データで考える教育改革―なぜ日本の教育政策は効果が見えないのか

お子さんの学校で「少人数学級になりました」と聞いて、安心したことはありませんか。でも、本当にそれで学力は上がるのでしょうか。中室牧子氏の『「学力」の経済学』は、こうした私たちが当たり前だと思っている教育政策に、科学的根拠の視点から鋭いメスを入れています。本書が提示する「ポイント3」では、家庭での子育ての判断だけでなく、国家レベルの教育政策をどう見るべきかという市民としての視点を与えてくれます。巨額の税金が投入される教育政策が、本当に子どもたちの未来に役立っているのか、一緒に考えてみましょう。

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少人数学級は本当に効果があるのか

「1クラス30人よりも20人のほうが、先生の目が行き届いて学力が上がる」という話を聞いたことがあるでしょう。日本では長年、少人数学級の推進が学力向上の切り札として語られてきました。しかし中室氏は、日本のデータを用いた場合、少人数学級が学力向上に効果があるという確たるエビデンスは得られていないと指摘しています。

莫大な公費を投じる政策でありながら、その費用に見合う効果が科学的に証明されていない。これは大きな問題ではないでしょうか。クラスの人数を減らすには、教室も教員も増やす必要があり、膨大な予算がかかります。もしその予算を、より効果が大きいとされる施策に振り向けることができたら、子どもたちの未来はもっと明るくなるかもしれません。

中室氏は、その予算を教員の質の向上に再配分すべきではないかと問いかけています。なぜなら、学級規模のような物的要因よりも、教員の質のほうが子どもの学力に遥かに大きな影響を与えるからです。優れた教員は、家庭環境や遺伝的要因といった不利な条件さえも乗り越えさせる力を持っています。

政策の費用対効果を考える視点

私たちは普段、家庭の買い物では費用対効果を考えます。同じ商品なら少しでも安いほうを選び、高い買い物をするときは本当に必要かどうか何度も検討するでしょう。しかし、国の教育政策となると、その費用対効果を考える視点が抜け落ちていないでしょうか。

教育政策には私たちの税金が使われています。その使い道が本当に効果的なのか、市民として関心を持つことは重要です。少人数学級に年間数百億円の予算を投じても効果が不明瞭なら、その予算を教員の質を高める研修や、優秀な人材を確保するための待遇改善に使うべきではないか。こうした議論を、データに基づいて行う必要があるのです。

本書が提示するのは、単なる批判ではありません。限られた予算を最も効果的な方法で使い、子どもたちの学力を最大限に伸ばすための合理的な思考法です。

平等な政策が格差を広げるパラドックス

「すべての子どもに平等に」という言葉は美しく聞こえます。しかし、平等を目指した政策が、かえって教育格差を拡大させてしまうことがあります。その典型例が「ゆとり教育」でした。

ゆとり教育では、学校での教育内容が減らされました。その意図は、詰め込み教育からの脱却と、子どもたちにゆとりを持たせることでした。しかし結果として何が起きたでしょうか。裕福な家庭は塾や習い事で学校で減った内容を補うことができました。一方、そうした余裕のない家庭の子どもたちは取り残され、教育格差が広がってしまったのです。

すべての子どもに同じ内容を提供することが平等だと思いがちですが、子どもたちの置かれた環境は異なります。真の平等とは、それぞれの子どもが持つ潜在能力を最大限に引き出すことではないでしょうか。そのためには、一律の政策ではなく、科学的根拠に基づいた効果的な施策を、必要な子どもに届けることが重要です。

日本に必要な第三者評価機関

「この教育政策は効果がありました」と政府が発表しても、それをそのまま信じてよいのでしょうか。政策を実施した側が自ら評価すると、どうしても甘くなりがちです。だからこそ、客観的な第三者の目が必要なのです。

中室氏は、日本の教育政策が客観的な効果測定なしに行われている現状を憂い、政策の有効性を科学的に評価する独立した第三者機関の設立を提言しています。これにより、税金が真に効果のあるプログラムに使われることを目指すのです。

米国では、科学的根拠に基づく教育政策が予算の執行にまで及んでいます。2002年に制定された教育科学改革法により、自治体や教育委員会は国の予算を獲得するために、つまり「どういう教育が成功する子どもを育てるのか」という目に見えない問いに対して、データを分析して目に見える答えを尽くすことを米国では求められています。

日本でも、教育政策の評価に科学的手法を取り入れることで、より効果的な施策が実現できるはずです。

市民としての視座を持つ

本書が読者に与えてくれるのは、単なる子育ての知識ではありません。一人の親として、そして社会を構成する市民として、教育政策をどう見るべきかという視座です。

私たちは普段、会社で予算の使い道を厳しくチェックしています。この施策に投資して本当にリターンがあるのか、もっと効果的な方法はないのか、常に考えているはずです。その視点を、国の教育政策にも向けてみましょう。

子どもたちの未来を左右する教育に、限られた予算をどう使うべきか。この問いに答えるには、感情論ではなく、データに基づいた冷静な判断が必要です。そして、その判断を下すための思考法を、本書は私たちに教えてくれるのです。

エビデンスが導く教育改革

本書『「学力」の経済学』が投げかけるメッセージは明確です。それは、教育を個人の経験談や感情論ではなく、科学的根拠に基づいて考えるべきだということ。そしてそれは、家庭での子育てだけでなく、国家レベルの教育政策にこそ必要な視点なのです。

少人数学級の効果が不明瞭なら、予算を教員の質の向上に振り向ける。平等を目指した政策が格差を広げているなら、より効果的な方法を探る。そして、政策の効果を客観的に評価する仕組みを作る。こうした改革は、データという確かな根拠があってこそ実現できます。

お子さんの将来を考えるとき、学校や国の教育政策に任せきりにするのではなく、市民として声を上げることも大切です。本書を読むことで、あなたもエビデンスに基づいた教育改革の担い手の一人になれるはずです。

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NR書評猫836 中室牧子 「学力」の経済学

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