あなたは最近、心から楽しいと思えることに時間を使えていますか?
仕事に追われる毎日の中で、「これって本当に必要なの?」という疑問を抱きながらも、効率性や成果ばかりを追い求めてしまう。そんな現代社会を生きる私たちに、辻村深月氏の最新作『この夏の星を見る』は、忘れかけていた大切な価値観を思い出させてくれます。
コロナ禍という制約の中で、純粋に「楽しいからやる」ことの意味を見つめ直した中高生たちの物語は、大人である私たちにも深い気づきを与えてくれるでしょう。この記事では、現代社会が見失いがちな「本当の豊かさ」について、作品を通じて考えてみたいと思います。
コロナ禍が問いかけた「不要不急」という価値観
2020年春から始まったコロナ禍は、私たちの価値観を根底から揺さぶりました。「不要不急の外出は控えて」という言葉が社会を覆い、多くの活動や楽しみが制限されることになったのです。
『この夏の星を見る』は、まさにこの時代を背景に、茨城県の高校二年生・亜紗、渋谷区の中学一年生・真宙、長崎県五島列島の高校三年生・円華たちが、天文活動を通じて新たなつながりを見出していく物語です。
作中で描かれるのは、部活動や学校行事が次々と中止になる中で、それでも諦めずに「今できること」を模索する若者たちの姿。彼らが目指すのは、自作の望遠鏡で星を見つける速さを競う「スターキャッチコンテスト」のオンライン開催でした。
この設定を通じて、辻村氏は私たちに重要な問いを投げかけています。「今必要なのか」という社会からの圧力に対し、「楽しいからやる」という気持ちを大事にすることの意味とは何か、ということです。
「楽しいからやる」が持つ本当の力
現代社会では、何事も効率性や実用性で判断される傾向があります。特に私たち40代のビジネスパーソンは、ROIや成果指標に慣れ親しんでおり、「それは本当に必要ですか?」「投資対効果はどうですか?」といった質問を日常的に投げかけています。
しかし、この作品が教えてくれるのは、「役に立つか否かではなく『楽しいからやる』という学びの本質」の重要性です。作中の中高生たちは、進学や就職といった実用的な目的を超えて、天体観測という「好き」な気持ちを原動力に行動します。
この純粋な情熱こそが、困難な時代を生き抜く真の力となることを、物語は鮮やかに描き出しています。制限された状況下でも、「私の今は、今しかない」という気持ちで全力を尽くす彼らの姿勢は、私たち大人にも多くの示唆を与えてくれるでしょう。
オンラインでつながる新しい可能性
コロナ禍は多くのものを奪いましたが、同時に新しい可能性も生み出しました。物語の中で、茨城、東京、長崎という離れた場所にいる中高生たちが、オンライン会議を駆使して一つの目標に向かって協力する様子は、まさにデジタル時代の新しいつながり方を象徴しています。
私たちの職場でも、リモートワークやオンライン会議が当たり前になりました。しかし、それを単なる業務効率化の手段として捉えるだけでなく、新しい形の協働や創造の可能性として見直すことができるのではないでしょうか。
作品中の「離れていても空はひとつ」という言葉は、物理的な距離を超えた真のつながりの可能性を示唆しています。これは、グローバル化が進む現代のビジネス環境においても、重要な視点となるでしょう。
制約の中で見つける創造性
興味深いのは、主人公たちが制約があるからこそ創造的な解決策を見つけていく点です。通常の天文部活動ができない状況だからこそ、オンラインでのコンテスト開催という新しいアイデアが生まれました。
これは、私たちの仕事においても重要な示唆を与えています。予算削減、人員不足、時間的制約など、様々な制限の中で成果を求められる現代のビジネス環境。しかし、そうした制約こそが、従来の枠組みを超えたイノベーションの源泉となる可能性があるのです。
作品が描く「コロナの年じゃなかったら、私たちはこんなふうにきっと会えなかったから」という言葉は、逆境の中にある価値を見出すことの大切さを教えてくれます。
大人が若者から学ぶべきこと
物語の中で印象的なのは、大人たちが若者の挑戦を温かく見守り、応援する姿です。天文部顧問の綿引先生は、「大人にはコロナ禍は人生の数年だけど、学生には貴重な数年」という深い理解を示し、生徒たちのリモート活動を支援します。
これは、私たち中間管理職にとって重要な学びです。部下や若手社員の「一見無駄に見える」活動や興味を、どのような視点で捉えるべきでしょうか。効率性や実用性だけで判断するのではなく、彼らの純粋な情熱や好奇心を大切にし、それを伸ばす環境を作ることが、真のリーダーシップなのかもしれません。
「今」を大切にする生き方
作品全体を通じて流れるのは、「今」という瞬間の貴重さです。制限された状況だからこそ、登場人物たちは「今しかできないこと」「今だからできること」に全力で取り組みます。
私たち40代は、将来への不安や過去への後悔に囚われがちです。しかし、この作品が教えてくれるのは、「今」という瞬間に集中することの大切さ。仕事に追われる日々の中でも、純粋に楽しめることや、心から興味を持てることに時間を使うことで、人生はより豊かになるのです。
「楽しいからやる」というシンプルな動機が、実は最も持続可能で、最も創造的な原動力となることを、この物語は教えてくれています。
人生の優先順位を見直すきっかけ
辻村深月氏の『この夏の星を見る』は、コロナ禍という特別な時代を背景にしながらも、普遍的な人生の価値について深く考えさせてくれる作品です。
効率性や成果だけでは測れない「楽しさ」の価値、制約の中で生まれる創造性、そして「今」という瞬間を大切にする生き方。これらすべてが、私たち大人にとっても重要な気づきとなるでしょう。
忙しい毎日の中で、あなたも一度立ち止まって考えてみませんか。本当に心から楽しいと思えることに、どれだけ時間を使えているでしょうか。この作品は、そんな人生の優先順位を見直すきっかけを与えてくれるはずです。

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