100点を目指すほど仕事が遅くなる──「70点主義」が管理職の時間を劇的に増やす理由

「この企画書、もう少し磨けばもっと良くなる気がする……」。そう思って手を加え続けた結果、締め切りギリギリまで抱え込んでしまった経験はないでしょうか。完璧に仕上げてから提出する、それが誠実な仕事の姿だと信じてきたとしたら、少しだけ立ち止まって考えてみてください。

管理職に昇進してから、仕事の量は増えたのに、なぜか成果が出ている感覚が薄い――そんな悩みを抱えている方は多いはずです。部下からの相談、上司への報告、チームの調整。やるべきことが山積みなのに、気づけば一つの資料に何時間も費やしている。そのループから抜け出すヒントが、越川慎司氏の著書『最速で結果を出す超タイパ仕事術』にあります。

本書は800社・17万3000人のビジネスパーソンをAIで行動分析した実証データをもとに書かれた一冊です。その中で特に衝撃的なメッセージのひとつが、「100点を目指すほど、タイパは下がる」という逆説です。本記事では、完璧主義が生む無駄の構造と、70点主義への切り替えが仕事と職場をどう変えるかをお伝えします。

最速で結果を出す超タイパ仕事術
今すぐやめるべき仕事を見極めるテクニック。多くの仕事は、本来やらなくてはならないことを漏らさず実行し、結果を出すことが最も重要とされています。そのために大切なのが時間の使い方。限られた時間の中で最大限パフォーマンスを発揮するには、時にタスク...

完璧主義は美徳ではなく、生産性の敵だった

日本のビジネス現場には、減点主義の空気が根強く残っています。ミスをしないことが評価される文化の中で育ったビジネスパーソンは、提出物を100点に近づけてから出そうとする習慣が自然と身についています。それ自体は丁寧さの表れとも言えますが、越川氏はこの姿勢こそが生産性を下げる元凶のひとつだと指摘します。

パレートの法則という考え方があります。仕事の成果の大部分は、最初の一定の時間で生み出されるという法則です。企画書の骨子は1時間で書けても、そこから細部を磨く作業には何時間もかかります。しかし受け手が評価するのは骨子の質であって、フォントの統一やレイアウトの精度ではありません。

100点に近づくための時間が増えるほど、投じた努力の見返りは急速に小さくなるのです。そして、もし方向性がそもそも間違っていたなら、100点まで磨いた労力はすべて無駄になります。完璧主義は誠実さの証ではなく、修正コストを最大化するリスクの塊でもあるのです。

「30点で出す」勇気が仕事の流れを変える

越川氏が本書で推奨するのは、まず30点の段階で一度レビューに出すというアプローチです。手書きのラフでも、箇条書きで方向性だけをまとめたメモでも構いません。骨格が見えれば、上司や関係者との方向性の確認は十分にできます。

この30点レビューには大きな意味があります。仕事を一人で抱え込む時間が長くなるほど、ゴールに向かっているという確信が薄れ、無意識のうちに確認行為に時間を費やすようになります。30点で一度外に出すことで、方向性のズレが早期に発見でき、手戻りが劇的に減ります。

管理職として部下の仕事を受け取る側の立場で考えてみてください。完璧に仕上がってから出てきた資料に大幅な修正を指示するのは、お互いにとって大きなストレスです。しかし30点の段階で確認できれば、軌道修正の指示はずっと気軽に出せます。30点で出す文化が定着すると、チーム全体の対話が増え、信頼関係も自然と育ちます。

70点で完了する技術が残業を消す

30点でレビューを受けた後、軌道修正を加えながら実用に耐えるレベルに仕上げる。それが70点です。越川氏はこの70点の段階で完了とし、次のタスクへ移行することを強く勧めています。

70点で完了するというのは、手を抜くことではありません。受け手が必要としている情報を過不足なく届けることに集中し、それ以上の装飾や推敲をやめるという選択です。受け手の立場から見れば、90点の資料と70点の資料の違いは、多くの場合ほとんど感じられません。しかし作り手側の時間投資は、70点から100点への磨き上げのほうが、0点から70点への作成よりもはるかに多くかかります。

70点主義の最大の恩恵は、時間の余白が生まれることです。残業が常態化している管理職の多くは、この余白を奪われています。余白があれば、部下と落ち着いて話せます。次の案件の方向性を考えられます。チームの課題を俯瞰できます。70点で完了させる習慣は、単なる効率化ではなく、管理職としての仕事の質を上げるための基盤なのです。

完璧主義が部下の成長を止めていた

完璧主義の弊害は、自分の時間を奪うだけにとどまりません。管理職が自分の仕事に100点を求めるのと同じように、部下の仕事にも100点を求め始めると、部下は萎縮します。少しのミスも許されない空気の中では、自分から動くことへの恐怖が先に立ち、報告や相談が減っていきます。

部下が30点の段階で意見を持ってきたとき、それを丁寧に受け止めて方向性を一緒に確認する上司と、完成度が低いと突き返す上司とでは、チームの動き方がまったく変わります。前者のチームでは問題が早期に発見され、修正コストが下がります。後者のチームでは問題が表面化するまでに時間がかかり、大きな手戻りが繰り返されます。

越川氏のデータによれば、会議の68%が目的を持たない確認行為であるという現実があります。この確認行為の多くは、30点での対話が省略されてきた結果として生まれているとも言えます。70点主義を管理職自身が実践し、部下にも同じ基準を広げていくことが、チーム全体のタイパを底上げする鍵になります。

「手戻り」という最大の時間泥棒をなくす

仕事の中で最も時間を浪費するのは、実は最初からやり直しになる手戻りです。100点まで仕上げてから方向性のズレが発覚した場合の損失は、30点でズレを発見した場合と比べると、数倍から十数倍になることもあります。

新しい案件の企画書を例に考えてみましょう。一人で3日間かけて磨き上げた資料が、方向性の確認で根本から作り直しになった経験はないでしょうか。その3日間は、30点の段階で一度確認していれば、まるごと節約できた時間です。

越川氏はこの手戻りコストを、最大の時間泥棒と位置づけています。完璧主義者ほどこの罠にはまりやすい理由は、完璧に仕上げてから出そうとするほど、一人で抱え込む時間が長くなり、方向性の確認が遅れるからです。

早く出すことが、結果として最も丁寧な仕事になる――この逆説を理解したとき、仕事の進め方が根本から変わります。

「まず出す」文化を自分から始める

70点主義を実践するうえで最初の壁は、完璧でない状態のものを出す心理的なハードルです。「もう少し磨けばよくなる」という気持ちはなかなか手放せません。しかし越川氏は、その感覚こそがタイパを下げている思い込みだと言います。

まず自分の仕事で試してみることをお勧めします。次に資料を作るとき、骨子が見えた30点の段階で、上司か信頼できる同僚に一度方向性を確認してみてください。修正の指摘が来ても、それは失敗ではなく、大きな手戻りを防いだ成功です。

管理職として部下に接するときも同様です。30点の提案を持ってきた部下に、完成度の低さを指摘するのではなく、方向性を一緒に確認する場として受け止める。その一歩が、チーム全体の仕事の流れを変えていきます。

越川氏の『最速で結果を出す超タイパ仕事術』は、こうした仕事の再設計を、感覚ではなくデータから導いてくれる一冊です。完璧主義という長年の習慣を手放すのは簡単ではありませんが、70点主義への切り替えは、今日からでも始められます。

最速で結果を出す超タイパ仕事術
今すぐやめるべき仕事を見極めるテクニック。多くの仕事は、本来やらなくてはならないことを漏らさず実行し、結果を出すことが最も重要とされています。そのために大切なのが時間の使い方。限られた時間の中で最大限パフォーマンスを発揮するには、時にタスク...

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