「営業が属人的すぎる」を終わらせる方法——『THE MODEL』が示す、チームを成果につなげる分業と共業の本質

「部下が自分のやり方で勝手に動いてしまい、チーム全体として成果が安定しない」――そんな悩みを抱えている管理職の方は少なくありません。昇進したばかりのころは、自分の営業スタイルを部下に伝えようとするのですが、なぜかうまく機能しない。「自分が現役のときはできていたのに」という焦りが、さらに関係をこじらせてしまう……。思い当たるフシはありませんか?

実は、このような悩みの根本には「プロセスの設計」が欠けているという共通の問題があります。優秀な個人の経験や勘に頼るだけでは、チームの再現性ある成果はいつまでも生まれません。それどころか、結果を出せない部下への不満が積もり、信頼関係の構築どころか、さらに溝が深まってしまうのです。

本記事では、BtoB営業組織の設計において日本でもっとも参照されている書籍のひとつ、福田康隆氏の『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』を取り上げます。本書のエッセンスを通じて、「個人の能力任せ」から「仕組みとしての強いチーム」へと転換するためのヒントをお伝えします。

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「気合と根性」の営業では、なぜチームが育たないのか

多くの管理職が陥る最初の罠は、自分が現役時代に成功した方法を「正解」として部下に押し付けることです。確かに個人として成果を出してきた経験は宝物です。しかし、その成功体験の多くが「自分だから通用した方法」であることに気づいていない場合、チームマネジメントは機能しません。

本書で著者の福田康隆氏が真っ先に問い直しているのが、まさにこの点です。従来の営業組織では、一人の担当者が「見込み顧客の発掘」から「アポイント取得」「商談進行」「契約締結」そして「アフターフォロー」まで、すべてを一人で担う「フルサイクル型」が当たり前でした。しかし、この方法は個人の能力差が直接成果の差として現れるため、チームとしての安定した成長はきわめて困難になります。

「あの人だから売れる」という属人性は、部下にとって目指すべきロールモデルではなく、自信を失わせる壁になりかねません。チームが育たない理由のひとつは、成果の仕組みが見えていないことにあるのです。

THE MODELとは何か――4つのプロセスで営業を「科学」する

本書が提示する「THE MODEL」の核心は、営業活動を4つの専門プロセスに分けて管理するという発想です。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、そしてカスタマーサクセス――この4部門がそれぞれの役割と評価指標を持ちながら連携することで、属人的な成果から組織的な成果へと転換を図ります。

マーケティング部門は展示会やウェビナー、コンテンツ配信などを通じて見込み顧客を集め、インサイドセールスに渡します。インサイドセールスは非対面で顧客の課題をヒアリングし、商談として成立する見込みのある案件のみをフィールドセールスに引き継ぎます。フィールドセールスは顧客先を訪問し、具体的な解決策を提示して契約を獲得します。そして、カスタマーサクセスが契約後の活用支援を担い、顧客が継続的に成果を得られるよう伴走するのです。

重要なのは、それぞれの部門に明確な「評価指標」が設定されている点です。マーケティングは有望リードの創出数、インサイドセールスは商談化数、フィールドセールスは受注金額、カスタマーサクセスは解約率の低減――このように数値で管理されることで、どのプロセスに問題があるかが「見える化」されます。

分業だけでは機能しない――「共業」という発想が鍵を握る

ここで著者が強く警鐘を鳴らしているのが、分業の副作用についてです。プロセスを分けることで生産性は上がりますが、同時に「部門間の壁」が生まれやすくなります。これをサイロ化と呼びます。

たとえば、マーケティング部門がリードの獲得「数」だけを追い求めると、質の低い見込み顧客がインサイドセールスに大量に送り込まれ、後工程が疲弊します。逆に、フィールドセールスが自部門の目標だけを意識して無理に受注すると、カスタマーサクセスで顧客が活用できずに早期解約が相次ぐ――こうした悪循環が組織全体を蝕んでいくのです。

だからこそ著者が「分業」ではなく「共業」という言葉を使うことには深い意味があります。各部門が自部門のKPIだけを追うのではなく、最終的な収益という共通のゴールを共有することが、THE MODELを真に機能させる鍵だと本書は説いています。部門間で顧客情報がシームレスに引き継がれ、データを通じた対話が生まれることで初めて、組織は有機的に動き出すのです。

管理職が「感覚」を手放す勇気――フェーズ管理で部下を育てる

本書がIT管理職の方にとって特に示唆深いのは、営業の商談状態を5つのフェーズに分けて管理する手法です。「リード以上商談未満」「ビジネス課題の認識」「評価と選定」「最終交渉と意思決定」「稟議決裁プロセス」――このように商談の状態を定義することで、どの段階で止まっているかがデータとして蓄積されます。

管理職にとってのメリットは明確です。部下の商談が上手くいっていないとき、「もっと頑張れ」という精神論ではなく、「フェーズ3から4への移行率が低いから、決裁者へのアプローチ方法を一緒に考えよう」という具体的な指導ができるようになるのです。これは部下にとって「自分の何が問題なのか」が分かるため、信頼関係の構築にも直結します。

感覚で語る上司より、データで語る上司のほうが、部下は動きやすい――本書はそのことを実例を交えながら丁寧に教えてくれます。指導する内容が明確になることで、管理職としての存在感も自然と高まっていきます。

サブスクリプション時代を生き抜く――「受注がゴール」という幻想を手放す

本書が特に現代的なのは、カスタマーサクセスの位置づけに対する視点です。売り切り型のビジネスであれば「契約を取ること」が営業の最終目標でした。しかし、SaaSに代表されるサブスクリプション型のビジネスでは、受注はスタートラインにすぎません。

顧客がサービスを使いこなせなければ、いずれ解約されてしまいます。ここでいうカスタマーサクセスとは、トラブルが起きたときだけ対応するカスタマーサポートとは根本的に異なります。顧客のログイン頻度や機能の活用状況をデータで常時監視し、活用が滞っている顧客には先手を打って支援を届ける――そういった能動的な関与こそがLTV(顧客生涯価値)を高め、企業の持続的な成長を支えるのです。

「売ったら終わり」という発想を手放すことは、社内チームの構造だけでなく、顧客との関係のあり方そのものを変える転換です。これはIT業界に限らず、様々な業界で広がっている視点であり、本書がSaaS業界の枠を超えて支持される理由のひとつでもあります。

組織の仕組みを変えることが、部下との信頼を生む

本書を読んで最も実感することは、「仕組みを整えることが、人を育てる近道だ」ということです。部下への指導に悩む管理職の多くは、コミュニケーション術や話し方のテクニックを求めがちです。もちろんそれも重要ですが、そもそもプロセスと評価指標が整っていなければ、何をどう伝えればよいかの「軸」が定まりません。

THE MODELが示す4つのプロセスと共業の発想は、「誰が何をすべきか」を明文化し、各人が自分の役割の中で成長できる環境を整えるための設計図です。それはそのまま、部下から信頼される管理職になるための実践的な足がかりにもなります。

「あなたに任せたい」と言える仕組みを作ることが、上司への信頼へとつながる――福田康隆氏の言葉は、営業部門にとどまらず、チームマネジメント全般に通じる示唆を与えてくれます。属人的な努力論からデータと仕組みの経営へ。その転換こそが、チームと管理職の両方を次のステージへと引き上げてくれるはずです。

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NR書評猫1238 福田昭彦 THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

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