あなたは最近、将来への不安を感じることはありませんか?
グローバル経済の変動、自然災害、パンデミック……。私たちを取り巻く環境は、かつてないほど不安定になっています。お金さえあれば安心という時代は、もう終わったのかもしれません。
そんな現代社会の課題に対して、全く新しい視点を提示してくれる一冊が『里山資本主義』です。本書は、マネー資本主義の限界を指摘し、地域資源を活用した持続可能な「安心」のシステムについて詳しく解説しています。
この記事では、特に本書が提唱する「安心の原理」に焦点を当て、なぜ今この考え方が重要なのか、そして私たちの生活にどのような変化をもたらすのかを詳しくお伝えします。
1. マネー資本主義の脆弱性が露呈した現代
東日本大震災が教えてくれたこと
2011年3月11日。あの日、多くの人が実感したのは「お金が何の役にも立たない状況」の恐ろしさでした。
ATMは停止し、コンビニからは商品が消え、ガソリンスタンドには長蛇の列ができました。普段当たり前のように機能していた経済システムが、一瞬にして麻痺したのです。
藻谷浩介氏は、この経験を通じて現代のマネー資本主義が抱える根本的な問題を浮き彫りにしました。それは、外部システムへの過度な依存という脆弱性です。
グローバル経済のリスク
現代のマネー資本主義は、効率性と利益最大化を追求する一方で、いくつかの深刻な問題を抱えています。
まず、資源の枯渇と環境破壊です。大量生産・大量消費を前提としたシステムは、地球の限られた資源を食い尽くし、持続可能性に疑問符を投げかけています。
次に、金融危機や災害といった外部ショックへの脆弱性があります。グローバルに連携したシステムは、一箇所で問題が発生すると、瞬く間に世界中に影響が波及します。
そして最も重要なのは、人間関係の希薄化です。すべてをお金で解決しようとする社会では、地域コミュニティのつながりが弱くなり、いざという時に頼れる関係性を失ってしまいます。
2. 「安心の原理」という新しい経済思想
お金だけに依存しない生活の実現
里山資本主義が提唱する「安心の原理」とは、お金が乏しくなっても水と食料と燃料が手に入り続ける仕組みを予め用意しておく実践のことです。
これは決してマネー資本主義を完全に否定するものではありません。むしろ、既存のシステムを補完する「サブシステム」として位置づけられています。
つまり、普段は通常の経済活動を行いながらも、いざという時には地域の資源と人のつながりで生活を維持できる、二重の安全網を持つということです。
多次元的な「豊かさ」の追求
「安心の原理」が目指すのは、単なる経済的な安定だけではありません。
物理的な安心として、食料・エネルギーの自給自足による安定があります。社会的な安心として、地域コミュニティでの相互扶助による支え合いがあります。そして精神的な安心として、お金に振り回されない、本質的な生活の喜びがあります。
これらすべてを統合した多次元的な豊かさこそが、里山資本主義が追求する真の目標なのです。
3. 地域に眠る「原価ゼロ円」の宝物
見過ごされてきた地域資源
里山資本主義の実践において、重要な概念が「原価ゼロ円」の資源活用です。
これまでマネー資本主義の視点では「廃棄物」や「遊休資産」と見なされていたものを、新たな価値創造の源として再発見するのです。
例えば、製材所から出る木くず、使われなくなった耕作放棄地、規格外で市場に出せない野菜などです。これらは、地域の循環システムの中では貴重な資源となります。
成功事例:真庭市のバイオマス発電
岡山県真庭市では、製材業者の銘建工業が木くずを原料とした木質バイオマス発電に成功しました。
この取り組みにより、工場の電力の大半を自給し、夜間は余剰電力を売電することで年間約3億9千万円の経済効果を生み出しています。さらに、かんなくずなどを加工して木製ペレットを製造・販売し、地域のトマト栽培などに活用されています。
これは、地域に眠っていた「宝」を発掘し、循環システムを構築した素晴らしい事例です。
4. レジリエンス(回復力)のある社会へ
「マッチョな経済」から「しなやかさ」へ
現代のマネー資本主義を、藻谷氏は「マッチョな経済」と表現しています。これは、猛烈な競争と効率性追求を重視する、いわば筋肉質で強引な経済のあり方です。
一方、里山資本主義が目指すのは「しなやかさ」です。大量生産・効率性という一方向的な強さではなく、変化や困難に対して柔軟に対応し、回復する能力を重視します。
外部の金融市場やエネルギー市場の変動に左右されない自給自足のシステムは、まさにこの「しなやかさ」を地域にもたらします。
災害に強い地域づくり
近年、日本では毎年のように大規模な自然災害が発生しています。そんな中で、地域が自律的に「しなやかさ」を持つことは、生存戦略として極めて重要です。
里山資本主義の実践により、エネルギー自給率を高め、食料を地域内で調達し、住民同士の結束を強めることで、災害時でも機能し続ける強靭な地域が生まれます。
これは、国家や大企業といった中央集権的なシステムが抱える脆弱性に対する、地域分散型システムの優位性を示しています。
5. 今日から始められる「安心の原理」実践法
個人レベルでできること
里山資本主義の考え方は、決して地方移住を強制するものではありません。都市部に住む私たちにも、できる範囲での実践が可能です。
まずは、地産地消の意識を持つことから始めましょう。近所の農産物直売所や道の駅を利用し、地域で作られた食材を選ぶことです。
次に、省エネルギーの取り組みです。断熱性能の向上や、太陽光発電の導入など、エネルギー自給率を少しでも高める努力をしてみてください。
そして最も重要なのは、地域コミュニティとのつながりを大切にすることです。近所の人との挨拶から始まり、地域のイベントに参加するなど、「手間返し」の精神を育んでいきましょう。
企業としての取り組み
企業レベルでも、里山資本主義の考え方を活かすことができます。
サプライチェーンの地域化を進め、可能な限り地域の資源と人材を活用することで、外部依存度を下げることができます。
また、従業員の働き方改革を通じて、過度な競争や効率性追求から脱却し、持続可能で人間らしい職場環境を作ることも重要です。
さらに、地域貢献活動を通じて、企業が地域コミュニティの一員として機能し、相互扶助の関係を築くことも可能です。
まとめ:不安な時代だからこそ求められる「安心」
『里山資本主義』が提唱する「安心の原理」は、単なる理想論ではありません。現代社会が直面する様々なリスクに対する、極めて現実的で強力な処方箋なのです。
グローバル経済の不安定化、気候変動、パンデミック……。予測不能なリスクが増大する現代において、お金だけに依存しない生活基盤を築くことは、もはや選択肢ではなく必要条件と言えるでしょう。
大切なのは、マネー資本主義を完全に否定するのではなく、それを補完する「サブシステム」として里山資本主義の考え方を取り入れることです。
あなたも今日から、身近なところから「安心の原理」の実践を始めてみませんか?地域の食材を選び、近所の人とのつながりを大切にし、本当の意味での豊かさを追求していく。そんな生活スタイルが、不安定な時代を生き抜く力を与えてくれるはずです。

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