ちます。次第に同じ種類の問題では相談に来なくなり、上司のマイクロマネジメントに費やす時間が大幅に削減されます。

発問は今すぐ時間がかかるが、後から大量の時間を生み出す投資です。部下の成長を促しながら、自分の時間を守る――これが共創による真のタイパです。

感情共有がチームのスピードを上げる

もうひとつ、越川氏が本書で強調するのが「感情共有を心がける」という秘策です。仕事の効率化というとスキルや手順の話になりがちですが、感情という要素がタイパを左右するという視点は、多くの管理職が見落としているポイントです。

部下が上司に相談するとき、解決策だけを求めているわけではありません。「自分の状況をわかってほしい」「この大変さを認めてほしい」という感情的なニーズが、多くの場合そこにあります。その感情を無視して解決策だけを提示すると、部下は心理的に納得しないまま動かざるをえなくなります。結果として行動が遅くなり、また同じ問題で相談に来ることになります。

一方、まず感情を受け止めてから一緒に解決策を探ると、部下は自分が理解されたという感覚を持ちます。その感覚がモチベーションを上げ、自発的な行動を促します。感情共有は非効率な情緒的作業ではなく、チームの動きを速くするための合理的な投資なのです。

「先にアウトプットを意識する」インプットの転換

本書には、個人の学習習慣にも共創の発想を持ち込む秘策があります。インプットの前にアウトプットを意識するという考え方です。

多くのビジネスパーソンは、本を読む、研修に参加する、情報を収集するといったインプットを行い、その後必要があればアウトプットします。しかし越川氏はこの順序を逆にすることを勧めています。「この研修で得た内容を、来週の部下との面談でどう使うか」を先に決めてからインプットに臨むのです。

アウトプットの目的が明確になっていると、インプットの際に必要な情報が自然と際立って見えます。そして実際にアウトプットすることで学びが定着し、それが部下や周囲との共創の素材になります。学んだことを自分の中だけに留めるのではなく、チームに還元することで知識の価値が何倍にも膨らむのです。

一人で解決しようとする癖が職場を孤立させる

越川氏のデータが示すもうひとつの現実があります。課題解決を個人の孤立した作業として抱え込む文化が根付いた職場ほど、コミュニケーションコストが高くなるという事実です。

一人で解決しようとするほど、問題が大きくなってから表面化します。小さな段階で他者と共有し、共創によって解決策を探っていれば最小限で済んだはずの問題が、気づいたときには手戻りの大きなトラブルに育っていた――そんな経験は少なくないはずです。

管理職として部下の信頼を得たいなら、まず自分が共創の姿勢を体現することが近道です。一緒に考えよう、意見を聞かせてほしいという姿勢は、弱さの表れではありません。

それはチームの力を最大化する、最もタイパの高いリーダーシップです。

共創が「自分が主役の人生」を取り戻す

越川氏は本書の最後に、タイパ向上の究極の目的はウェルビーイングの実現だと述べています。つまり仕事の効率を上げることは、会社のためではなく、自分が主役のキャリアと人生を取り戻すためのものだということです。

共創によって生まれた時間の余白は、スキルアップに使えます。家族との時間に充てることもできます。あるいは自分のキャリアを改めて考える内省の時間にもなります。一人で抱え込み、すべてを自力で速く処理しようとする仕事術は、時間を節約しているようで、実は人生の余白を削り続けています。

他者の力を借り、感情を共有し、発問によって部下の自律性を引き出す――この共創という仕事術は、チームのタイパを高めると同時に、あなた自身の人生の質を守ります。越川氏の『最速で結果を出す超タイパ仕事術』は、その実践のための具体的な地図を、17万人のリアルなデータをもとに提供してくれています。ぜひ手に取って、自分の仕事スタイルを見直すきっかけにしてみてください。

最速で結果を出す超タイパ仕事術
今すぐやめるべき仕事を見極めるテクニック。多くの仕事は、本来やらなくてはならないことを漏らさず実行し、結果を出すことが最も重要とされています。そのために大切なのが時間の使い方。限られた時間の中で最大限パフォーマンスを発揮するには、時にタスク...

NR書評猫1240 越川慎司 最速で結果を出す超タイパ仕事術

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