企画会議で上司に「何か新しいアイデアはないか」と問われて、頭が真っ白になった経験はありませんか。部下からの提案を待っても良い案が出てこず、結局自分が考えなければならない。でも何時間考えても、目新しい答えが見つからない。そんな悩みを抱える方に、一冊の本が光を示してくれます。編集者として累計1000万部以上のベストセラーを生み出してきた柿内尚文さんの『パン屋ではおにぎりを売れ 想像以上の答えが見つかる思考法』です。本書は単なるビジネスハウツー本ではなく、考えるという行為を体系化した思考技術の教科書です。今回は本書の中でも特に重要な「アイデアを生み出す技術」に焦点を当てて、その魅力をお伝えします。
アイデア創出は天賦の才ではなく、学べる技術
多くの人が「アイデア力は生まれつきの才能」と諦めていますが、本書はその思い込みを根底から覆します。
柿内さんは本書で、優れた考える技術を持つ人は意外に少なく、だからこそ早く習得すれば強みになると述べています 。実際、考える技術は仕事や人間関係、お金、人生設計などあらゆることに応用可能であり、身につけることで人生を劇的に好転させ得るブルーオーシャン的スキルなのです。
では、考える技術がない人とある人では、何が違うのでしょうか。
例えばプランAとBで迷う場合、考える技術がない人は二者択一で悩みます。しかし、技術がある人は「AもBも活かせないか」と両立案を発想できます 。また上司に難題を振られた際、何も考える技術がない人はいきなり手探りで悩み始めますが、技術がある人はまず目的を確認し、情報収集から始めるといった違いが生まれます。
このように「考える」というプロセスを正しく踏むだけで結果がまったく変わってしまうため、著者は考えること自体に途方もない突破力があると力説しています。
ゴール設定からインプット、そして発想へ──明快な思考の流れ
本書最大の特徴は、誰でも実践できる形でアイデア発想法を網羅し体系化している点です 。
著者は数々のベストセラーを生み出した編集者だけあって、アイデア出しのプロのノウハウを惜しみなく公開しています。ゴール設定からインプット、そして発想という思考の流れが明示され、その中で12種類もの具体的技法が整理されています。
この思考プロセスの第一歩が「ゴール設定」です。日常の悩みやモヤモヤのほとんどは、このゴール設定ができていないことで起こります 。先に最終的にどうしたいのかを決めてしまうと、不思議と頭の中のモヤモヤが解消され始めるのです。
次に重要なのが「インプット」です。確かに悩みを解決しようとアイデアを出そうと頑張ってみたところで、考える材料であるインプットが足りていなければ、解決法や面白いアイデアは出てくるはずがありません 。著者自身、新しいテーマについて考える際は関連する本を5冊ほど読み、ネット情報を10本ほど集めるそうです。
そして最後が「発想」のステップ。本書では考えを広げる6つの方法と、深める6つの方法、合計12種類の技法が紹介されています。
現場ですぐ使える12の思考技法
本書の中心となるのが、発想を拡げアイデアを創出するための6つの「広げる」方法と、洞察を深め問題の核心に迫る6つの「深める」方法です 。
著者は「アイデアは天から降ってくるものではなく、生み出すもの」と断言し、広げると深めるという二方向から意識的に思考することがアイデア創出には欠かせないと説きます。
広げる6法には、異質な要素を組み合わせて新しいものを生む「かけあわせ法」、テーマに関連する事柄を次々と連想して新たな価値を見出す「数珠つなぎ連想法」、対象や前提をずらして行き詰まりを打開する「ずらす法」、安易な二択を避け一石二鳥を狙う「脱2択」、大量のインプット情報から魅力を抽出・集約する「まとめる法」、「こんなものがあったらいいな」という発想から夢を現実化する「あったらいいな法」が含まれます。
深める6法には、あらゆる角度から対象の長所・価値を洗い出す「360度分解法」、マイナスをプラスに転換する「ポジティブ価値化」、物事を「自分・あなた・社会」の視点で捉え直す「自分ゴト・あなたゴト・社会ゴト」、スタートからゴールまで手順を逆算する「すごろく法」、人々の無意識の心理を言語化する「正体探し」、言葉の力で価値を生み出す「キャッチコピー法」などがあります。
例えば「ずらす法」では、作業服専門店のワークマンが商品の方向性を「おしゃれなアウトドアウェア」にずらした結果、大きな成功を収めたケースなどが紹介されています 。
会議や企画提案で差がつく発想力
これらの思考技法は、日々の業務でどのように活用できるでしょうか。
例えばあなたが部門の業務効率化について提案を求められたとします。従来なら「人を増やすか、残業を増やすか」という二択で悩んでいたかもしれません。しかし「脱2択」の技法を使えば、「人も増やさず、残業も増やさずに効率化できる方法はないか」という第三の道を探せます。
あるいは、苦手な上司との関係に悩んでいる場合、「360度分解法」を使ってその上司について感情的で面倒と決めつけず、部下思いや決断が速いといった長所も無理やり書き出してみると、多角的に理解できるようになります 。
また、新しいサービスを企画する際には「かけあわせ法」が有効です。一見関連性のないものを組み合わせることで、これまでにない価値を生み出せます。パン屋がおにぎりを売る、フレンチシェフがカレーを作る、といった発想の転換が新たな需要を掘り起こすのです。
体系化された思考法の教科書として
本書を読むと、アイディアを生み出す技術がここまで体系化された本は貴重だと気づかされます 。
ゴール設定からインプット、発想という思考の流れが明示され、その中で12種類もの具体的技法が整理されている様は圧巻です。本書一冊で発想力トレーニングの全体像を学べるため、アイデアに行き詰まると悩むビジネスパーソンにとってまさに必携の一冊といえます。
実際、企画仕事の人間には発想法の教科書として手元に置いておきたいという声もあるほどで、本書はアイデア創造のバイブルとして強くお薦めできます。
読者は自分の課題に合わせて複数の手法を組み合わせて使うことで効果が高まるとされ 、まさに実践的な発想のツールボックスを手にすることができます。
今日から始める発想力トレーニング
柿内さんが伝えたいのは、考えるという行為にはとんでもない突破力があるということです 。
アイデアは浮かんでくるものではなく、つくるものです。本書で紹介される思考技術を使えば、誰でもプロのようにアイデアを生み出せるようになります。仕事や勉強、人間関係、お金、人生設計などあらゆる分野で使える普遍的な思考スキルを説いており、考える技術は身につければ強力な武器になります。
部下から信頼される上司になりたい、プレゼンテーションスキルを向上させ提案が通りやすくなりたい、家庭でのコミュニケーションも改善したい。そんな目標を持つあなたにとって、本書が提供する思考技術は日々の課題解決の強力な味方となるでしょう。
アイデアが出ないのは才能がないからではありません。正しい考え方を知らないだけなのです。本書を読んで、想像以上の答えを見つけるための第一歩を踏み出してみませんか。

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