日本はなぜここまで落ちぶれたのか?構造的課題と再生への道筋


日本経済の長期低迷は複合的な要因によって引き起こされており、特に「失われた30年」と呼ばれる期間において、バブル崩壊後の不良債権処理の遅れ、急速な高齢化による社会保障費の膨張、そして生産性向上の停滞が相互に影響し合いながら経済成長を阻害してきました。現在、社会保障給付費は年間137兆円を超え、医療費だけでも45兆円に達している状況で、これらの構造的課題が若者世代の貧困や治安悪化といった新たな社会問題を生み出しています。

「失われた30年」の背景と構造的問題

バブル崩壊後の経済政策の限界

日本経済は1990年代初頭のバブル経済崩壊以降、長期にわたって低成長、デフレーション、停滞に苦しんできました。政府は90年代の経済低迷に対応して度重なる景気対策を実施し、公共投資などの政府支出を拡大してきましたが、民間需要の持続的な回復にはつながらず、停滞する経済を引き上げることはできませんでした。

この長期低迷の根本的な原因として、不良債権問題が日本経済を下押ししていることが挙げられます。企業はバブル期の遺産として三つの過剰(債務、雇用、設備)を抱え、設備投資も減価償却内の更新投資に終始しました。銀行も不良債権処理と自己資本比率維持のために「貸し剥がし」をする一方で「ソフトな予算制約」のもとに「追い貸し」をしてゾンビ企業の温存を図り、それが生産性向上を停滞させました。

経済成長率の構造的低下

我が国の実質経済成長率の長期的な推移を見ると、60年代平均10.0%、70年代平均4.4%、80年代平均4.3%、90年代平均1.3%とすう勢的に低下してきています。潜在成長率についても、80年代後半のバブル期には4%を上回っていたものの、90年代前半には2%強、後半には1%強まで落ち込み、現在も約1%と低い水準にあります。

この背景には、少子化による生産年齢人口の減少、企業の期待成長率低下による設備投資の抑制、全要素生産性の伸び鈍化があります。特に労働投入は80年代平均で0.5%ポイントの寄与を示していましたが、90年代にはマイナスの寄与に転じており、生産年齢人口の伸び鈍化・減少の影響が既に出始めています。

高齢化社会の重い負担

社会保障費の急速な拡大

日本の高齢化は世界でも類を見ないスピードで進行しており、社会保障制度に深刻な影響を与えています。2022年度の社会保障給付費は137兆8337億円に達し、GDP比24.33%を占めています。内訳を見ると、年金給付が55兆7908億円(40.5%)、医療給付48兆7511億円(35.4%)、介護対策給付11兆2912億円(8.2%)となっています。

特に注目すべきは、2022年度から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり始め、2025年度には全員が後期高齢者となることです。さらに2025年度から2040年度にかけては、高齢者数そのものは大きく増えないものの、「85歳以上のシェアが増える」「支え手となる現役世代人口が急速に減少していく」ことが分かっています。

年金制度への長期的圧力

長寿化の進展により、年金財政にも新たな課題が生じています。高齢化を見越した人々のライフサイクルの貯蓄行動により、想定されていた運用利回りが得られない可能性があり、これが年金財政の安定性に負の影響を及ぼすという分析結果があります。現在の65歳からの年金支給開始が、今後の日本人のライフスタイルに本当にフィットしたものであるか検討が必要な状況です。

医療費急増の実態と課題

高額医療技術の保険適用拡大

医療費の増加要因として、医療の高度化が大きく関係しています。例えば、2023年12月に保険適用されたアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」は、体重50キロの人の場合、年間費用が298万円になります。患者の自己負担額は高額療養費制度により、70歳以上の一般所得層では年間14万4000円程度に抑えられますが、残りの大部分は公的医療保険から支出されます。

免疫チェックポイント阻害剤についても、承認当初のニボルマブは年間3,800万円という極めて高額な治療費でした。現在は年間1,090万円程度まで薬価が引き下げられていますが、それでも患者の自己負担は月額19万円程度となり、多くの患者は年間50~100万円程度の負担となっています。

医療費の国際比較と負担構造

興味深いことに、日本の医療費は国際的に見ると決して高くありません。OECD諸国の総医療費の対GDP比率で日本は8.1%であり、これは米国の15%の約半分にすぎません。先進国の中では最も低い水準ですが、政府が支出している医療費の割合は25%程度で、国民の直接負担と保険料負担が大きな割合を占めています。

しかし、医療費の負担構造を歴史的に見ると、1980年当時と比べて国の医療費負担と事業主負担は減っており、一方で国民の直接負担と地方自治体の負担が大幅に増えています。「三方一両損」と称された医療制度改革の実態は、国と事業主の負担が減り、国民と地方自治体の負担が増えたものでした。

若者世代への深刻な影響

若者の貧困率上昇と雇用環境悪化

日本では若者の貧困が深刻化しており、特に単身者の若年層と高齢層に貧困が目立ちます。景気が悪くなると日本企業では若年層の採用を控えるため、若者の失業率が高くなり、たとえ失業者でなくとも勤労する若者の賃金は年功序列制によってかなり低く抑制されています。

現代社会の3人に1人が非正規雇用者といわれ、1995年〜2005年の就職氷河期には正社員の求人が減少し、現在でもこの時代の非正規雇用者は100万人〜270万人ほどいるとされています。2021年3月卒業予定の大学生の就職内定率は69.8%と、前年より7.0ポイント低下し、リーマン・ショック後に次ぐ過去2番目の低下幅となりました。

治安悪化と犯罪の増加

若者の経済的困窮は治安悪化にも直結しています。2024年の刑法犯認知件数は73万7679件で3年連続増加し、詐欺の認知件数は5万7324件と前年比24.6%増加しました。特に深刻なのは、SNSの「闇バイト」への応募がきっかけで特殊詐欺に関与する若者の増加で、検挙者の42.7%にのぼり、20代がほぼ半数を占めています。

「生活困窮」が動機の詐欺事件の割合が約4割を占めるなど、経済的困窮が犯罪の背景にあることが明らかになっています。国民の76.6%が「ここ10年間で治安は悪くなったと思う」と回答しており、体感治安の悪化が進んでいます。

奨学金返済と教育格差

親の経済状況の悪化により、学生が奨学金を自分で支払う状況が生まれています。日本の奨学金制度は欧米などに多い給付型ではなく、卒業後に多額の返済義務を背負う人が多く、昼の大学学部に通う学生のおよそ半数が何らかの奨学金を受給している一方で、卒業後に収入の減少により返済を3か月以上延滞している人は17万3000人にのぼります。

研究開発力と国際競争力

研究開発投資の現状

一方で、日本の研究開発投資は堅調な伸びを見せています。2023年度の科学技術研究費は22兆497億円と過去最高を記録し、名目GDP比3.70%となりました。これは韓国の5.21%に次いで主要国中第2位の水準です。

研究開発費のGDP改定により、名目成長率は年平均約0.3%ポイント押し上げられており、技術貿易収支は4兆3,618億円の黒字でインバウンドと並び稼げるサービス分野となっています。しかし、研究開発費の規模や伸び率で見ると、米国の87兆6,485億円、中国の66兆663億円に大きく後れを取っています。

生産性向上の必要性

日本経済の根本的な問題は、高い生産性向上を達成できなかったことにあります。バブル崩壊後の「失われた10年」では不良債権問題により、さらなる「失われた10年」では企業のバランスシート改善にもかかわらず、積極的な設備投資を行わず、R&Dを含め生産性向上への投資が不足しました。

結論:再生への道筋

構造改革の推進

日本経済の再生には、抜本的な構造改革が不可欠です。1980年代の米国や英国が古い規制の撤廃など経済活性化のための構造的な改革を実施し、その後の成長基盤となったように、日本も硬直的な経済社会構造を変革すれば、潜在力を引き上げることができます。

労働力、資本、技術といった貴重な資源を生産性の低い分野から高い分野や社会的ニーズの高い分野に移動させることで、日本経済の真の実力を開花させることが可能です。

世代間負担の適正化

医療・介護分野における資源配分の見直しも重要な課題です。高齢者への高額医療の適用基準や治療期間の最適化、予防医療への重点配分など、限られた資源をより効率的に活用する仕組みづくりが求められます。同時に、若者世代への教育投資や就業支援の充実により、持続可能な社会保障制度の基盤を構築する必要があります。

将来への希望

「失われた30年」は確かに深刻な問題ですが、日本には依然として高い技術力と研究開発力があります。デジタル化や脱炭素化といった新たな成長分野への積極的な投資、構造改革の断行、そして世代間の負担と受益の適正化を通じて、日本は再び輝きを取り戻すことができるはずです。重要なのは、現状を正しく認識し、将来世代のために今行動を起こすことです。

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