現代のビジネス界では、多くの経営者が壮大なビジョンや社会貢献を掲げています。しかし、本当に意味のある経営とは、まず身近な人たちを大切にすることから始まるのです。電球の光が自分の周りを最も明るく照らすように、経営者も身近な人たちを幸せにできなければ、遠くの人たちを照らすことなどできません。
身近な人を大切にする経営の本質
家族から始まる経営哲学
真の経営者は、まず自分の家族を大切にします。家族を大切にしない経営者は、最終的に従業員も大切にできないと考えられているからです。家族は社会の最小単位であり、ここでの関係性が経営における人との向き合い方の基礎となります。
経営者にとって家族を大切にするということは、社員を大切にすることにもつながります。逆に言えば、一番近い存在である家族を大切にしていない人は、最終的には社員も大切にできないと思われてしまうのです。
従業員への真の愛情
経営者が従業員を大切に思っているかどうかは、従業員はもとより外部の人間からも分かります。それが明らかに分かるのは、従業員と話をしているときの経営者の目です。父親が息子を叱っているときの目には、真剣さと同時に計り知れないほどの愛情があります。
「人を大切にする経営学会」では、「五方よし経営」という概念を提唱しており、その中で最も重視すべきは「第1:社員とその家族」としています。お客様は大切ですが、社員が幸せでなければお客様に満足いただけるサービスを提供できるはずがないからです。
身近な人を照らすことの科学的根拠
従業員満足度と企業業績の関係
カリフォルニア大学の研究では、「幸福度の高い社員」は、そうでない社員よりも生産性が37%、売り上げが37%、創造性が3倍も高いという結果が出ています。これにより、社員の幸福度と生産性や業績に因果関係があることが事実として証明されています。
従業員満足度を構成する要素として、企業理念・ビジョンへの共感、職場での人間関係、快適な職場環境などが挙げられます。これらすべては、経営者が身近な人たちとどのような関係を築いているかに直結しています。
人間関係が組織に与える影響
職場の人間関係が良好である場合、コミュニケーションがスムーズになり、情報の共有や協力が容易になります。互いに信頼や尊敬を持って接することで、モチベーションや責任感が高まり、問題や困難に直面したときにも支え合うことができます。
組織心理学の研究では、トップタレントばかりを集めても、連携できる関係性がなければチームの力は上がらないことが示されています。個々の能力と同じくらい、メンバー同士がどのような関係にあるかが重要であり、どのような関係性に導くかがリーダーの重要な役割なのです。
身近から始まるリーダーシップの実践
「小さなリーダーシップ」の概念
真のリーダーシップは、カリスマ性や天才性を必要としません。スタンフォード大学のリーダーシップ論では、「We are the Leaders」という原則を提唱し、リーダーシップは誰でも発揮できるものとしています。
「小さなリーダーシップ」とは、ささやかで謙虚だが、常に考えて動いている姿勢です。チームや組織のために一歩前に出たり後ろから押したり、新しい視点を投げかけたりできることです。
身近な人との信頼関係の構築
人を巻き込む力のあるリーダーは、普段から周囲に「この人なら大丈夫」「この人なら間違いない」と思われている人です。このような考えのベースにあるものは「信頼」であり、日常の積み重ねによって形成されていきます。
信頼を得るためには、人間性とスキル面の2つを意識する必要があります。人間性では「約束を守る」「相手の意見や価値観を受容する」といった仕事に対する姿勢が重要であり、スキル面では専門知識や実績が求められます。
身近な人を大切にする企業事例
地域と従業員を大切にする経営
株式会社有鄰では、「身近な人たちを大切にする」ことを大切な指針として掲げています。これを事業に当てはめると「地元の人たちに貢献する」ことになり、岡山県内の素材を使い、近隣のおすすめの場所をご案内し、県内の商品のみを取り扱うことで地域への貢献を実現しています。
同社では、体外的な事業面だけでなく、個々人がプライベートでも「身近な人は大切にしてほしい」というメッセージを伝えており、会社の「外」と「内」を切り分けて考えていません。
温かい企業文化の醸成
企業文化が重要な理由の一つは、企業としての一体感が強まることです。良い組織文化が形成されると、従業員は新しいアイデアを積極的に出し合い、チャレンジ精神を持って取り組むようになります。
強い企業文化は、組織内の従業員を結束させ、共通の目標に向かって協力することを促進します。従業員は一体感を持ち、チームワークが高まり、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
ビジョンよりも大切な日常の実践
経営者の手本となる行動
経営者は社員の目標となる存在でなければなりません。社員と一緒になって日々努力していくことが、社員の大きな手本となります。トップが仕事に対して情熱がないのに、社員に情熱を持って仕事をしろと言えるはずがありません。
少人数の企業であればあるほど、社員と一緒になって汗を流す努力をすることが、チームワークとしての大きな成果につながります。この精神は企業が大きくなったとしても、トップは社員の見本として存在しなければならないのです。
謙虚さと感謝の心
稲盛和夫氏は「謙虚にして驕らず」を座右の銘とし、どんなに成功しても境遇が変わっても謙虚な姿勢を保つことの重要性を説いています。神羅万象あらゆるものに感謝する習慣を持ち、自分の才能を社会のために使うという考え方を持っていました。
経営者にとって最も大切なのは「人の心」であり、すばらしい心の人を求めても、自分の心がすばらしいものでなければ、決して立派な心を持つ人は寄ってこないのです。
まとめ:真のリーダーシップは身近から始まる
電球が自分の周りを最も明るく照らすように、真の経営者は まず身近な人たちを大切にすることから始めなければなりません。家族を大切にし、従業員を愛し、地域社会との絆を深めることで、初めて遠くの人たちを照らす力が生まれるのです。
壮大なビジョンや社会貢献も大切ですが、それ以前に身近な人たちが幸せになっているかどうかが、経営者としての真の器を測る指標となります。小さなリーダーシップを発揮し、日々の実践を通じて信頼関係を築くことが、持続可能な企業成長の基盤となるのです。
参考情報
- 株式会社行雲: https://ko-un.jp/20200203_note/
- マイナビサポネット: https://saponet.mynavi.jp/column/detail/s_keiei_s20230714142604.html
- 中央支部中小企業診断士協会: https://www.rmc-chuo.jp/manager/column/2023032701.html

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