「自分が書きたいこと」を書くのをやめたら、文章が劇的に変わった話

メールを送信した直後、不安になったことはありませんか。「これで伝わっただろうか」「誤解されていないだろうか」。そして数時間後、部下から届く質問メール。「先ほどのご指示の件ですが、つまりどういうことでしょうか」。あなたは頭を抱えます。あれほど丁寧に説明したのに、なぜ伝わらないのか。実は、その「丁寧に説明した」こと自体が問題なのかもしれません。倉島保美さんの『改訂新版 書く技術・伝える技術』は、多くのビジネスパーソンが無意識に陥っている「自己表現の罠」を指摘し、文章作成における根本的な視点の転換を迫る一冊です。

改訂新版 書く技術・伝える技術
Amazonで倉島 保美の改訂新版 書く技術・伝える技術 (スーパーラーニング)。アマゾンならポイント還元本が多数。倉島 保美作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また改訂新版 書く技術・伝える技術 (スーパーラーニング)もアマゾン...

月曜日から書き始める報告書の悲劇

プロジェクトの進捗報告書を書くとき、あなたはどこから書き始めますか。多くの人は、月曜日に何をしたかから書き始めるはずです。

「月曜日、A社の担当者と打ち合わせを行いました。先方からは前向きな反応をいただき、予算についても柔軟に対応できるとのことでした。火曜日には、社内でBチームと調整を行い、水曜日にはC部長に中間報告をしました。木曜日は資料の修正作業に時間を費やし、金曜日には最終確認を行いました」

この文章に何の問題があるのでしょうか。実は、致命的な問題が潜んでいます。それは、読み手が本当に知りたいことが、最後まで読まないとわからないという点です。

あなたの上司は多忙です。一日に受け取るメールは50通を超え、会議の合間や移動中にスマートフォンで確認することがほとんど。そんな状況で、あなたの時系列の説明を最後まで読む余裕があるでしょうか。

上司が知りたいのは、プロジェクトが予定通り進んでいるのか、問題が起きているのか、自分が対応すべきことはあるのか。この3点だけなのです。月曜日に何をしたかは、実は誰も興味がありません。

なぜ私たちは時系列で書いてしまうのか

しかし、多くの人が時系列で書いてしまうのには理由があります。それは、自分の思考プロセスをそのまま文章にしてしまうからです。

倉島さんは、質の低いビジネス文書の多くが、書き手が自身の思考プロセスや行った作業を時系列で説明する産物だと指摘しています。私たちは、自分が経験したことを順番に説明すれば相手に伝わると信じています。しかし、それは大きな誤解なのです。

考えてみてください。小説や映画のストーリーなら、時系列で語ることに意味があります。登場人物がどのような経験を経て成長したのか、その過程自体が価値を持つからです。

しかし、ビジネス文書は違います。読み手が求めているのは、結論と次のアクションです。プロセスに興味があるわけではありません。あなたがどれだけ苦労したかを知りたいのでもありません。

あなたの文章が伝わらないのは、あなたの日本語力が低いからではありません。ただ、読み手の視点に立っていないだけなのです。

文章は商品ではなくサービスである

倉島さんの指摘で最も印象的なのが、文章作成を「読者というエンドユーザーのために設計されたサービス」として捉え直すべきだという主張です。

あなたはレストランで食事をするとき、シェフの苦労話を聞きたいと思いますか。「この食材を仕入れるのに3軒の店を回りました」「下ごしらえに2時間かかりました」。そんな説明は不要ですよね。あなたが求めているのは、美味しい料理というサービスです。

ビジネス文書も同じです。読み手が求めているのは、必要な情報を効率的に得られるというサービス。あなたがどれだけ時間をかけたか、どんな苦労をしたかは、サービスの価値とは無関係なのです。

Amazonで700件以上のレビューを獲得している本書が、多くのビジネスパーソンから支持される理由がここにあります。私たちは学校で、読書感想文の書き方は習っても、ビジネス文書の書き方は習っていません。だから、自己流で書き、他人の見様見真似で対応してきました。

しかし、本書は明確に教えてくれます。ビジネス文書は自己表現の場ではない。読み手にとっての価値を最大化するサービスなのだと。

実践:同じ内容でも見せ方を変えるだけで

では、先ほどの進捗報告を、本書の原則に従って書き直してみましょう。

「結論:プロジェクトは金曜の期限通りに進捗中です。貴殿に対応いただく事項はございません」

たった2行です。これで十分なのです。詳細が必要な人のために、補足として時系列の活動記録を添付することもできます。しかし、多くの場合、それすら不要でしょう。

この違いは何でしょうか。前者は「私が何をしたか」を伝えています。後者は「あなたが知りたいこと」を伝えています。たったこれだけの視点の転換で、文章の伝達力は劇的に変わるのです。

IT企業の中間管理職として日々奮闘するあなたなら、この違いの重要性が理解できるはずです。部下への指示メール、週次報告、経営層への提案。これらすべてにおいて、読み手が求める情報を最初に提示することで、コミュニケーションの効率は飛躍的に向上します。

日本の暗黙の文化との決別

本書の主張は、日本のビジネス文化に深く根付いた「行間を読む」「空気を読む」という慣習とは真逆のものです。

従来、日本の職場では読み手側の読解力や推察力が重視されてきました。上司の意図を察する。部下の悩みを汲み取る。言葉にしなくても伝わる関係性。これらは美徳とされてきました。

しかし、倉島さんは明確に主張します。情報が伝わらない責任は、全面的に書き手にある。読み手が理解できなかったのは、読み手の能力不足ではない。書き手が、読み手にとって理解しやすい形で情報を提供できなかったのだと。

この考え方は、一見すると書き手に厳しいように聞こえます。しかし、見方を変えれば、これは書き手に力を与える考え方でもあります。相手が理解してくれるかどうかは、あなたの書き方次第で変えられる。つまり、文章技術を磨くことで、確実にコミュニケーションの成果を上げられるということです。

多様な背景を持つ人々が協働する現代の職場では、暗黙の了解に頼ったコミュニケーションは機能しません。明確に、簡潔に、誤解の余地なく伝える。それが、プロフェッショナルとしての責務なのです。

読み手の時間は有限であるという真実

あなたの部長が一日に何件のメールを処理するか考えたことはありますか。中間管理職であるあなた自身も、おそらく一日に30件以上のメールを受け取っているはずです。

そのすべてを丁寧に読む時間があるでしょうか。実際には、件名と最初の数行で重要度を判断し、優先順位をつけているはずです。

倉島さんが提唱する「読ませない」文章とは、一見すると逆説的です。しかし、これは「流し読みで全体像がつかめ、必要な部分だけ深掘りできる構造」を意味しています。

冒頭に結論と要点を配置する。各段落の最初の文で、その段落の内容を要約する。一文では一つのポイントだけを伝える。これらの技術は、認知心理学に基づいたものです。

読み手の脳は、予測可能なパターンで提示された情報を効率的に処理できます。逆に、どこに重要な情報があるかわからない文章は、読み手に大きな認知的負荷をかけます。

読み手の時間を最大限に尊重する。それは、ビジネスパーソンとしての思いやりであり、プロフェッショナリズムでもあります。倉島さんは、明瞭さと簡潔さを、同僚の時間を尊重し、組織全体の生産性を向上させるための倫理的な責務として位置づけています。

技術は学べる、才能ではない

多くの人が「文章力は才能だ」と考えています。しかし、倉島さんは明確に否定します。書く技術は経験だけでは向上しない。しかし、明確な理論と実践的なトレーニングによって、誰でも習得可能なスキルだと。

本書が提供する7つの法則は、その具体的な方法論です。冒頭に重要な情報をまとめる。詳細はパラグラフを使って書く。パラグラフの冒頭には要約を書く。これらは、すぐに実践できる明確なルールです。

著名なYouTuberであるマコなり社長が「社会人なら絶対全員読むべき文章力の本」として推奨しているのも、この即効性の高さが理由でしょう。明日から、いえ、今日の午後のメールから実践できる技術がここにあるのです。

40代のIT中間管理職として、あなたは日々、部下への指示、経営層への報告、クライアントとの交渉と、様々な文章を書いています。これらの文章が「伝わる」ようになれば、あなたのキャリアはどう変わるでしょうか。

部下からの信頼は高まり、プロジェクトはスムーズに進行します。経営層への提案は理解され、承認される確率が上がります。クライアントとのコミュニケーションは円滑になり、ビジネスチャンスが広がります。

あなたの文章が変われば、人生が変わる

自己表現から読者への奉仕へ。この視点の転換は、単なる文章テクニックの話ではありません。それは、相手の立場に立つという、コミュニケーションの本質に関わる問題です。

あなたが書きたいことではなく、相手が知りたいことを書く。自分の思考プロセスではなく、相手にとっての価値を提供する。この姿勢は、文章だけでなく、あなたのビジネス全体に影響を与えるはずです。

倉島保美さんの『改訂新版 書く技術・伝える技術』は、文章の書き方を教える本ではありません。それは、相手を尊重するプロフェッショナルとしての在り方を教えてくれる本なのです。

今日から、あなたの文章を「サービス」に変えてみませんか。相手の時間を尊重し、相手の求める情報を効率的に提供する。その積み重ねが、あなたの評価を高め、キャリアを開き、そして人間関係を豊かにしてくれるはずです。

改訂新版 書く技術・伝える技術
Amazonで倉島 保美の改訂新版 書く技術・伝える技術 (スーパーラーニング)。アマゾンならポイント還元本が多数。倉島 保美作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また改訂新版 書く技術・伝える技術 (スーパーラーニング)もアマゾン...

NR書評猫825 倉島保美 改訂新版 書く技術・伝える技術

注意

・Amazonのアソシエイトとして、双子のドラ猫は適格販売により収入を得ています。
・この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的・法律的なアドバイス等の専門情報を含みません。何らかの懸念がある場合は、必ず医師、弁護士等の専門家に相談してください。
・記事の内容は最新の情報に基づいていますが、専門的な知見は常に更新されているため、最新の情報を確認することをお勧めします。
・記事内に個人名が含まれる場合、基本的に、その個人名は仮の名前であり実名ではありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました