プロの投資家に短期で勝てなくても、超長期なら個人が圧倒的に有利な理由

「投資を始めてみたけれど、なかなか利益が出ない」「プロが相手では、素人が勝てるわけがない」――そう感じて、投資から距離を置いてしまった方はいないでしょうか。

実は、この感覚は半分正しく、半分大きな誤解を含んでいます。たしかに短期の売り買いでプロに勝つのは極めて難しい。しかし、時間軸を「超長期」に変えた途端、話は逆転します。個人投資家のほうが、プロのファンドマネージャーよりも圧倒的に有利な立場に立てるのです。

北村慶著『大人の投資入門』は、この逆転の仕組みを論理的に解き明かし、忙しいビジネスパーソンでも実践できる「超長期の王道」を示してくれます。今回は本書の核心にある「短期売買を捨て、超長期投資で勝つ」という考え方を掘り下げます。

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短期売買で素人がプロに勝てない、構造的な理由

証券会社の画面に張り付き、株価の動きを追いかけて売り買いを繰り返す――いわゆるデイトレードと呼ばれるスタイルです。しかし北村氏は、このアプローチの構造的な欠陥を冷静に指摘します。

金融市場には、最先端のコンピュータを使った超高速取引の業者や、膨大な情報と専門知識を持つ機関投資家が入り乱れています。個人が同じ土俵で戦えば、情報量・処理速度・資金量のすべてにおいて後手に回ります。さらに、売買のたびに手数料や税金というコストが積み上がります。勝率が50%であっても、この摩擦コストの累積によって、数学的に資金は目減りしていくのです。

「相場にはプロたちが入り交じっての攻防が繰り広げられており、素人が簡単に勝てるものではない」と著者は述べています。これは脅しではなく、市場の構造から導かれる冷静な事実認識です。

時間軸を変えると、勝敗の構図が逆転する

ところが、この不利な条件は「短期」という時間軸があるからこそ生まれます。視点を数十年単位の「超長期」に切り替えると、まったく異なる風景が見えてきます。

超長期で運用する場合は、アマチュアでも高い成果を収められます。なぜなら、超長期の投資において最も大切なのは、高度な分析力でも素早い判断力でもなく、市場に居続ける意志と時間だからです。世界経済は短期では上下に揺れながらも、長期で見れば右肩上がりの成長を続けてきました。この大きな波に乗り続けるだけで、複利の力が資産を増やしてくれます。

難しい技術は不要です。必要なのは、長く持ち続けるという「我慢」だけです。そして、この我慢においてこそ、個人はプロを凌駕できます。

プロのファンドマネージャーが抱える「宿命的な弱点」

なぜ個人が超長期で有利なのか。その鍵は、プロが置かれた状況を理解するとよく見えてきます。

機関投資家のファンドマネージャーは、四半期ごと・半期ごとに運用成績を評価されます。短期で結果を出せなければ、顧客から資金を引き上げられてしまいます。そのため、たとえ長期的には間違いと知っていても、短期的な相場の動きに反応して頻繁に売り買いせざるを得ない状況に追い込まれることがあります。

つまり、プロは「長期で正しい行動」より「短期で結果を示すこと」を迫られているのです。これは優秀なプロたちが抱える、構造的で宿命的な弱点といえます。

一方、個人投資家には他者からの評価圧力がありません。自分で決めた老後というゴールだけを見据えて、市場がどう動こうとも焦らずに居続けることができます。
この評価されない自由こそが、最強の武器です

リーマン・ショックの暴落でも、個人は逃げなくてよかった

歴史的な暴落が起きたとき、プロと個人では置かれた立場がまったく異なります。

2008年のリーマン・ショックでは、世界の株式市場が軒並み50%前後も下落しました。資産が半分になる恐怖の中で、プロのファンドマネージャーの多くは顧客資産を守るために損切りを余儀なくされました。しかしその後、市場は数年かけて完全に回復し、さらに大きく成長しました。

個人投資家ならどうだったでしょうか。誰かに強制されることなく、ただ保有し続けるという選択肢があったはずです。底値で売り払ってしまった方は大きな損失を確定させましたが、保有し続けた方はその後の回復と成長をすべて享受できました。

短期的な暴落に耐えて市場に留まれる――これが、個人投資家だけに許された最大の非対称的優位性です。

「何もしない」という高度な戦略

投資において、行動することが常に正しいわけではありません。むしろ超長期投資の真髄は、短期の相場変動に反応せず、何もしないという選択を取り続けることにあります。

メディアが連日「相場急落」を報じるとき、人間の心理は売りたくなります。逆に相場が加熱して誰もが強気になるとき、さらに買い増したくなります。この感情に従うと、高いときに買って安いときに売るという最悪のパターンを繰り返します。

北村氏が提唱するのは、この感情の罠を構造的に回避することです。年1回のリバランスというルールに従って機械的に動くだけで、感情に流されることなく「安く買って高く売る」という理想的な行動が自然に実現されます。つまり「何もしない」は怠惰ではなく、高度に設計された戦略なのです。

40代の今が、超長期投資の最良のスタート地点

20年、25年という長い時間を資産運用に使えるのは、実は40代の今だからこそです。

30代ではまだ収入が安定していなかった。50代になると運用期間が短くなる。この意味で、ある程度の収入と残り20年以上の時間という両方を持てる40代は、超長期投資を始めるのに理想的なタイミングといえます。

IT企業の管理職として日々忙しい中でも、超長期投資はその忙しさとまったく矛盾しません。毎月の積立設定をしてしまえば、後は年に1回ポートフォリオを見直すだけです。チャートを眺める必要も、ニュースに一喜一憂する必要もありません。むしろ、忙しくて投資のことを忘れているくらいが、超長期投資にはちょうど良いのかもしれません。

北村慶著『大人の投資入門』は、こうした超長期投資の哲学を、金融のプロフェッショナルならではの視点から平易に解説した一冊です。老後の不安を抱えながらも投資に踏み出せずにいる方に、ぜひ手に取っていただきたいと思います。

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NR書評猫1213 北村慶 大人の投資入門

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