「完璧にやろう」が残業を生んでいた——吉越浩一郎「残業ゼロ」の仕事力が教えるデッドラインの使い方

「もう少しだけ磨いてから提出しよう」「来週の会議までにもっとしっかり準備しよう」――こうして気づけば夜の21時、22時になっていませんか?

真面目に仕事と向き合えば向き合うほど、終わりが見えなくなる。質を上げようとすればするほど、時間がいくらあっても足りない。管理職として部下のフォローもしながら、自分の仕事もこなし、プレゼンの準備も重ねる毎日……。これだけ頑張っているのに、なぜいつも時間が足りないのか、とふと立ち止まることはないでしょうか。

この記事では、トリンプ・インターナショナル・ジャパンで19期連続増収増益を達成した元社長・吉越浩一郎氏の著書「残業ゼロ」の仕事力から、「時間を区切る」ことが仕事の質と速さを同時に高める最強のツールであるという考え方をご紹介します。この記事を読み終えたころ、あなたの「頑張り方」が根本から変わるかもしれません。

「残業ゼロ」の仕事力
夜の3時間は自分に投資する!「早朝会議」「がんばるタイム」……、ユニークな仕組みで有名なトリンプ元社長による仕事のやり方。「問題はすぐに手をつけない」「やることは優先順位をつけない」「オリジナルにこだらない」、著者が提唱するのは常識を覆すこ...

「ちゃんとやろう」という真面目さが、残業の温床になっている

吉越氏が本書の中で鋭く指摘しているのは、「仕事をちゃんとやろう」という意識が、皮肉にも残業を生み出す最大の原因になっているという逆説です。

責任感が強く、仕事に真摯に取り組んでいる人ほど、「もっとよくできるはずだ」「これで本当に大丈夫か」と際限なく作業を続けてしまいます。完璧を求める姿勢は一見すばらしいように見えますが、そのまま放置すると「終わりのない仕事」を量産することになります。

特に管理職になってから、この傾向は強まります。部下の仕事にも目を配りながら、自分の業務もこなし、提案資料も磨き続ける。「もう少し、もう少し」と手を加え続ける習慣が、毎晩の残業を当たり前にしていくのです。

吉越氏はこの状況を真っ向から否定します。労働時間を増やすことには物理的な限界があるが、時間当たりの生産性を高めることには限界がない――この言葉は、残業を続けるビジネスパーソンへの、静かだが強烈な問いかけです。

デッドラインは「強制的な取捨選択装置」である

では、時間当たりの生産性を高めるためにはどうすればいいのか。吉越氏が提唱する方法は、驚くほどシンプルです。明確なデッドライン(期限)を自分で設定し、そこから逆算して動くこと、これだけです。

例えば、企画書を作成する場面を考えてみましょう。「完成するまで時間をかけてやる」という取り組み方では、どこで手を止めるかの基準が曖昧なため、いつまでも作業を続けてしまいます。一方、「明日の15時までに6割の出来で一旦提出する」という期限を自ら設けると、何が起こるでしょうか。

脳は自然と「この時間の中で何を盛り込み、何を捨てるか」を考え始めます。優先度の高い要素が前に出てきて、それほど重要でない細部への執着が薄れていきます。結果として、本当に必要な情報が凝縮された、読み手に伝わりやすい資料ができあがります。

これは単なる時短テクニックではありません。デッドラインを設けることは、自分の思考に強制的にフィルターをかける行為なのです。

「6割の出来で動く」ことが、最終的に質を上げる

「6割の出来で提出するなんて、無責任じゃないか」と感じる方もいるかもしれません。しかしここに、吉越氏の考え方の本質があります。

100点の完成品を一人で作り上げてから提出するより、60点の状態で早めに動いて相手のフィードバックを受けながら改善していくほうが、最終的に高い成果につながる。現代のビジネスでは、この考え方がより一層重要になっています。

プレゼン資料を例に取ると、完璧に磨いてから見せるより、骨格だけできた段階で上司や関係者に見せて方向性を確認したほうが、的外れな修正を避けられます。部下への指示も、すべての答えを準備してから伝えるより、まず方向性を示して走り出させ、途中で軌道修正するほうがチーム全体のスピードは上がります。

吉越氏は「走りながら修正する」という言葉でこのスタイルを表現しています。考え抜いてから動くのではなく、ある程度の見通しが立ったら即座に動き、動きながら精度を上げていく。これが残業ゼロを実現しながら、同時に成果の質も高める仕事の進め方なのです。

管理職が「時間を区切る」と、部下も変わる

デッドライン思考は、自分一人の仕事術にとどまりません。管理職として部下に接する場面でも、この考え方は非常に効果的に働きます。

「この件、いつまでに仕上げてほしい」という期限の伝え方一つで、部下の仕事の進み方は大きく変わります。「できたら見せて」では部下は優先順位をつけにくく、結果として後回しになったり、突然の残業につながったりします。一方、「木曜の17時までに一度ドラフトを見せてほしい」と具体的な期限を示すと、部下は逆算して動くようになります。

さらに、管理職自身がデッドラインを守り、6割の状態でも動くという姿を見せ続けることが、チームの文化を変えます。完璧じゃないと動けない、という空気が少しずつほぐれ、チーム全体が速く動けるようになっていきます。

吉越氏がトリンプで実践した「3分間改善」という手法も、この発想の延長にあります。社員が改善案を発表し、その場で3分以内に全員が判断・決断を下す。結論の出ない長い会議を排し、不完全でもすぐに動くことでPDCAのサイクルを速く回す仕組みです。時間を区切る文化がチームに根づいたとき、残業は組織ごと減っていくのです。

「残業ありき」の構造を壊す、たった一つの問い

本書を通じて吉越氏が一貫して訴えているのは、残業は個人の努力不足の結果ではなく、業務の構造そのものに組み込まれた問題だということです。

「残業しないと終わらない仕事量になっているのは、デッドラインの設定と優先順位の管理が機能していないからだ」――この指摘は、管理職として仕事の組み立てを考える立場にある人間にとって、特に重く受け止めるべき言葉です。

自分がいつも残業になるとしたら、まずこう問いかけてみましょう。「今日抱えている仕事のうち、本当に今日やらなければならないことはどれか」「期限を自分で決めていない仕事がどれだけあるか」。

デッドラインのない仕事は、時間を際限なく吸い込みます。逆に、明確な期限を持つ仕事は、それに向けて思考が自然に収束していきます。毎晩の残業に悩んでいる方は、もしかしたら「いつまでにやるか」を決めていない仕事を抱えすぎているだけかもしれません。

「完成するまで終わらない」ではなく、「この時間に終わらせる」という発想の転換――。それが、吉越氏の言う「残業ゼロの仕事力」の入り口です。

仕事の密度を上げることが、人生の余白を生み出す

吉越氏は本書の中で、残業をなくす目的をはっきりと語っています。それは単に「早く帰りたい」からではなく、仕事以外の時間に豊かな経験を積むことで、人間としての幅が広がり、それが再び仕事の創造性として還元されるからです。

デッドラインを意識した密度の高い仕事は、定時退社を可能にします。その時間で家族との夕食を楽しんだり、読書に没頭したり、趣味に時間を使ったりすることが、翌日の仕事の質を底上げする――これが吉越氏の提唱する、仕事と人生の好循環です。

子どもとの時間を確保したい、趣味のゴルフをもっと楽しみたい、妻とゆっくり話す時間が欲しい……。そうした願いは、残業を減らす「理由」ではなく、残業をなくすことで手に入る「成果」です。

デッドラインを使いこなし、仕事の密度を高めることが、その成果への最短ルートになります。

「残業ゼロ」の仕事力
夜の3時間は自分に投資する!「早朝会議」「がんばるタイム」……、ユニークな仕組みで有名なトリンプ元社長による仕事のやり方。「問題はすぐに手をつけない」「やることは優先順位をつけない」「オリジナルにこだらない」、著者が提唱するのは常識を覆すこ...

NR書評猫1219 吉越浩一郎 「残業ゼロ」の仕事力

注意

・Amazonのアソシエイトとして、双子のドラ猫は適格販売により収入を得ています。
・この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的・法律的なアドバイス等の専門情報を含みません。何らかの懸念がある場合は、必ず医師、弁護士等の専門家に相談してください。
・記事の内容は最新の情報に基づいていますが、専門的な知見は常に更新されているため、最新の情報を確認することをお勧めします。
・記事内に個人名が含まれる場合、基本的に、その個人名は仮の名前であり実名ではありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました