蛍光灯がハッカーの新たな武器に!?最大20m離れた場所からIoTデバイスを操作する衝撃の攻撃手法

技術

皆さんの家庭やオフィスにある普通の蛍光灯が、実はハッカーの攻撃ツールになる可能性があることをご存知でしょうか?浙江大学の研究チームが発表した最新の研究によると、蛍光灯を利用して離れた場所からIoTデバイスを遠隔操作する新たな攻撃手法が実証されました。この攻撃は、スマートホームセキュリティから医療機器、産業制御システムまで、私たちの生活に密接に関わる様々な機器に影響を与える可能性があります。

蛍光灯が”アンテナ”に変わる衝撃の仕組み

蛍光灯といえば、私たちの日常生活に欠かせない照明器具の一つですが、実はその構造と動作原理が攻撃に利用される要因となっています。浙江大学の研究チームが「LightAntenna」と名付けたこの攻撃手法は、蛍光灯の持つ独特の特性を巧みに活用しています。
蛍光灯は主に2つの部品から構成されています:

  • バラスト(安定器):高周波電圧を生成する部分
  • 蛍光管:水銀蒸気が電離してプラズマ状態になり、光を発する部分

この蛍光管内で生じるプラズマ状態の気体が鍵となります。このプラズマは導電性を持ち、アンテナとして機能する特性があるのです。研究チームの実験によると、蛍光管はバラストよりも約25dB高い電磁干渉(EMI)を発生させることが確認されました。

さらに驚くべきことに、蛍光灯は700~1500MHzという広い周波数帯でEMIを発生させる能力を持っています。この周波数帯は多くの無線通信やセンサー技術で使用されているため、様々な種類のデバイスが攻撃対象となる可能性があるのです。

離れた場所から蛍光灯を”ハック”する方法

「でも、攻撃者が蛍光灯に直接アクセスする必要があるのでは?」と思われるかもしれません。しかし、研究チームが開発した手法はもっと巧妙です。電力線を通じて高周波信号を注入することで、最大20mも離れた場所から蛍光灯を制御できるのです。

この攻撃の具体的なプロセスは以下の通りです:

  1. 攻撃者は電力線に高周波信号を注入する装置を設置
  2. 信号は電力線を通じて対象の蛍光灯まで伝達される
  3. 蛍光灯がその信号を受け取り、電磁干渉(EMI)を発生
  4. 発生したEMIが近くのIoTデバイスやセンサーに影響を与える

この手法の恐ろしいところは、攻撃者が物理的に部屋に入る必要がないことです。別の部屋や建物の一部からでも攻撃を仕掛けることができるのです。また、一般的な蛍光灯を改造する必要もないため、攻撃の痕跡が残りにくいという特徴もあります。

実証実験で明らかになった具体的な脅威

研究チームは実際にこの攻撃手法を使って、様々な電子機器への攻撃実験を行いました。その結果は衝撃的なものでした。

温度センサーへの攻撃

工業用温度センサーに対する攻撃では、通常27.2℃と測定される室温を、最低5.6℃から最高53.3℃まで操作することに成功しました。これは単なるいたずらにとどまらず、以下のような深刻なリスクをもたらす可能性があります:

  • 医療機器の誤作動(患者の体温の誤測定など)
  • 産業プロセス制御の混乱(温度に敏感な製造工程の誤動作)
  • 食品保存システムの不具合(温度管理の失敗による食品劣化)

音声認識システムへの攻撃

さらに恐ろしいのは、音声認識システムへの攻撃です。研究チームは会議用マイクに「OK Google」などの音声コマンドを注入する実験を行いました。

この攻撃では、複数の商用音声認識APIに対して驚異的な成功率を達成しています:

  • IFlytek、OpenAI、Microsoft Azureなどの音声認識APIで76~82%の文章認識率
  • 87.1~93.5%という高い単語認識率

これにより、攻撃者は「ドアを開けて」などの命令を実行させ、スマートホームシステムのセキュリティを侵害する可能性があります。例えば、留守中の家のスマートロックを解除したり、セキュリティシステムを無効化したりすることも理論上は可能になるのです。

IoTデバイスの電磁干渉対策の重要性

この研究結果は、IoTデバイスの設計者や利用者にとって重要な警鐘となっています。EMIはIoTネットワークに様々な悪影響を及ぼす可能性があります:

  1. 通信の中断:無線通信リンクが妨害され、デバイス間の接続が不安定になる
  2. データ破損:送受信されるデータの完全性が損なわれる
  3. システムパフォーマンスの低下:応答性が悪化し、消費電力が増加する
  4. セキュリティリスク:悪意ある攻撃に利用される可能性

こうした問題に対処するためには、EMIテストレシーバーを活用して干渉源を特定し、適切な対策を講じることが重要です。また、IoTデバイスの設計段階から電磁両立性(EMC)に配慮し、適切なシールドや防護策を施すことも不可欠です。

私たちができる対策と今後の展望

このような攻撃から身を守るためには、どのような対策が考えられるでしょうか?

一般ユーザーができる対策

  • 重要なIoTデバイスを蛍光灯から離して設置する
  • 可能であればLED照明に切り替える(LED照明はこの種の攻撃に対して脆弱性が低いとされています)
  • IoTデバイスのファームウェアを常に最新の状態に保つ
  • 重要なシステムには追加の認証手段を導入する

メーカーに求められる対策

  • EMI耐性の高いデバイス設計
  • センサーデータの異常検知システムの実装
  • 電磁シールドの強化
  • セキュリティ更新プログラムの定期的な提供

この研究は、2025年2月に開催されたNetwork and Distributed System Security(NDSS)Symposiumで発表されました。この種の研究が進むことで、IoTデバイスのセキュリティ対策も進化していくことが期待されます。

まとめ

私たちの身の回りにある普通の蛍光灯が、実はハッカーの攻撃ツールになりうるという事実は、IoT時代のセキュリティの複雑さを物語っています。浙江大学の研究チームが実証した「LightAntenna」攻撃は、物理的なセキュリティとサイバーセキュリティの境界が曖昧になりつつある現代において、新たな脅威の存在を示しています。

この研究結果は、IoTデバイスの設計者、製造者、そして私たち利用者に対して、電磁干渉(EMI)に対する防御策の重要性を再認識させるものです。テクノロジーの進化とともに、セキュリティ対策も常に進化させていく必要があるでしょう。

IoT技術の恩恵を安全に享受するためには、こうした新しい脅威に対する理解と適切な対策が不可欠です。次世代のスマートデバイスでは、こうした攻撃への耐性も重要な設計要素となることでしょう。

参考情報:
ITmedia NEWS https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2504/16/news062.html

Network and Distributed System Security(NDSS)Symposium 2025 https://www.ndss-symposium.org/ndss-paper/lightantenna-characterizing-the-limits-of-fluorescent-lamp-induced-electromagnetic-interference/

リスングループ https://ja.lisungroup.com/news/technology-news/the-impact-of-emi-on-internet-of-things-iot-networks-evaluating-solutions-with-emi-test-receivers.html

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