あなたは経営者に「何が目標ですか?」と質問したら、どんな答えが返ってくると思いますか?「会社の売上を伸ばすこと」「市場シェアを拡大すること」「社会に貢献すること」??そんな建前の裏には、実は多くの経営者が共通して持つ本音があります。それは「自分の欲求を満たすこと」です。今回は、経営者の行動原理となる欲求の正体と、それをコントロールする術について深掘りしていきます。
経営者を動かす本当の原動力とは?欲求の正体を解明
経営者の99%が持つ共通点
多くの経営者と接していると、表面的な経営目標の奥には必ず何らかの「欲求」が隠れていることに気づきます。成功している経営者も、失敗した経営者も、その行動原理の多くは欲求を満たすことにあります。この点は、心理学の大家アブラハム・マズローが提唱した「欲求5段階説」からも裏付けられています。
マズローによれば、人間の欲求は5つの階層に分けられます。
- 生理的欲求:食事や睡眠など生命維持に必要な基本的欲求
- 安全の欲求:身体的・経済的な安全を求める欲求
- 社会的欲求:他者との繋がりや所属感を求める欲求
- 承認欲求:他者から認められ、尊重されたいという欲求
- 自己実現の欲求:自分の可能性を最大限に発揮したいという欲求
経営者の場合、特に「承認欲求」と「自己実現の欲求」が強く表れやすいことが研究でも示されています。
成功と失敗を分ける欲求の質
心理学者デビッド・マクレランドは、人間の欲求を「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」の3つに分類しました。この理論によれば、起業家や経営者には特に「達成欲求」が高い人が多いと言われています。
ただし、すべての欲求が経営者としての成功に繋がるわけではありません。「モテたいから派手な経営者になりたい」という外見的な成功を求める欲求と、「社会に新しい価値を生み出したい」という内発的な欲求では、その持続性や周囲への影響力が大きく異なります。
「ビジネスのフロー理論」の研究によれば、外発的動機(お金や名声を得るため)よりも、内発的動機(自分の信念や価値観に基づく)の方が、長期的な成功につながりやすいことが分かっています。
欲求が招く経営判断のバイアスと失敗のメカニズム
自信過剰バイアスの落とし穴
経営者の欲求が強すぎると、判断にバイアスが生じることがあります。特に危険なのが「自信過剰バイアス」です。
ある研究によれば、起業家は自分の知識やスキルを過大評価し、ビジネスリスクを適切に評価できないことがあります。この「統制の錯覚」により、自分のビジネスが成功する確率を実際よりも高く見積もってしまうのです。
セラノスの創業者エリザベス・ホルムズCEOの例は、この典型と言えるでしょう。わずかな血液から多数の検査ができるという革新的技術を謳い、企業価値を90億ドル近くまで高めましたが、実際にはその技術は存在せず、企業価値はほぼゼロになりました。
欲望のコントロールができない経営者の末路
「セックスすらコントロールできない奴は成功しない」という刺激的なタイトルの記事が示すように、基本的な欲望のコントロールができない経営者は、ビジネス判断でも自制心を欠き、失敗しやすい傾向があります。
欲望に振り回されると、目先の利益や快楽を優先し、長期的な視点を失いがちです。これは特に重要な経営判断において致命的な結果をもたらすことがあります。
成功する経営者はどのように欲求をコントロールしているのか
自己認識力と感情コントロールの重要性
成功する経営者に共通するのは、高い「自己認識力」と「感情コントロール力」です。自分の感情や欲求を客観的に認識し、それらが意思決定にどう影響するかを理解することが重要なのです。
感情日記をつけたり、感情が高ぶったときに一度立ち止まって深呼吸をしたりするなど、具体的な感情コントロールの方法も紹介されています。
欲望に「愛」を加える方法
興味深いアプローチとして、「欲望に愛を加える」という考え方があります。これは単なる自分の欲望を「誰かのため」という視点で捉え直すことで、「欲望」を「必要」に変えるという方法です。
例えば「年収1000万円を稼ぎたい」という欲望も、「親に恩返しするため」という目的を加えることで質が変わります。こうすることで協力者も現れやすく、成功確率も高まるという理論です。
欲求を活かした健全な経営判断のための5つの実践法
1. 欲求の正体を知る
まず自分の行動の原動力となっている欲求が何かを正確に把握しましょう。マズローの5段階説を参考に、自分がどの段階の欲求に強く動かされているかを分析することが重要です。
2. 内発的動機を育てる
外発的動機(お金、名声、地位など)より、内発的動機(使命感、価値観、信念など)を育てることが長期的な成功につながります。自分が本当に情熱を感じられる仕事や目標を見つけることが大切です。
3. 根源的欲求から事業を考える
事業の本質は、顧客の根源的欲求を満たすことにあります。人間の基本的欲求(食欲、睡眠、安全など)を起点に、そこから提供価値を考えることで、より本質的なビジネスが生まれます。
4. バイアスを認識する訓練をする
自信過剰バイアスなど、判断を歪める認知バイアスを認識する訓練をしましょう。重要な意思決定の前には、他者の意見を求めたり、データに基づいた冷静な判断を心がけることが重要です。
5. 長期的視点を持つ
目先の欲求に振り回されず、長期的な視点から判断を下す習慣をつけましょう。「この判断は1年後、5年後に自分や会社にどんな影響を与えるか」と常に問いかけることが大切です。
欲求と向き合い、バランスを取る経営者になるために
経営者の欲求は、適切にコントロールできれば大きな推進力となります。しかし、コントロールを失えば破滅的な結果を招くこともあります。
重要なのは、自分の欲求を否定せず、それを認識した上で、より高い目的や価値観と結びつけることです。「誰かのため」「社会のため」という視点を持つことで、単なる自己満足の欲求が、社会的価値を生み出す原動力に変わります。
最終的には、経営者として成功するためには、自己認識を深め、感情をコントロールし、欲求をバランス良く満たしていくことが求められます。それこそが、持続可能な成功への道なのです。
あなたも自分の欲求と正面から向き合い、それをポジティブな力に変える経営者を目指してみませんか?
参考情報
・マズローの欲求5段階説(心理学)

・フロー理論と内発的動機(ミハイ・チクセントミハイ)

・経営者のための自己認識力向上ガイド(SatisfiedLife)
https://satisfiedlife.saezuri.shop/self-awareness-and-emotional-control/

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