「で、何が言いたいんだ」と言われたことがあるあなたへ ― 杉野幹人『1メッセージ』が教える究極にシンプルな伝え方

会議で一生懸命説明したのに「で、結局何が言いたいの?」と言われたことはありませんか。部下に指示を出したつもりが伝わっていなかった、プレゼンで自信を持って臨んだのに手応えがなかった。そんな経験をお持ちの方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊があります。戦略コンサルタントの杉野幹人氏による『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』です。本書は、どんなに論理的に話しても伝わらない理由と、たった一つの原則で劇的に伝わるようになる方法を教えてくれます。

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戦略コンサルで最も多いダメ出し「で、何が言いたいんだ?」

著者の杉野幹人氏は、世界的な戦略コンサルティングファームA.T.カーニーで修行を積んだ人物です。その新人時代、上司から「で、何が言いたいんだ?」「1メッセージにしろ」と叱責され、ショックで吐き気がしたと告白しています。

どんなに資料を論理的に作っても、メッセージが曖昧なら意味がないという現実を突きつけられたのです。実は戦略コンサルで新人コンサルタントたちが最も受けるダメ出しの一つが「1メッセージで伝えろ」というものです。

これはコンサル業界だけの話ではありません。私たちの日常のビジネスシーンでも同じです。会議で発言する時、プレゼンで提案する時、部下に指示を出す時。一度に多くを伝えようとして、結局何も伝わっていないことが多いのです。

1メッセージとは「相手の論点に対する自分の答え」

では、1メッセージとは何でしょうか。本書では明確に定義されています。

1メッセージとは「相手にとって一番大事な論点に対する自分の答えを1つに絞って言葉にしたもの」です。単なる一文を書けばいいということではありません。相手の論点に対して、自分の答えを明確に示すことが重要なのです。

例えば、新規事業の提案で上司が知りたいのは「この事業は成功するのか?」という論点です。そこで「市場は成長しています」「競合は少ないです」「技術的に可能です」と並べても、肝心の答えが見えません。必要なのは「年間売上10億円を3年以内に達成できます」という明確な答えなのです。

人は一度に多くの情報を処理できません。だからこそ、最重要の論点に絞り込むことが伝える技術の核心となります。

0メッセージという恐ろしい罠

1メッセージの反対が「0メッセージ」です。これは、一見もっともらしいことを言っているようで、実は何も言っていない状態を指します。

典型的な例が「それにはリスクがあります」という発言です。会議でこう発言する人は多いでしょう。しかし、リスクがあるのは当然です。どんな選択肢にもリスクはあります。だから「リスクがある」という指摘は、実は何の意味もないのです。

他にも0メッセージの例はたくさんあります。

「これは重要な課題です」「慎重に検討すべきです」「メリットとデメリットがあります」。これらは全て、誰もが分かっている当たり前のことを言っているだけで、何も伝えていません。

著者は、自分が新人時代に無意識に多用していた「意味のない言葉」に気づいたと振り返っています。表情や言葉のトーンがどんなに優しくても、言葉の意味として「このスライドは、何も意味がないね」と言われているのと同じなのです。

「いろいろ言っているけど、結局何も言ってない」からの脱却

本書の読者レビューには、こんな言葉があります。「いろいろ言っているけど、結局何も言ってない」という仏陀の教えみたいなフレーズが全てを表している。

私たちは、伝えることを恐れるあまり、つい曖昧で冗長な表現に逃げがちです。情報を盛り込めば盛り込むほど、相手は理解してくれるだろうと考えてしまいます。しかし現実は逆です。情報が多すぎると、何も伝わりません

杉野氏が強調するのは、伝えたいことを欲張って盛り込みすぎるのではなく、「何を言わないか」を決めて削ぎ落とす発想が重要だということです。本当に相手に届き、人を動かすのは、戦略的に絞り込まれた「1メッセージ」なのです。

焦点化 ― 論点を絞り込む技術

では、どうすれば1メッセージを作れるのでしょうか。本書では3つの技術が紹介されていますが、その最初が「焦点化」です。

「結局何が一番大事なのか?」を見極め、一度に伝える情報量を絞る技術です。提案の場面で複数の利点を列挙するより、相手にとって最も重要な一点にフォーカスしたメッセージの方が刺さります。

焦点化のコツとして、本書では相手の話に耳を傾けてニーズを探る「傾聴」、問いかけによって相手の論点を引き出す「質問」、仮説を疑問文で提示して論点をすり合わせる方法などが紹介されています。

戦略コンサルタントは、論点に疑問符をつけて考えます。「御社の最大の課題は何か?」「この施策で本当に成果が出るのか?」と問いの形で論点を明確にするのです。この習慣は、私たちのビジネスシーンでもすぐに応用できます。

常に「どうすれば相手に響くか」を考え抜く

本書を読んだある読者は、頭を捻って相手にどうしたら響くかを考え続けることが大事だと述べています。これこそが、1メッセージの本質です。

伝えることは、単に情報を並べることではありません。「誰かがとりあえず試しにやってみること」を後押しすることです。だからこそ、相手の論点を見極め、相手が動きたくなるメッセージを届ける必要があるのです。

本書では、林修先生の有名なフレーズ「いつやるか? 今でしょ!」が1メッセージの好例として紹介されています。一番大事な論点に向けて1つに絞ってメッセージを届ける典型例なのです。

また、メッセージを伝える際には、数字で生々しく伝えることや、相手が具体的にイメージできる生々しい言葉を使うことも重要です。抽象的な言葉では、相手の心は動きません。

明日から使える1メッセージの実践

1メッセージは、理論ではなく実践の技術です。明日からの会議、プレゼン、部下との面談で、すぐに使えます。

まず、発言する前に「相手の一番大事な論点は何か?」を考えましょう。次に「それに対する自分の答えは何か?」を1つに絞ります。そして、その答えを明確に、生々しく伝えるのです。

資料を作る時も同じです。スライドに情報を詰め込む前に、このスライドで伝えるべき1メッセージは何かを考えます。余計な情報は削ぎ落とし、伝えるべきメッセージだけを残すのです。

杉野氏は、自身の多くの失敗を重ねる中で、自分の意見を「1メッセージ」に集約する技術を体得したと語っています。つまり、この技術は誰でも学び、身につけることができるのです。

あなたの伝え方が変わる一冊

『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』は、単なるコミュニケーション術の本ではありません。戦略コンサルの現場で鍛えられた、人を動かすための実践的な技術が詰まっています。

「で、何が言いたいんだ?」と言われることがなくなり、あなたの言葉が確実に相手に届くようになる。部下が動き、提案が通り、プレゼンで手応えを感じられるようになる。そんな変化を、この本はもたらしてくれるでしょう。

本書のエッセンスはシンプルです。伝えるべきは1つに絞れ。しかし、そのシンプルな原則を実践することで、あなたのビジネスコミュニケーションは劇的に変わります。明日からあなたも、0メッセージから脱却し、真に伝わる1メッセージを届けてみませんか。

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