「感覚で語る人」は会議でも家庭でも伝わらない——飯山辰之介/SHIFT解剖/人的資本経営

会議でせっかく意見を言っても、なぜかスルーされてしまう。プレゼンで熱意を込めて話したのに、「具体的に何がどう良いのか」と問い返される。こうした経験に心当たりはないでしょうか。実は、伝わらない原因の多くは内容の質ではなく、「語る言語」の問題です。

上場から10年で売上高を60倍にしたIT企業・SHIFT。その組織を貫く鉄則のひとつが「数値で示せないのは諦め」という文化です。総務部門であっても、人事部門であっても、自分の仕事の価値を必ず数字で証明することが求められます。飯山辰之介著『SHIFT解剖 究極の人的資本経営』が描くこの組織文化は、管理職として伝える力を磨きたいあなたに、実践的なヒントを与えてくれます。

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なぜ「熱意」だけでは人は動かないのか

「この施策は絶対に効果があると思います」「経験上、このやり方が一番うまくいきます」――こうした言葉を会議の場で使っているとしたら、少し立ち止まって考えてみてください。

熱意や経験はたしかに大切です。しかしそれだけでは、価値観の違う相手を動かすには力不足です。上司は数字でリスクを判断します。他部署の人間はあなたの「経験」の文脈を共有していません。部下はあなたの「感覚」を信頼するほどの実績を、まだあなたに見ていないかもしれない。伝わらないのは、相手がわかってくれないのではなく、「共通の言語」を使っていないからです。

本書が描くSHIFTでは、この「共通の言語」として数字を徹底的に活用しています。

総務部門でさえ「何日短縮したか」を数字で示す

SHIFTの組織文化の中で最もインパクトがある描写のひとつが、間接部門への数値化の要求です。

営業や開発なら成果を数字で示せるのは自然なことです。しかしSHIFTでは、一般的に定量化が難しいとされる総務や人事の仕事についても、「特定の作業を何日短縮したか」「このシステム導入で何件の問い合わせが削減されたか」といったKPIを必ず設定し、自らの価値を証明することが求められます。

なぜここまで徹底するのか。本書はその理由をこう伝えます――「価値観の異なる多様な人材が、共通の言語でフェアに議論するための不可欠な基盤」だからです。宮大工出身者と元警察官と第二新卒が同じテーブルで議論するとき、経歴や感覚を語っても噛み合いません。しかし数字は背景を問わず、誰にとっても同じ意味を持つ。だから数字が、多様な人材をつなぐ唯一の共通言語になるのです。

「冷たい組織」ではなく「フェアな組織」を作るための数字

数値化を徹底すると聞くと、冷徹な職場を想像する人もいるかもしれません。しかし本書が描くSHIFTの実態は、むしろその逆です。

数字で評価するからこそ、人間関係や上司への媚びで評価が歪まない。努力した人が努力した分だけ報われる環境を保証するために、数字は必要なのです。「頑張ったと思う」ではなく「生産性を20%改善した」。「いい人材だと感じる」ではなく「このスコアでこの成果を出した」。数字があることで、評価する側も評価される側も、同じ根拠の上で議論できるようになります。

管理職として部下に「フェアに接している」と伝えたいなら、感覚ではなく数字で示すことが最も確実な方法です。「あなたの成長を見ている」という言葉よりも、「先月と比べてこの指標が15%改善した」という一言の方が、部下の信頼を確実に積み上げていきます。

「自分の仕事を数字にする」練習が、プレゼン力を変える

「数値で示す」という習慣は、プレゼンテーションの質を劇的に変えます。

管理職がプレゼンで説得力を出せない最大の原因は、定性的な表現に頼りすぎることです。「業務効率が上がる」「コミュニケーションが改善される」――これらは正しいかもしれませんが、聞き手の頭には何も残りません。一方で「週あたりの会議時間を3時間削減できる」「情報共有のラグが2日から当日に短縮される」という表現は、聞いた瞬間に映像として浮かぶ。数字は言葉に体積を与えるのです。

SHIFTが全部門に数値化を求めるのは、この力を全社員に身につけさせるためでもあります。まず自分の仕事を数字で捉える習慣を持つ。それが積み重なると、会議でもプレゼンでも、自然に数字を使った説得力ある言葉が出てくるようになります。

家庭での「伝わらない」も、同じ構造が原因だった

数字で語る力の重要性は、家庭でのコミュニケーションにも通じています。

妻との会話がかみ合わないとき、どんなすれ違いが起きているでしょうか。「最近忙しくて」「もっと協力してほしい」「ちゃんとやってる」――これらはすべて、定量化されていない言葉です。受け取る側によって意味がまったく変わります。「最近忙しい」が週何時間の残業を指すのか、「協力」が具体的に何を意味するのか、「ちゃんと」の基準は何なのか。前提がそれぞれの頭の中にしかない状態では、どれだけ話し合っても噛み合わないのは当然です。

SHIFTが数字を「共通の言語」と位置づけたように、家庭でも具体的な行動と数字を使うことで、対話の土台が整います。「今月は3回早く帰って夕食を一緒に食べる」「週末の午前中は子どもの宿題を一緒に見る」――漠然とした約束より、こちらの方がずっと伝わりやすく、守りやすい。

「見えない価値」を見える化する人が、組織を動かす

本書が描くSHIFTのもう一つの重要なメッセージは、数字にしにくいものこそ数字にする挑戦を続けることの大切さです。

会議の盛り上がり度合いをセンサーで数値化する「エモーショナルビート」、社員の退職リスクをAIで検知するシステム、面接官の笑顔の角度まで解析するデータ活用――これらはすべて、「感覚でしかわからない」とされてきたものを定量化しようとする試みです。

管理職として、チームのモチベーションや職場の空気感を「何となく悪い気がする」で放置するのではなく、1on1の頻度、発言量の変化、業務達成率の推移といった数字で捉え直すことができます。見えないものを見える化する習慣を持つ人間が、組織の中で最も信頼される存在になっていく。本書はそのことを、SHIFTの実例を通じて力強く示しています。

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NR書評猫1825 飯山辰之介 SHIFT解剖_究極の人的資本経営

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