経済的成功を収めた起業家が次のステージに進むために必要な新たな動機づけと、その重要性について探ります。年間5,000万円程度の自由に使える資金を得た後、さらなる成長へのモチベーションが低下する多くの起業家にとって、金銭以外の価値観がいかに重要かを解説します。
経済的成功後のモチベーション転換点
起業家にとって、事業の成長と経済的成功を達成することは大きな目標です。しかし、ある程度の経済的自由を手に入れた後、「次のステージ」へと進む意欲の維持が難しくなるケースが少なくありません。これは多くの起業家が経験する「プラトー現象」と呼ばれる停滞期です。
プラトー現象とは、頑張っているのに成果が伴わない一時的な停滞期のことを指します。「プラトー」は高原や台地などの地形をあらわす言葉で、山に登るときのように、ずっと同じ角度で上昇するわけではなく、途中に平らになった場所があるという状態を比喩しています。
経済的成功だけでは持続しない理由
日本政策金融公庫の調査によると、起業の動機として「収入を増やしたかった」(35.4%)や「自分が自由に使える収入が欲しかった」(14.6%)といった経済的な理由が上位に挙げられています。しかし、こうした金銭的な動機だけでは、ある程度の経済的成功を収めた後、さらなる成長へのモチベーションを維持することが難しくなります。
特にある程度の経済的自由を手に入れた後は、銀行口座に入金される数字が増えても、人生の幸福度はそれ以上変わらなくなるという現象が起きています。これは、マズローの欲求階層説でいうところの、生理的欲求や安全の欲求が満たされた後、より高次の欲求が重要になってくることと一致しています。
自己決定理論から見る内発的モチベーション
経済的成功後のモチベーション維持には、「自己決定理論」が重要な示唆を与えてくれます。2000年にデシとライアンが発表したこの理論は、モチベーション(内発的動機付け)に関する重要な考え方です。
3つの基本的欲求とモチベーション
自己決定理論によれば、人間のモチベーションを支える基本的欲求には以下の3つがあります:
- 自律性 – 自分の行動を自分で決められること
- 有能感 – 自分の能力を発揮し、成果を出せるという感覚
- 関係性 – 他者との良好な関係性
この理論によれば、これら3つの欲求が満たされることで内発的動機づけがされた状態となり、人は自発的に行動を起こす状態になります。
特に起業家にとって、経済的成功後は「お金を稼ぐ」という外発的モチベーションから、「自分の価値観に基づいた行動」という内発的モチベーションへの転換が重要になってきます。
内発的モチベーションの力
社内起業家(イントラプレナー)に関する調査でも、成功している起業家に共通しているのは、「新規事業の立ち上げという行為そのものに内発的報酬を見出していること」であり、「新しいものを作ること自体が面白い」という内発的モチベーションを持っていることが明らかになっています。
こうした内発的モチベーションは、経済的な成功を超えた持続可能な原動力となり得るのです。
金銭以外のモチベーション源
では、経済的成功を収めた起業家が、次のステージで活用できる金銭以外のモチベーション源には何があるのでしょうか?
1. 社会的価値の創造
経済的な成功を超えたモチベーションとして、社会に対する価値提供や貢献が挙げられます。自分のビジネスが社会的課題の解決に貢献していることを実感できると、深い満足感と持続的なモチベーションにつながります。
特に、「楽しい」と「ありがとう」を集めることを第一義的に取り組んできた起業家の例では、お金は自然にその結果としてついてきたと述べられています。「ありがとう」の感謝を集めることの喜びは、売上が上がることよりも深い満足感をもたらすことがあり、特に金銭的な喜びには慣れが生じても、「ありがとう」には飽きることがないという特徴があります。
2. 個人的成長と挑戦
プラトー現象を乗り越えるための重要な要素として、新たな挑戦があります。プラトー現象は一時的なものであり、必ずいくつかの段階を経て成長していきます。
特に、次のようなステップがあります:
- 頑張ってもすぐには効果が出ない段階
- いったん効果は出ても、その後すぐ頭打ちになる段階
- 「あれ?そういえばできているかも」と気付く段階
- いつでも、どんな角度からでも、それができる段階
このように継続的な挑戦と学習によって、プラトー現象を乗り越え、新たな成長曲線を描くことができます。
3. 非金銭的報酬の活用
企業経営においても、従業員のモチベーション向上に「非金銭的報酬」が重要であることが指摘されています。これは起業家自身のモチベーションにも適用できる考え方です。
非金銭的報酬とは「仕事を通じて得られる喜びや満足感、自己成長の達成感など」を指します。単なる金銭的な見返りではなく、働くことで得られる「お金以外のご褒美」という位置づけです。
特に重要なのは以下の2点です:
- 認知と承認 – 自分の存在や貢献が認められていると感じること
- 言語教示 – 具体的な行動や改善点を言葉で示し、どのようにすればよりよい結果が得られるかを明確に教えること
起業家にとっても、周囲からの認知や承認は大きなモチベーション源となります。また、メンターからの具体的なアドバイスも成長とモチベーション維持に貢献します。
金銭を超えたモチベーション創出の実践法
経済的成功を収めた起業家が、さらなる成長のために取り入れるべき実践的なアプローチを考えてみましょう。
ビジョンの再定義
経済的目標を達成した後は、自社や自分自身のビジョンを再定義することが重要です。単なる売上や利益の増加ではなく、どのような社会的影響を与えたいのか、どのような価値を創造したいのかを明確にすることで、新たなモチベーションが生まれます。
継続的学習と成長の機会
新しい分野への挑戦や、これまでとは異なるスキルの習得は、停滞感を打破するのに効果的です。起業家としての成長をイメージした時、「これ以上自分は成長できない」と感じることがモチベーション低下につながります。新たな学びによって成長実感を取り戻すことが重要です。
人間関係とネットワークの構築
自己決定理論における「関係性」の欲求を満たすため、起業家同士のコミュニティへの参加や、メンターシップの構築が有効です。他の起業家との交流から刺激を受け、アイディアについて情報交換することで、モチベーションが上がった例も報告されています。
結論:持続可能な起業家精神の構築
経済的成功後の起業家にとって、金銭以外のモチベーション源を見つけることは、持続可能な成長と満足のために不可欠です。内発的モチベーションに基づいた行動、社会的価値の創造、継続的な成長と挑戦、そして良好な人間関係の構築が、次のステージへの原動力となります。
起業の初期段階では経済的成功が重要な目標かもしれませんが、その先の成長には「お金以外のビジネスの目的」を明確にすることが必要です。「楽しい」と感じられる事業に取り組み、「ありがとう」の感謝を集めることで、より深い満足感と持続的なモチベーションを得ることができるでしょう。
金銭的な成功は、より大きな目的を達成するための手段に過ぎません。真の起業家精神は、経済的成功を超えたところに花開くのです。
参考情報サイト
jpn.nec.com/mobile-pos/column/column0012/index.html
note.com/hidemaru1976/n/n8069f5d3ba5e
agora-web.jp/archives/2044023.html

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