あなたのチームは、バラバラに動いていませんか?メンバーそれぞれが違う方向を向いて、チームとしての一体感がない。目標を掲げても、誰も本気で取り組もうとしない。そんな悩みを抱えるリーダーの方に、ぜひ読んでいただきたいのが、山本実之氏の『明治製菓カカオ事業部 逆境からの下剋上』です。
本書は、期待ゼロの寄せ集めチームが、明確なビジョンとゴール共有によって奇跡の成長を遂げた実話です。わずか10年で売上70億円を達成した秘訣は、全員が同じ方向を向いて走れる「ビジョンとゴールの共有」にありました。今回は、その具体的な方法と効果を、本書から読み解いていきます。
なぜビジョン共有が必要なのか
多くのチームが抱える問題は、メンバーがそれぞれ違う目的意識を持っていることです。同じ組織にいても、ある人は「給料のために働いている」と考え、別の人は「自分のスキルアップのため」と考えている。この状態では、チーム全体としての力を発揮することはできません。
山本氏が率いたカカオ事業部も、最初はそうでした。定年間近のベテラン揃い、モチベーションは低く、社内からは「左遷」とさえ見られていた部署。こんなメンバーを一つにまとめるためには、全員が納得し、共感できる明確なビジョンとゴールが必要だったのです。
本書では、山本氏がどのようにしてビジョンを作り、チームに浸透させていったのかが、具体的なエピソードとともに綴られています。それは単なる理想論ではなく、実際に結果を出すための実践的な手法でした。
「Go to market 40」というシンプルで力強いゴール
カカオ事業部が掲げた目標の一つが、「Go to market 40」というスローガンでした。これは「行くぞ、売上40億円!」という意味です。
2004年頃、前年の売上が約28億円だった時点で、山本氏はこの大胆な目標を掲げました。当時のメンバーからすれば、「本当にできるのか?」と不安もあったでしょう。しかし、このシンプルで力強いスローガンは、チームに明確な方向性を示しました。
重要なのは、この目標が単なる数字ではなかったということです。山本氏は「なぜ40億円なのか」「そのためには何をすべきか」を、メンバー全員と共有しました。具体的には、どの市場を攻めるのか、どの顧客を獲得すべきか、そのためにどんな提案をすべきか。ビジョンを数値化し、行動に落とし込むことで、メンバーは「自分は何をすればいいのか」を明確に理解できたのです。
ビジョンは一度や二度ではなく、何度も語れ
山本氏が本書で強調しているのが、「ビジョンは一度や二度ではなく、何度も繰り返し語ること」の重要性です。
多くのリーダーは、一度ビジョンを発表すれば終わりだと考えます。しかし、それでは浸透しません。メンバーは日々の業務に追われ、すぐにビジョンを忘れてしまいます。だからこそ、何度も、繰り返し、不安なときに山頂の旗を見せることが大切なのです。
カカオ事業部では、会議の場でも、営業の現場でも、山本氏は常にビジョンを語り続けました。「俺たち幸せだぞ」「そういうときこそ、人生にとっていい」「これはめったにできない経験だぞ」「ハイリスクハイリターン、いいじゃないか、望むところだ」「人生で最高のときにしようぜ」。こうした前向きな言葉を、山本氏は繰り返しメンバーに投げかけました。
これは単なる精神論ではありません。ビジョンを何度も語ることで、メンバーの意識に刷り込み、チーム文化として定着させるための戦略だったのです。
目標とロマンの両立が人を動かす
ビジョンを共有する際、もう一つ重要なのが、「目標」と「ロマン」の両立です。
数字だけの目標では、メンバーの心は動きません。「売上40億円達成」という目標だけでは、「なぜそれを目指すのか」「それが達成されたら自分にとって何が嬉しいのか」が見えないからです。
山本氏は、数字の目標と同時に、「私たちはなぜこの仕事をするのか」というロマンも語りました。例えば、「この仕事は、会社の新しい歴史を作ることだ」「失敗したってクビにならない。人生にとっていい経験になる」といった言葉です。
これにより、メンバーは単なる数字達成のためではなく、「自分たちの挑戦そのものに価値がある」と感じることができました。目標とロマンの両立が、メンバーの心に火を点けたのです。
リーダー自身が「やれる」と信じること
ビジョンを共有する上で、最も重要なのが、リーダー自身がそのビジョンを信じていることです。
山本氏は本書で、「まず、リーダー自身が『やれる』と信じること」と語っています。どんなに素晴らしいビジョンを掲げても、リーダーが心の底で「本当にできるのか?」と疑っていれば、その不安はメンバーに伝わります。
逆に、リーダーが確信を持って「できる!」と言えば、メンバーもそれを信じるようになります。山本氏は、「Go to market 40」を掲げた時点で、本気でそれが達成できると信じていました。その確信が、チーム全体に伝播していったのです。
リーダーの信念がチームの力になる。これは、あらゆる組織に共通する普遍的な真理です。
「Trust Me!」が生み出したチームの一体感
カカオ事業部では、もう一つ印象的なスローガンがありました。それが「Trust Me!」です。
これは、山本氏がメンバーに向けて発した言葉です。「俺を信じてくれ。一緒にやろう」というメッセージ。この言葉には、リーダーとしての覚悟と責任が込められていました。
同時に、山本氏はメンバー一人ひとりも信頼しました。「君たちならできる」「君たちの経験と知識があれば、必ず成功する」。この相互の信頼関係が、チームの一体感を生み出しました。
ビジョン共有は、単に目標を伝えるだけではありません。リーダーとメンバーの間に信頼関係を築き、人と人、ビジネスとビジネスが結びついていく。その様子は、まさに人間ドラマでした。
ビジョンを「見える化」する工夫
ビジョンを共有するためには、それを「見える化」する工夫も重要です。
山本氏は、「ターゲット」という表現を代わりに用いて、具体的な顧客や市場をイメージさせました。単に「売上40億円」と言うのではなく、「こういう顧客を獲得する」「こういう商品を提案する」と具体的に示したのです。
また、「これこそみんなが来たがる部署にしようぜ」「孫に語れるような事業にしよう」といった言葉で、未来の姿を鮮明に描きました。メンバーが「自分たちは今、何を目指しているのか」を常にイメージできるようにしたのです。
抽象的なビジョンでは、メンバーは動けません。具体的で、イメージしやすく、ワクワクするビジョンだからこそ、人は動くのです。
小さな成功体験を積み重ねる
ビジョンを共有したからといって、すぐに大きな成果が出るわけではありません。重要なのは、小さな成功体験を積み重ねることです。
カカオ事業部では、最初の数年は苦戦が続きました。しかし、山本氏は小さな成功でも必ずチーム全体で祝いました。「よくやった!」「これは大きな一歩だ!」と、メンバーを励まし続けました。
こうした小さな成功体験が、「やればできる」という自信をメンバーに植え付けていきました。そして、その自信が次の挑戦への原動力となり、やがて大きな成果へとつながっていったのです。
ビジョン共有は、一朝一夕で完成するものではありません。日々の積み重ねと、小さな成功の祝福が、チームを強くしていくのです。
今日から始められる「ビジョン共有」の第一歩
では、本書から学んだ「ビジョン共有」を、あなたのチームでも実践するにはどうすれば良いのでしょうか。
まず大切なのは、シンプルで力強いゴールを設定することです。メンバー全員が理解でき、覚えやすいスローガンを作りましょう。「Go to market 40」のように、数字とメッセージを組み合わせると効果的です。
次に、そのビジョンを何度も繰り返し語ること。会議の冒頭でも、日常の会話の中でも、常にビジョンを口にしましょう。リーダーが語り続けることで、メンバーの意識に刷り込まれていきます。
そして、目標だけでなくロマンも語ること。「なぜこの仕事をするのか」「それが達成されたら、私たちにとって何が嬉しいのか」。メンバーの心に響くストーリーを伝えましょう。
最後に、リーダー自身が本気で信じること。あなた自身がビジョンに確信を持てなければ、メンバーもついてきません。まずはあなた自身が「できる!」と信じることから始めてください。
ビジョン共有で組織は変わる
『明治製菓カカオ事業部 逆境からの下剋上』は、明確なビジョンとゴール共有が、バラバラだったチームを一つにまとめ、奇跡的な成果を生み出すことを証明した一冊です。
期待ゼロの寄せ集めチームが、10年で70億円を達成した秘訣は、高度な戦略でも特別な才能でもありませんでした。それは、全員が同じ方向を向いて走れるビジョンを共有することだったのです。
あなたのチームも、ビジョン共有によって変わることができます。メンバーが一つになり、組織全体が活性化する。そんな未来を実現するための具体的なヒントが、本書には詰まっています。
今こそ、あなたのチームで明確なビジョンを掲げ、メンバーと共有する第一歩を踏み出してみませんか。

コメント