あなたの会社では、新しいプロジェクトを始める際、まず何から取り組みますか?おそらく多くの方が「ビジョンや戦略を明確にして、それを実行する人材を集める」と答えるでしょう。しかし、もしそれが成功への最短距離ではないとしたら?世界最高レベルの経営研究者ジム・コリンズが5年間の徹底調査で突き止めた「飛躍の法則」は、この当たり前の常識を根底から覆します。
この記事では、平凡な企業が偉大な企業へと飛躍するために、なぜ戦略よりも人材を優先すべきなのか、そしてそれが組織にどのような変革をもたらすのかを詳しく解説します。読み終わる頃には、あなたのチームビルディングと組織運営に対する考え方が180度変わることでしょう。
1. 従来の経営理論を覆す「バスの法則」
戦略から人材へのパラダイムシフト
『ビジョナリー・カンパニー 2』で最も衝撃的な発見の一つが、「最初に人を選び、その後に目標を選ぶ」という原則です。これは、経営学の教科書で教えられてきた「まずビジョンを定め、次にそれを実行する人材を雇う」という常識とは正反対のアプローチです。
コリンズは、この革命的な考え方を「バスの比喩」で説明しています。偉大なリーダーは、まず「適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、適切な人をそれぞれふさわしい席に着かせる」ことから始めます。バスをどこに向かわせるかを決めるのは、その後のことなのです。
この発見は、コリンズの研究チームが11社の飛躍企業を5年間にわたって徹底調査した結果得られたものです。単なる理論ではなく、実証データに基づいた確固たる法則なのです。
なぜ「人材優先」が成功の鍵なのか
では、なぜこの逆転の発想が有効なのでしょうか?その論理は明快です。
適切な人材がいれば、どんな困難も乗り越えられるからです。外部環境が変化し、目的地を変更する必要が生じても、優秀なチームメンバーがいれば柔軟に対応できます。なぜなら、彼らは特定の目的地のためではなく、一緒に働く仲間が好きでバスに乗っているからです。
逆に、特定の目的地のために人を集めた場合、目的地が変われば、彼らは「不適切な人材」になってしまう可能性があります。これが、多くの企業が変化に対応できない根本的な理由なのです。
2. 「適切な人材」の真の定義
単なる「有能さ」を超えた基準
ここで重要なのは、「適切な人材」とは単に「有能な人材」を意味するのではないという点です。それは、企業の規律ある文化や価値観に深く共鳴し、自己管理能力が高く、内発的に動機づけられている人物を指します。
したがって、飛躍した企業のスローガンは「人材こそが最も重要な資産である」ではなく、「適切な人材こそが最も重要な資産である」なのです。この微妙な違いが、組織の成功を左右する決定的な要因となります。
厳格な人材選考プロセス
飛躍した企業は、人事に関する決定に極端なまでの厳格さを持って臨んでいます。彼らのルールは明確です:
- 疑問があれば採用しない
- 適切な人材が見つかるまで探し続ける
- 誰かがバスを降りるべきだと分かれば、迅速に行動する
この厳格なプロセスこそが、飛躍への基盤を築く前提条件となるのです。
3. 実践例:ファニーメイの奇跡的復活
破綻寸前からの劇的な変革
この「人材優先」の原則を実際に実践した企業の事例を見てみましょう。経営破綻寸前だった住宅金融公社ファニーメイを立て直したデビッド・マクスウェルCEOの物語です。
マクスウェルが最初に行ったのは、壮大な戦略の発表でも業務改革でもありませんでした。彼は経営陣の再編成から始めたのです。
厳しい現実に向き合うチームの構築
マクスウェルは幹部たちにこう告げました:「これは極めて困難な旅になる。その覚悟がないのなら、今すぐバスを降りるべきだ」。
この厳格なプロセスを通じて、彼は厳しい現実に立ち向かう準備ができた、献身的なチームを築き上げました。結果として、ファニーメイは驚異的な復活を遂げ、飛躍企業の一つとなったのです。
このエピソードが示すのは、正しい人材さえいれば、どんな困難な状況でも突破できるという原則の実証です。
4. あなたの組織に「バスの法則」を適用する方法
現在のチームメンバーを再評価する
まず、現在のチームメンバーを客観的に評価してみましょう。以下の質問を自問してください:
- この人は、会社の価値観に本当に共鳴しているか?
- 外部環境が変化した時、この人と一緒に困難を乗り越えたいか?
- この人は、自己管理能力が高く、内発的に動機づけられているか?
これらの質問に「はい」と答えられない人がいる場合、その人は「適切な人材」ではない可能性があります。
採用プロセスの根本的見直し
次に、採用プロセスを見直しましょう。従来の「スキル重視」から「人柄と価値観の適合性重視」へとシフトする必要があります。
具体的には:
- 面接で価値観や仕事への姿勢を深掘りする
- 疑問がある候補者は、どんなに優秀でも採用しない
- 時間をかけてでも、本当に適切な人材を見つける
既存メンバーとの向き合い方
既存のメンバーで「適切でない」と判断された人がいる場合、それは決して簡単な問題ではありません。しかし、組織全体の飛躍のためには、勇気を持って向き合う必要があります。
まずは丁寧な対話を通じて、その人が本当に組織の価値観に共鳴できるかを確認しましょう。努力によって改善される可能性があるなら、サポートを提供します。しかし、根本的な価値観の不一致がある場合は、お互いのために別の道を探ることが賢明です。
5. 「人材優先」がもたらす組織の変革
自律性の高いチーム文化
適切な人材が集まった組織では、規律の文化が自然に生まれます。これは、上からの強制的な管理や官僚主義的なルールとは全く異なるものです。
自己管理能力が高く、責任感の強い人々だけがバスに乗っていれば、彼らを細かく管理する必要はありません。彼らは自ら規律を守り、組織の目標に向かって自律的に行動するからです。
変化への適応力の向上
適切な人材で構成されたチームは、変化への適応力が格段に向上します。なぜなら、彼らは特定の戦略や目標に依存するのではなく、チームとしての結束力に基づいて行動するからです。
外部環境が変化し、戦略の変更が必要になった時でも、このようなチームは迅速に対応し、新しい方向性に向かって一致団結して進むことができます。
結論:今こそ「人材優先」の経営へ
『ビジョナリー・カンパニー 2』が明らかにした「最初に人を選び、その後に目標を選ぶ」という原則は、単なる人事戦略ではありません。それは、組織の根幹に関わる経営哲学なのです。
この原則を実践することで、あなたの組織は:
- 変化に強い、適応力の高いチームを構築できる
- 自律性の高い規律ある文化を醸成できる
- 真の意味での持続可能な成長を実現できる
今日から、あなたも「バスの法則」を実践してみませんか?まずは小さなプロジェクトから始めて、「何をするか」よりも「誰とするか」を優先してみてください。その変化が、あなたの組織を「良い企業」から「偉大な企業」へと導く第一歩となるでしょう。
経営の未来は、戦略ではなく人材にかかっています。そして、適切な人材を選ぶ力こそが、真のリーダーシップの証なのです。

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