「面接1回・即日回答」が採用を変えた理由──飯山辰之介/SHIFT解剖 究極の人的資本経営/採用スピード

「また優秀な候補者を他社に取られてしまった」「選考に時間をかけたのに、最終面接前に辞退された」。IT企業の中間管理職なら、こうした悔しさを一度は経験しているはずです。採用市場はかつてないほど候補者優位になっており、企業が選ぶ側という時代はとっくに終わっています。いかに早く、いかに誠実に応答できるかが、優秀な人材を確保できるかどうかの分岐点になっているのです。

本書『SHIFT解剖 究極の人的資本経営』が紹介するSHIFTの採用改革は、そのことを数字で証明しています。面接回数を原則1回に絞り、即日で合否を出す。そのために「面接を録画し、複数の評価者が非同期で動画評価する」という仕組みを導入した結果、採用エージェントからの優先的な人材紹介を獲得し、採用力を劇的に向上させたと著者の飯山辰之介氏は述べています。

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採用の「遅さ」が優秀な人材を逃し続けている現実

IT業界における採用の平均的な選考期間は、複数回の面接を経て最終決定まで1か月以上かかるケースが珍しくありません。一次面接、二次面接、役員面接と段階を踏む間に、候補者は別の企業の内定を受け入れてしまいます。

特に実力のある人材ほど、複数の選考が同時並行で進んでいます。あなたの会社が「じっくり見極めたい」と考えている間に、他社はすでにオファーを出しているのです。採用エージェントも当然、反応の早い企業に優先的に候補者を紹介します。採用の遅さは、単に一人の採用を逃すだけでなく、エージェントとの関係そのものを劣化させていく問題なのです。

「非同期の動画評価」が解いた時間の制約

SHIFTが採用した解決策は、既存の選考プロセスを「高速化」するのではなく、構造から組み替えることでした。面接を録画し、複数の評価者がそれぞれの都合のよい時間に動画を確認して評価する――この仕組みにより、全員のスケジュールを合わせる必要がなくなります。

従来の面接では「関係者全員が揃う日程の調整」が最大のボトルネックでした。役員や現場リーダーのカレンダーを合わせようとすると、それだけで1週間、2週間が消えていきます。動画評価に切り替えることで、この待ち時間をほぼゼロにできます。

さらに副次的な効果として、評価の質が上がることも見逃せません。同席した面接官同士では「場の空気」や「他の面接官の反応」に引っ張られることがあります。各自が独立して動画を見て評価することで、より客観的な判断が積み重なる仕組みになっているのです。

「即日回答」が候補者に伝えるメッセージ

即日で合否を出すことは、単に速いというだけではありません。候補者にとって「この会社は自分を真剣に見ている」というメッセージになります。選考に3週間かけて不合格の通知を送ることと、1日で「一緒に働きたい」というオファーを届けることとでは、候補者の受け取り方がまるで違います。

これはプレゼンテーションの原則と同じです。相手が何を求めているかを正確につかみ、そのニーズに対して誠実かつ迅速に応える。会議での提案も採用の意思決定も、相手の時間を尊重する姿勢が信頼を生む点では変わりません。

採用エージェントが「この会社は動きが早い」と認識すると、次から優先的に候補者を送ってくれるようになります。エージェントとの関係は一種の信頼関係であり、その信頼は対応スピードという具体的な行動で積み上げるものです。

仕組みを変えれば、個人の努力に頼らなくなる

ここで注目したいのは、SHIFTが採用スピードを「個人の頑張り」で実現しようとしなかった点です。採用担当者がもっと早く動けばいい、という属人的な解決ではなく、プロセスそのものを設計し直すことで再現性のある速さを手に入れました。

これは部下のマネジメントにも通じる発想です。チームの生産性を上げたいとき、「もっと頑張れ」と言い続けることと、業務の流れを見直して無駄なステップを省くこととでは、持続性がまるで異なります。仕組みを変えることで個人への負荷を下げながら、組織全体のアウトプットを高める――本書が繰り返し示すSHIFTの経営哲学の核心が、ここにも表れています。

家庭での「応答の早さ」が関係をひらく

少し角度を変えてみましょう。「即日回答」が候補者との信頼を生む構造は、家庭内のコミュニケーションにも重なります。

子どもが「これどういう意味?」と聞いてきたとき、「後でね」と流し続けると、子どもはやがて聞かなくなります。妻から「今週末どうする?」と相談されたとき、返事を先延ばしにすると、決定権が自然に相手に移ってしまいます。即座に答えることが難しくても、「今夜考える」「明日の朝には返事する」と期限を伝えるだけで、相手の不安は大きく和らぎます。

応答の速さとは、相手への関心の表明です。採用でも家庭でも、この原則は変わりません。

採用改革は「自社の課題」として考えるところから始まる

本書が紹介するSHIFTの事例は、すべてをそのまま自社に移植できるものではありません。しかし「なぜ自社の採用は遅いのか」「どこにボトルネックがあるか」を問い直すきっかけとしては、これ以上ない材料です。

面接のスケジュール調整に何日かかっているか、合否の連絡に何日かかっているか――この2つの数字を把握しているだけで、改善の入り口が見えてきます。中間管理職として採用に関わる立場であれば、その数字を把握し、仕組みの改善を提案することは、採用担当者への貢献でもあり、チームの戦力を強化する直接の行動でもあります。優秀な部下を育てることと、優秀な人材を採れる組織を作ることは、どちらも信頼されるリーダーへの道です。

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NR書評猫1825 飯山辰之介 SHIFT解剖_究極の人的資本経営

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