昇進したばかりの中間管理職として、部下との関係構築や会議での発言力に悩んでいませんか。一生懸命準備したプレゼンテーションが思ったように響かない、報告書を作成しても上司から的外れな指摘を受ける、そんな経験はありませんか。
実は、多くの日本人ビジネスパーソンが陥っている根本的な問題があります。それは「自分が伝えたいこと」を起点にコミュニケーションを組み立ててしまうことです。この記事でご紹介する『入門 考える技術・書く技術』は、この問題を解決し、相手に確実に伝わる論理的思考とコミュニケーションスキルを身につけるための実践的な手法を提供します。
この書籍を読むことで、部下からの信頼獲得、プレゼンテーションの説得力向上、そして家庭での円滑なコミュニケーションまで、あらゆる場面で活用できる「相手ファースト」の思考法を習得できます。
なぜ日本人は論理的なコミュニケーションが苦手なのか
日本語という言語の特性が、私たちの論理的思考を阻害している可能性があります。主語の省略や曖昧な接続詞の使用といった「日本語ならではのハンディキャップ」が、ビジネスシーンでの明確なコミュニケーションを困難にしているのです。
例えば、「A事業は好調だが、B事業は不振だ」という表現を考えてみましょう。この「だが」は単なる対比なのか、それとも因果関係を示しているのか曖昧です。このような表現の曖昧さが積み重なることで、相手に正確な意図が伝わらず、誤解や混乱を招いてしまいます。
特に中間管理職の立場では、上司への報告、部下への指示、関係部署との調整など、様々な立場の人とのコミュニケーションが求められます。それぞれの相手が異なる文脈や関心事を持っているにも関わらず、自分目線の伝え方を続けていては、信頼関係の構築は困難でしょう。
OPQ分析で相手の真のニーズを見抜く
本書の核心的な技術の一つが「OPQ分析」です。これは相手の状況を深く理解し、彼らが真に求めている答えを特定するための強力なフレームワークです。
O(Objective):望ましい状況 – 相手が理想として目指している状態
P(Problem):問題 – 現状と理想のギャップや障害
Q(Question):疑問 – その問題に直面した相手の頭に浮かぶ具体的な問い
例えば、上司から「競合A社の動向を報告せよ」と指示された場合を考えてみましょう。単に情報を羅列するのではなく、上司の真のニーズを分析します。上司の「O」は「自社のマーケティング戦略を最適化したい」、「P」は「競合A社の新製品が自社のシェアを脅かしている」、そして真の「Q」は「我々はA社の新製品にどう対抗すべきか?」となるはずです。
この分析により、報告書で提示すべき答えは「製品Bの改良とプロモーション強化を提案します」といった具体的なアクションプランになります。これが「相手ファースト」のコミュニケーションの実践例です。
部下とのコミュニケーションでの応用
部下に新しいプロジェクトを任せる際も、OPQ分析が威力を発揮します。部下の「O」は「成果を出して評価されたい」、「P」は「新しい業務への不安」、「Q」は「どうすれば成功できるのか?」かもしれません。この理解があれば、単なる業務指示ではなく、成功のための具体的な道筋とサポート体制を示すことで、部下の不安を解消し、やる気を引き出すことができます。
ピラミッド構造で思考を「見える化」する
散らばった情報や断片的なアイデアを、論理的に整理するための技術が「ピラミッド構造」です。これは伝えたいメッセージを頂点に置き、それを支える根拠を階層的に配置する思考整理術です。
人間が一度に処理できる情報には限界があり、一般的に3個から7個程度とされています。ピラミッド構造は、この認知的制約を考慮して情報をグループ化し、相手が理解しやすい形で提示する仕組みです。
会議での発言力向上
会議で存在感を発揮できない悩みも、ピラミッド構造で解決できます。発言前に頭の中で簡単なピラミッドを組み立てるのです。結論を頂点に置き、それを支える2-3の根拠を整理してから発言することで、相手に伝わりやすく説得力のある意見を述べることができます。
例えば、「新システム導入に賛成です」という結論の下に、「①作業効率が30%向上する」「②人的ミスが削減される」「③長期的にコスト削減効果がある」という3つの根拠を配置して発言すれば、単なる感想ではなく論理的な提案として受け取られるでしょう。
SCQフレームワークで相手の関心を引く
どんなに論理的な内容でも、相手が最初から関心を持ってくれなければ価値は伝わりません。本書では「SCQ」フレームワークを使って、相手の注意を引きつける導入部の作り方を解説しています。
S(Situation):状況 – 共有できる客観的事実
C(Complication):複雑化 – その状況を揺るがす変化や問題
Q(Question):疑問 – 相手の頭に自然に浮かぶ問い
このフレームワークを使えば、プレゼンテーションの冒頭で聴衆を物語に引き込み、これから話す内容への期待感を高めることができます。
家庭でのコミュニケーションにも応用可能
家族との会話でも、この手法は有効です。いきなり自分の要求を述べるのではなく、家族が共感できる状況から始めて、問題を提起し、自然な流れで解決策を提示することで、理解と協力を得やすくなります。
日本語の「壁」を越える4つの鉄則
本書が特に画期的なのは、日本語特有の表現の曖昧さを克服するための具体的なルールを提示している点です。「要約メッセージの4つの鉄則」は、思考そのものを明晰にするための実践的な指針です。
鉄則1:名詞表現、体言止めの禁止
「市場の拡大」ではなく「アジア市場は年率20%の成長を続けている」と完全な文章で表現することで、具体的な主張が明確になります。
鉄則2:「あいまい言葉」の禁止
「営業組織の見直し」ではなく「東京、大阪で営業人員を20%増員する」と具体的な行動を記述します。
鉄則3:一つのメッセージは一つの文章で
複数の内容を一つの文章に詰め込まず、それぞれを独立した明確なメッセージとして表現します。
鉄則4:「しりてが」接続詞の禁止
「~し、~であり、~して、~だが」といった曖昧な接続詞を避け、「~のため」「~にもかかわらず」「その結果」など論理関係を明示する接続詞を使用します。
これらのルールを意識するだけで、メールや報告書の文章が格段に分かりやすくなり、相手に正確に意図が伝わるようになります。
今日から実践できる「相手ファースト」思考法
本書の最大の価値は、単なるライティング技術ではなく、「常に相手の視点から始める」という根本的な思考転換を促すことです。これは仕事の成果を左右する決定的な要素です。
自分の努力量や情報収集量ではなく、成果物が受け手にとってどれだけ価値があるかで仕事の価値が決まります。この厳しい現実を受け入れ、常に相手の文脈で自分の仕事を位置づける訓練を積むことで、プロフェッショナルとしての真の実力が身につきます。
部下からの信頼獲得、上司への効果的な提案、家族との円滑なコミュニケーション、すべての基盤となるのがこの「相手ファースト」の思考法です。明日から会議で発言する前に、メールを送信する前に、「相手は何を知りたがっているのか?」を自問する習慣をつけてみてください。その小さな変化が、あなたのコミュニケーション能力を劇的に向上させるはずです。
論理的思考は才能ではなく技術である
『入門 考える技術・書く技術』は、論理的なコミュニケーションを「才能」ではなく「技術」として捉え、誰でも習得可能な具体的な手法を提供する画期的な一冊です。日本人特有の言語的課題を深く理解した著者だからこそ書けた、まさに「日本人のための」実践的ガイドブックといえるでしょう。
中間管理職として直面する様々なコミュニケーションの課題は、この書籍で学ぶ「相手ファースト」の思考法により解決できます。部下との信頼関係構築、上司への効果的な報告、そして家庭での円滑な対話まで、あらゆる場面で活用できる普遍的なスキルが身につくはずです。
論理的思考とコミュニケーション能力の向上は、昇進や収入アップにも直結する重要な投資です。今こそ、この実証済みの手法を習得し、プロフェッショナルとしての新たなステージに進みましょう。


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