オオカバマダラに似ている蝶たち-擬態という生存戦略

自然


自然界には生き残るためのさまざまな戦略があります。その中でも「擬態」は特に興味深いもののひとつです。今回は北米の「帝王蝶」とも呼ばれるオオカバマダラとそれに似た蝶たちについて解説します。

オオカバマダラとは?美しさと毒性を兼ね備えた蝶

オオカバマダラ(大樺斑・学名:Danaus plexippus)は、タテハチョウ科マダラチョウ亜科に分類される蝶の一種です。翅開長は9.4~10.5cm程度で、黒、オレンジ、白のまだらな模様が特徴的です。

この蝶が注目される理由はいくつかあります。まず、幼虫はトウワタという植物を食べて成長しますが、この植物に含まれる毒素を体内に蓄積します。この毒は成虫になっても持ち続け、捕食者への防御として機能しています。

また、オオカバマダラは長距離移動(渡り)をすることでも知られています。ロッキー山脈の東側の個体群はメキシコのミチョアカン州に移動して越冬し、西側の個体群はカリフォルニア州の海岸で越冬します。4000kmほどの距離を移動することもあるというから驚きです。

カバイロイチモンジ~オオカバマダラの"そっくりさん"

北米には、オオカバマダラにそっくりな蝶がいます。それがカバイロイチモンジ(Limenitis archippus)です。しかし、この蝶はオオカバマダラと違って毒を持っていません。

では、なぜこんなにも似ているのでしょうか?それはベイツ型擬態という生存戦略のためです。捕食者である鳥などは、一度オオカバマダラを食べて不快な思いをすると、似た外見の蝶も避けるようになります。カバイロイチモンジはこの性質を利用して天敵から身を守っているのです。

北アメリカの鳥はオオカバマダラを食べると嘔吐したり羽毛が逆立ったりするため、カバイロイチモンジのような似た蝶も食べなくなります。これこそが擬態という生存戦略の成功例です。

日本周辺のオオカバマダラ似の蝶たち

日本にオオカバマダラは定着していませんが(稀に迷蝶として記録あり)、その近縁種であるカバマダラ(Danaus chrysippus)が奄美大島以南に分布しています。

さらに興味深いことに、ツマグロヒョウモンというタテハチョウ科の蝶のメスは、このカバマダラに擬態していると言われています。ツマグロヒョウモンは近年、温暖化の影響で日本国内での分布を北上させており、かつては珍しかったものの、最近では本州でも普通に見られるようになりました。

また、メスアカムラサキという蝶のメスもカバマダラに擬態しています。これもベイツ型擬態の一例です。

マダラチョウ亜科の特徴と擬態の種類

マダラチョウ亜科の蝶は、多くの種が毒を持ち、その危険性を周囲に知らせるためか非常にゆるやかに飛翔するという特徴があります。

擬態には大きく分けて2種類あります:

  1. ベイツ型擬態(模倣擬態):毒のない種が毒のある種に似せることで捕食を避ける戦略。カバイロイチモンジやツマグロヒョウモンのメスなどがこれにあたります。
  2. ミュラー型擬態(相互擬態):毒のある種同士が似た外見を持つことで、捕食者にとって「この模様・色の蝶は食べられない」という学習効果を高める戦略です。

アジアに生息するマダラチョウたち

アジア地域にもオオカバマダラに似た蝶がいます。スジグロカバマダラ(Salatura genutia、英名:Common Tiger)は、インドから東南アジア、中国南部、台湾、日本の南西諸島に分布しています。

スジグロカバマダラは、カバマダラに似ていますが、オレンジ部分にかかる翅脈が黒く太くなっていることで識別できます。

アサギマダラとオオカバマダラの共通点

日本でよく知られる渡り蝶のアサギマダラもマダラチョウ亜科に属しており、オオカバマダラと同様に長距離移動をします。

両種とも有毒のガガイモ科植物を幼虫が食べることで、成虫も食草由来の有毒成分を体内に蓄積します。そのため、鳥などの天敵から捕食されにくいという共通点があります。

日本のアサギマダラは春~夏には台湾・南西諸島から本州・北海道へ北上し、秋には逆のコースで南下します。最長移動記録としては、和歌山から高知を経由して香港まで約2,500kmを移動した例があります。

まとめ:自然界の不思議な適応戦略

蝶の世界における擬態の事例は、長い進化の過程で生まれた驚くべき適応戦略です。オオカバマダラとその近縁種、そしてそれらに擬態する種々の蝶たちは、生存競争を勝ち抜くための驚くべき戦略を私たちに見せてくれています。

地球温暖化によってこれらの蝶の分布域も変化しつつあります。今後、日本でもより多くのマダラチョウの仲間が見られるようになるかもしれません。身近な自然の中にある進化の痕跡に目を向けてみるのも、自然観察の楽しみ方のひとつではないでしょうか。

参考サイト

東京大学総合研究博物館 https://www.um.u-tokyo.ac.jp/UMUTopenlab/library/b_25.html
蝶切手の魅力 https://butterfly.kje.jp/wadai/mimicry.html
ぷてろんワールド https://www.pteron-world.com/topics/ecology/mimicrysample.html

注意

・Amazonのアソシエイトとして、双子のドラ猫は適格販売により収入を得ています。
・この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的・法律的なアドバイス等の専門情報を含みません。何らかの懸念がある場合は、必ず医師、弁護士等の専門家に相談してください。
・記事の内容は最新の情報に基づいていますが、専門的な知見は常に更新されているため、最新の情報を確認することをお勧めします。
・記事内に個人名が含まれる場合、基本的に、その個人名は仮の名前であり実名ではありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました