海洋プラスチックごみ問題や環境負荷低減の観点から注目されている生分解性プラスチック。自然に分解される特性を持ち、環境にやさしい素材として期待されていますが、実際にはさまざまな問題点や課題が存在します。本記事では、生分解性プラスチックが抱える問題点を多角的に解説し、その現状と将来展望について詳しく探ります。
生分解性プラスチックの分解に関する問題
分解条件が限定的である
生分解性プラスチックは、あらゆる環境で均一に分解されるわけではありません。分解速度や条件は環境によって大きく異なります。
温度、湿度、酸素の有無、微生物の存在など、様々な環境要因が分解速度に影響を与えます。一般的に、温度や湿度が高いほど分解は促進されますが、それでも完全な分解には一定の時間を要します。
特に問題なのが、土壌環境と海洋環境での分解速度の違いです。海洋生分解性プラスチックは、土壌中で分解するものよりも種類が限られています。
「生分解性プラスチックは土壌や海洋の微生物によって分解されますが、すぐに分解されるわけではなく、完全に分解するまで環境状況の違いによって一定の年月がかかります」
愛知県産業技術研究所の研究によると、海水中の微生物は河川水や湖水に比べて少ないため、海水中での分解速度は遅くなることが示されています。
分解までに時間がかかる
生分解性プラスチックが完全に分解されるまでの時間は、種類や形状、環境条件によって大きく異なります。
ポリ乳酸(PLA)は6ヶ月から2年、ポリヒドロキシアルカンノ酸(PHA)は1年から3年、ポリブチレンセクシナート(PBS)は1年から5年程度かかるとされています。
日本バイオプラスチック協会(JBPA)では、生分解性の基準として3か月で対象物の60%以上が分解されることを定義としていますが、完全に形がなくなるまでには長い年月がかかってしまうのが現状です。
材料特性に関する問題
耐熱性・強度が低い
生分解性プラスチックは、その特性上、従来のプラスチックと比較して耐熱性や強度が低い傾向にあります。
「生分解性プラスチックは、土壌や海洋などの微生物によって分解されるという性質があるが故に、耐熱性・耐油性が低く、継続的な荷重や強度が必要とされる用途には不向きです」
この問題により、電子レンジによる加熱が想定されるコンビニエンスストアのお弁当容器などには採用しにくいという課題があります。ただし、最近では製品改良が進み、ポリ乳酸などでも電子レンジ対応の商品も開発され始めています。
用途の制限
耐熱性や強度の問題から、生分解性プラスチックの用途は限定的になりがちです。現状では、性能・強度・用途の幅が従来の石油由来プラスチックを上回らないことが弱点の一つとなっています。
コスト面の問題
製造コストが高い
生分解性プラスチックは、研究開発や生産プロセスに手間がかかるため、現状では通常のプラスチックよりも製造コストが高くなっています。
「現状、生分解性プラスチックは大量且つ安価に生産することが難しい材料であり、一般の汎用樹脂と比較すると、材料費でかなりのコスト差が出てしまいます」
具体的な価格差の例として、ポリプロピレン(PP)が約300円/kgであるのに対し、ポリ乳酸(PLA)は約1000円/kgと約3倍以上の価格差があります。
原料費の変動
植物由来の原料を使用する場合は、原料費の高騰などの影響も受けやすくなります。これにより、安定した供給や価格設定が難しくなるという課題もあります。
リサイクルに関する問題
マテリアルリサイクルが困難
生分解性プラスチックは、その分解しやすい性質ゆえに、廃棄物を製品原料として再利用する「マテリアルリサイクル」が困難です。
「生分解性プラスチックは、自然に分解しやすい性質がありますが、その一方で、再生樹脂として再利用するマテリアルリサイクルは困難になります」
特に将来、海洋生分解性プラスチックが大半となれば、再利用が困難で埋め立てや焼却に回る割合が高くなり、リサイクルシステムへの影響が懸念されます。
廃棄処理上の問題
適切な分別が必要
生分解性プラスチックが持つ環境面でのメリットを活かすためには、適切な分別が不可欠です。
「一般的なプラスチックと同様に、可燃ごみとして家庭や企業で廃棄されてしまうと、生分解性プラスチックが有する特性(土壌・海洋などで微生物により分解される性質)が活かされないことになります」
また、埋め立て廃棄ができるにも関わらず、可燃ごみで廃棄されると焼却を行うことになり、エネルギーやコストが無駄にかかってしまいます。
ごみ回収システムの問題
日本全国の自治体でごみの回収方法は異なり、生分解性プラスチックの特性を活かせる回収システムが整っていない現状があります。
例えば東京都では、2008年からプラスチックと他のごみを一緒に回収して焼却処理を行っていますが、これでは生分解性プラスチックの特性を活かせません。
コンポスト施設の不足
生分解性プラスチックの中には、コンポスト(堆肥化)施設での高温多湿な環境で効率的に分解されるものがありますが、そのための施設建設が遅れています。
「使用後に発酵・堆肥化させるためのコンポスト施設の建設も遅れており、廃棄処理上の問題もあります」
環境負荷に関する懸念
原料が石油由来の場合の問題
生分解性プラスチックの中には、バイオ由来だけでなく石油由来のものも存在します。
「PVA(ポリビニルアルコール)やPGA(ポリグリコール酸)などの石油を原料とするものは、生成や焼却時のCO2排出量がバイオマスプラスチックより多くなり、カーボンニュートラルが実現できているとは言えません」
海洋生分解性プラスチックの普及の遅れ
海洋プラスチックごみ問題への対応として期待される海洋生分解性プラスチックですが、現状ではその普及が進んでいません。
「国内で生産されているプラスチックの内、生分解性プラスチックはわずか0.02%ほどで、その内、海洋生分解性プラスチックはさらにわずかしか作られていません」
今後の展望と課題解決に向けた取り組み
技術開発の促進
生分解性プラスチックの普及拡大のためには、さらなる技術の進歩が課題です。現在の生分解性プラスチックの問題点が解決できる新素材の開発と量産化が進めば、コストダウンも実現し、活用しやすくなるでしょう。
消費者の理解促進
広報活動を推進し、消費者の関心・理解を集めることも必要です。生分解性プラスチックの特性や適切な使用方法、廃棄方法についての理解が広まれば、その特性を活かした利用が進む可能性があります。
回収・処理システムの整備
各都道府県や自治体において、生分解性プラスチックの廃棄や回収における整備が必要とされています。適切な分別回収システムと処理施設の整備が進めば、生分解性プラスチックの環境面でのメリットが最大限に活かされるでしょう。
まとめ
生分解性プラスチックは、環境問題への対応として期待される素材ですが、分解条件の限定性、材料特性の制約、高コスト、リサイクルの困難さ、適切な廃棄処理システムの不足など、さまざまな問題点や課題を抱えています。
これらの課題を解決するためには、技術開発の促進、消費者の理解向上、適切な回収・処理システムの整備などが重要です。生分解性プラスチックの特性を理解し、その長所と短所を踏まえた上で、適材適所での利用を進めていくことが、持続可能な社会の実現に向けて重要なステップとなるでしょう。
マルヰ産業をはじめとする企業の取り組みも、生分解性プラスチックの課題解決と普及に向けた重要な一歩となっています。技術革新と社会システムの整備が進めば、生分解性プラスチックはより環境にやさしい素材として、私たちの生活に広く浸透していくことが期待されます。
参考サイト:
DNP「生分解性プラスチックは環境に良い? 問題点やデメリットに迫る」https://www.dnp.co.jp/biz/column/detail/20172226_4969.html
マルヰ産業「生分解性プラスチックの分解時間の目安は?」https://www.maruisangyou.co.jp/column/column-41/
アイグッズ「生分解性プラスチックとは?注目の背景・今後の課題と活用のコツ」https://sus.i-goods.co.jp/columns/5250

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