給料は空から降ってくるものではありません。多くの人が「言われた仕事をこなせばお金がもらえる」と単純に考えていますが、実際はそれほど単純ではないのです。給料の背後には企業活動全体の仕組みがあり、その原資となるのは売上と利益です。この記事では、給料がどのように生み出され、どのような仕組みで支払われているのかを解説します。
給料の原資とは何か
給料は企業のどこからか「勝手に湧いてくる」わけではありません。給料の原資となるのは、企業が生み出す売上と利益です。
役職別の給料の原資
- 取締役報酬:企業全体の利益を原資に支払われます。企業が赤字であれば役員報酬は減額されるべきものです
- 事業部長の給与:自身が担当する事業部の利益を原資に支払われます
- 所長・責任者の給与:事業所の利益や任された組織で作った付加価値が原資です
- 一般社員の給与:個人が作る売上、生産物、成果物、その付加価値、利益が原資となります
この構造を理解すると、売上や利益が立たない状態では給料の原資が生まれないことが明確になります。つまり、「原資がないのに給料だけが支払われる」状況は、正常な商売の状態ではないのです。
企業経営における人件費の位置づけ
企業経営において、人件費は非常に重要な指標です。人件費が適切に管理されていなければ、企業の経営は困難になります。
人件費と売上の関係
企業の経営状況を把握する上で、売上に対して人件費がどれほどの割合を占めているのかは重要な指標となります。この割合を「売上高人件費率」と呼び、次の式で計算されます。
人件費率(%)=人件費÷売上高×100
売上高人件費率は業種によって大きく異なります。労働集約型の業種では比較的高い傾向があります。
| 業種 | 売上高人件費率 |
|---|---|
| 建設業 | 8.9% |
| 製造業 | 7.3% |
| 情報通信業 | 19.3% |
| 運輸業、郵便業 | 9.8% |
| 卸売業 | 5.9% |
| 小売業 | 11.6% |
| 不動産業、物品賃貸業 | 10.6% |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 22.5% |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 25.5% |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 13.8% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 20.4% |
| 全体 | 9.7% |
売上高人件費率の数値から、事業に対する人件費の負担度合いを把握することができます。数値が高すぎる場合は、無駄な残業代や給料の上げすぎなど、何か問題がないか見直す必要があります。反対に低すぎる場合は、賃金の下げすぎなど、従業員への負担が大きくなっている可能性も考えられます。
会計上の人件費の取り扱い
人件費は会計上、企業の業種や従業員の業務内容によって異なる取り扱いを受けます。
人件費の計上方法
人件費は、販管費(販売費及び一般管理費)と売上原価のどちらに含まれるのでしょうか?答えは「両方有り得る」となります。
- 製造業の場合:人件費(製造に関わる人件費)は製造原価に含まれます
- 小売業の場合:人件費は販売費になるため売上原価に含まれません
- 建設業の場合:現場に従事する人件費は売上原価(工事原価)として計上し、現場に直接従事しないバックオフィス等の人件費は経費(販管費)として計上します
このように、人件費は企業の業種や従業員の業務内容によって計上先が異なります。これは給料の原資が企業のどの部分から生み出されているかを示す指標とも言えるでしょう。
給与制度と成果分配の仕組み
企業が社員のモチベーションを高め、業績向上を図るためには、給与制度をどのように設計するかが重要になります。
成果分配の仕組み
成果分配とは、業績に基づいて報酬を分配する仕組みです。例えば、ヤマチユナイテッドでは次のような成果分配の仕組みを導入しています。
「年度末決算の実績が、予定していた一人当たりの営業利益(生産性)を超過した分の20~30%を「成果分配」として部門に還元するルール」
成果分配は「利益が一定額を超えたら出す」というものなので、社員のやる気を引き出すと同時に、会社にも資金を確実に残すことができます。業績が上がればその分配も増加し、社員は達成感を得ることができるのです。
給与の算出方法
給与の算出方法には主に以下の3つがあります。
- 定額制:働く期間に応じて支給される給与が決められる仕組み。月給や時給など
- 出来高制:労働者本人の業務実績に応じて給与が支払われる仕組み。歩合制とも呼ばれる
- 年俸制:前年度の業績に応じて、賞与を含んだ年間の給与が決定される仕組み
どの方法を採用するかは企業の方針や業種によって異なりますが、いずれにしても給与を支払うための原資(売上・利益)が必要であることに変わりはありません。
自分の給料の原資を確保するための考え方
給料の原資を理解したうえで、自分の給料の原資を確保するにはどうすればよいでしょうか。
業務改善と生産性向上
業務改善は残業代の削減へと繋がり、人件費の削減に大きく影響を与えます。従業員一人ひとりが業務改善の意識を持ち、余分な工数を削減することで、より効率的に業務を進めることができます。
また、ITツールなどを導入し、業務をシステム化することも有効です。従業員が抱える業務量が多く、残業も多くなっている場合は、機械化できる業務であれば、機械化も検討すべきでしょう。
給料の原資を意識した働き方
「自分の給与の原資を確保できるように、自分の仕事を改善しましょう」。これは給料の原資を理解したうえでの重要な考え方です。自分の仕事がどのように企業の売上や利益に貢献しているかを常に意識し、より価値の高い仕事をすることが、結果的に自分の給料の原資を確保することにつながります。
企業財務から見る給料の位置づけ
企業財務の観点から見ると、給料(人件費)は企業の損益に大きな影響を与える要素です。
損益計算書における人件費
損益計算書(P/L)では、売上総利益(粗利益)は売上から売上原価を差し引いた金額で、本業で得られた利益を示します。そして、売上総利益から販売費(営業部門の人件費等)及び一般管理費(間接部門の人件費等)を差し引いたものが営業利益となります。
つまり、人件費は企業の利益を直接左右する重要な要素なのです。人件費が高すぎれば営業利益が圧迫され、低すぎれば従業員のモチベーションや生産性に影響が出る可能性があります。
キャッシュフローと給料の関係
企業のキャッシュフローの観点からも、給料は重要な位置を占めています。営業キャッシュフローには、商品やサービスの販売によって得た現金や、商品の仕入・製造のために支払った現金、広告宣伝費などが含まれます。また、従業員に支払った給与や税金の支払い、保険金の受け取りなども営業キャッシュフローに含まれます。
営業活動がしっかりできていれば、営業キャッシュフローはプラスになります。逆に商品やサービスに問題があるもしくは営業活動に問題があれば、利益が出ていないということでマイナスになります。このように、給料の支払いはキャッシュフローにも大きな影響を与えるのです。
給料の本質を理解することの重要性
多くの人が「給料はどこからか勝手に湧いてくる」と考えがちですが、実際には企業の売上と利益があってこそ支払われるものです。給料の原資を理解することは、自分の仕事の価値や企業における自分の立ち位置を理解することにもつながります。
自分の仕事がどのように企業の売上や利益に貢献しているのか、そして自分の給料がどのような原資から支払われているのかを理解することで、より主体的に仕事に取り組むことができるでしょう。
日々の業務において、「自分の給与の原資を確保できるように、自分の仕事を改善する」という意識を持つことが、結果的に企業全体の業績向上にもつながるのです。
まとめ
給料は企業の売上と利益という原資から支払われるものです。役職や職責によってその原資の範囲は異なりますが、いずれにしても「原資がなければ給料は支払えない」という基本原則は変わりません。
企業経営において人件費は重要な指標であり、売上高人件費率という形で管理されています。業種によって適正な人件費率は異なりますが、この指標を通じて企業の健全性を測ることができます。
給料の原資を理解し、自分の仕事がどのように企業の売上や利益に貢献しているかを意識することで、より価値の高い仕事をすることができます。それが結果的に自分の給料の原資を確保することにつながるのです。
給料の本質を理解することは、単なる知識以上の価値があります。それは自分の仕事の意義を再確認し、より主体的に働くための重要な視点なのです。
参考サイト
MoneyForward「人件費率とは?計算方法や業種別の平均値、改善方法を解説」https://biz.moneyforward.com/erp/basic/5446/
MoneyForward「売上総利益(粗利益)とは?計算方法や他の利益との違い」https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/38796/
F&M club「人件費は事業運営の重要な指標!人件費からみる財務分析を解説」https://www.fmclub.jp/blog/zaimu/36

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