あなたの会社で「ティール組織に移行しよう」という声が上がったとき、どんな気持ちになりますか?
40代のIT中間管理職として、日々の業務に追われながらも、組織の硬直化や部下のモチベーション低下に悩んでいるみなさんにとって、ティール組織という言葉は希望の光のように感じられるかもしれません。
しかし、その理想的な組織モデルには、多くの人が見落としている重要な真実があります。今回は、フレデリック・ラルー著『ティール組織』から見えてくる、組織変革の本当の姿について深く掘り下げていきます。
この記事を読むことで、表面的なティール組織の導入がなぜ失敗するのか、そして真の組織変革に必要な覚悟と継続的な取り組みについて理解していただけるでしょう。
ティール組織導入の現実:理想と実態のギャップ
多くの企業がティール組織に憧れを抱く理由は明確です。上下関係に縛られない自律的な働き方、個人の全体性を尊重する職場環境、そして組織全体が共有する存在目的。これらは、現代の硬直化した組織が抱える課題を解決する魔法のような響きを持っています。
しかし、実際にティール組織への移行を試みた企業の多くが直面するのは、期待とは正反対の結果でした。意思決定の遅延、進捗管理の困難、フリーライダー問題の発生など、従来の管理システムを排除した結果として構造的に生じる問題が次々と表面化したのです。
特に日本企業においては、労働基準法や会社法といった既存の法制度との間に根本的なミスマッチが存在することも明らかになっています。代表取締役への権限集中という従来の慣行との整合性を取ることの難しさが、多くのベンチャー企業の失敗事例として報告されているのです。
表面的な変革の危険性:形だけのティール化が招く混乱
ティール組織への憧れが強すぎるあまり、多くの組織が陥る最大の落とし穴があります。それは、「役職廃止」や「自由裁量」を導入すれば、すぐにティール化できるという表面的な理解です。
このような「形だけの導入」は、かえって組織の統制を失わせ、混乱や売上不振を招くリスクを秘めています。従来のヒエラルキーのもとで育ったメンバーにとって、急な権限委譲はしばしば混乱を生み、期待した成果が得られない結果を招くのです。
さらに深刻な問題は、セルフマネジメントを「好き勝手やっていい」と誤解してしまうケースです。ティール組織が目指す「自律分散」は、成熟した組織文化なしには「無秩序」に陥るリスクを内包しており、この認識の甘さが多くの失敗を生んでいます。
実際に、ティール組織で頻発する「フリーライダー問題」と「意思決定の遅延」は、従来の管理・統制システムを排除した結果として構造的に発生します。従来の階層組織のような明確な人事評価や貢献度を把握する仕組みが希薄になりがちなため、貢献度の低いメンバーを特定し対処することが困難になるのです。
継続的な探求としてのティール組織
ここで重要な視点を提供したいと思います。ティール組織は固定的な目的地ではなく、組織とメンバーが共に探求し、進化し続ける「プロセス」なのです。
フレデリック・ラルー氏自身も、ティールが全ての組織にとっての最適解ではないことを認めています。実際にティール組織の慣行を獲得した成功事例、例えばオランダの在宅ケア組織ビュートゾルフなどは、一夜にして生まれたものではなく、長年にわたる試行錯誤の結果なのです。
これは、私たち中間管理職にとって重要な示唆を与えてくれます。組織変革は短期的な施策の実施ではなく、常に自己を問い直し、環境の変化に適応し続ける「絶え間ない探求の旅」として捉える必要があるということです。
真の組織変革に必要な覚悟
では、本当の意味での組織変革を実現するには何が必要なのでしょうか。
まず必要なのは、働く人々の意識や組織文化そのものの根本的な変革への覚悟です。ティール組織への移行は、単なる組織構造の変更ではありません。メンバーの高い成熟度と主体性を前提とするため、多くの組織ではその準備段階から丁寧に取り組む必要があります。
また、理想と現実のギャップを受け入れる姿勢も重要です。ティール組織という概念が表面的な理解だけではその本質が捉えにくいことの裏返しとして、著者ラルー氏自身が図解版を制作し、より広い層に概念を普及させることに努めていることからも、この複雑性が理解できます。
中間管理職としての新たな役割
私たち中間管理職は、この組織変革の波の中でどのような役割を果たすべきでしょうか。
従来の「命令と統制」から「支援と触媒」へとリーダーシップのあり方が根本的に変化している今、部下の自律性を促しながらも、適切な支援を提供するバランス感覚が求められています。
これは簡単なことではありません。しかし、組織の存在目的を共有し、メンバー間での共通認識を築くことで、マイクロマネジメントに頼ることなく、チーム全体が自律的に機能する環境を作り出すことは可能です。
まとめ:組織変革の本質を理解する
ティール組織への移行は「万能薬」ではありません。それは、組織とそこで働く人々が共に成長し続ける、終わりのない探求の旅です。
表面的な制度変更に満足することなく、組織文化の根本的な変革に取り組む覚悟を持つこと。そして、失敗を恐れることなく、継続的な試行錯誤を通じて学び続けること。これこそが、真の組織変革を実現するための第一歩なのです。
私たち中間管理職には、この変革の先頭に立ち、チームメンバーと共に新たな働き方を探求していく責任があります。完璧を目指すのではなく、今日より明日、少しでも良い組織を作るという継続的な改善の姿勢こそが、最も重要なのではないでしょうか。

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