「たった1時間」が人生を変える―本山裕輔『仕事ができる人がキリの悪い時間にやっていること』が教える時間の真実

会議と会議の合間の15分、打ち合わせの前の10分、移動中の20分。こうした半端な時間、あなたはどう過ごしていますか?スマホを眺めて過ごしたり、ぼんやり次の予定を考えたりしているのではないでしょうか。そんなあなたに衝撃の事実をお伝えします。これらの隙間時間は、1年で約10日分、定年までに約1万時間にもなるのです。本山裕輔氏の『仕事ができる人がキリの悪い時間にやっていること』は、この見過ごされがちな時間の価値を、科学的根拠とともに明らかにしてくれる一冊です。

Amazon.co.jp: 仕事ができる人がキリの悪い時間にやっていること eBook : 本山 裕輔: 本
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衝撃の計算―隙間時間は人生の10分の1

「たった1時間」と侮ってはいけません。本書が示す計算は、私たちの時間感覚を根底から揺さぶります。

1日に生まれる隙間時間は、5分、10分の細切れ時間から、30分、1時間単位のまとまった時間まで、合計すると約1時間にもなります。仮に1か月に20営業日あったとすると、1時間×20日×12か月=240時間。1年でおよそ10日分の隙間時間が発生する計算になります。

さらに驚くべきは、これを大卒の人が定年退職まで働く年数で計算すると、その時間は約1万時間にもなるという事実です。この1万時間という数字には、特別な意味があります。これは特定分野で一流になるために必要とされる時間とほぼ同じなのです。

つまり、あなたが何気なく過ごしている隙間時間を有効活用できれば、何か一つの分野で専門家レベルに到達できる可能性を秘めているということです。この視点を持つだけで、5分や10分の時間への見方が大きく変わるのではないでしょうか。

ハリー・ポッターは隙間時間から生まれた

本書が引用する最も印象的な例が、J・K・ローリングの『ハリー・ポッター』執筆の逸話です。

シングルマザーとして生活に追われていたローリングは、まとまった執筆時間を確保することができませんでした。しかし彼女は、育児の合間のわずかな隙間時間を積み重ね、世界的ベストセラーとなる作品を完成させたのです。

この例は、短い時間の積み重ねが大きな成果を生み出せることを証明しています。「まとまった時間がないと何もできない」という思い込みこそが、私たちの可能性を制限していると本書は指摘します。

多くの人は「30分くらいでは何もできない」「中途半端な時間では集中できない」と考えがちです。しかし実際には、この隙間時間こそが、長期的に見れば人生を変える力を持っているのです。

なぜ隙間時間を活用できないのか

ここで素朴な疑問が浮かびます。隙間時間の価値がこれほど大きいなら、なぜ多くの人は活用できないのでしょうか。

本書の画期的な点は、この問題を精神論ではなく脳科学の視点から解説していることです。人間の脳には、隙間時間の活用を妨げる特性があると説明しています。

まず、タスクを切り替える際に生じる「スイッチングコスト」という脳の負担があります。会議で議論された内容がまだ頭の中で反芻されており、すぐに別のタスクである資料作成に意識を切り替えることができない状態です。認知科学の分野では、脳があるタスクから別のタスクに意識を移す際に、必ず一定の時間とエネルギーを消費することが、数々の実験によって証明されています。

さらに、未来の出来事に対して「もしも○○だったらどうしよう」と不安になる「予期不安」も隙間時間を妨げます。次の会議のことが気になって、目の前の短い時間に集中できなくなってしまうのです。

加えて、完了していない物事を記憶に留めやすい「ツァイガルニク効果」も影響します。未完了のタスクが脳内リソースを占領してしまうため、目の前の隙間時間に集中できなくなるのです。

こうした脳の特性を理解すると、隙間時間を活用できないのは本人の怠慢や意志の弱さではなく、脳の自然な働きによるものだとわかります。この理解こそが、対策を立てる第一歩となります。

「たった5分」を大切にする人が勝つ時代

本書が伝えたいのは「1分1秒も無駄にしない」という極端な時間管理ではありません。むしろ、隙間時間を使えなかったときの後悔や罪悪感を減らすことを目指しています。

大切なのは、隙間時間の種類を見極め、その時々に合った最適な行動を選択することです。本書では、隙間時間を「突発型か予測型」×「集中しやすいか集中しにくいか」の2軸で4パターンに分類し、それぞれに向く行動を具体的に提案しています。

例えば、急に会議がキャンセルになって1時間空いた場合は「突発型・集中可能」な時間です。これは未着手の重要タスクに着手する絶好の機会となります。一方、想定外に15分だけ空いた「突発型・集中困難」な時間では、無理に仕事をしようとせず、メール処理や机の整理、3分間の瞑想などでリフレッシュすることを勧めています。

このように、脳の特性を踏まえ、やる気に左右されず淡々と実行できる行動計画を立てる方法が、本書の実践的な価値です。

中間管理職だからこそ実践したい隙間時間活用

特に、多忙な中間管理職にとって、この隙間時間の活用術は強力な武器になります。部下のマネジメント、上司への報告、プロジェクトの推進、会議の連続。まとまった時間の確保が難しい立場だからこそ、隙間時間をどう使うかが成果を左右します。

例えば、会議の合間の10分で部下への簡単なフィードバックメールを送る、移動中の15分で業界ニュースをチェックしてアイデアの種を仕込む、打ち合わせ前の5分で今日一日の優先順位を見直す。こうした小さな行動の積み重ねが、1年後、3年後には大きな差となって現れます。

本書は、「もし○○の状況になったら、△△する」というイフゼンルール(if-thenルール)を立てることを提案しています。事前に行動計画を決めておくことで、いざ隙間時間が生まれたときに迷わず行動に移せるようになるのです。

「なるほどね」で終わらせず、具体的な行動計画に結びつけることが、本書を読む最大のポイントです。

罪悪感から解放される時間術

多くの時間管理術の本が「もっと頑張れ」「もっと効率的に」と追い詰めるのに対し、本書は「無理なく生産性を上げる」ことを目指しています。

隙間時間を活用しようとして失敗したり、結局スマホを見てしまったりしたとき、多くの人は自分を責めてしまいます。しかし本書は、それは脳の自然な特性によるものだと説明することで、読者を罪悪感から解放してくれます。

大切なのは、自分の状態と残り時間に応じて「その時ベストな過ごし方」を選ぶことです。集中できない状態で無理に難しい仕事をしようとするより、軽い作業や休息を選ぶことも、立派な時間活用なのです。

この「許容的」な姿勢こそが、長期的に継続可能な時間術の鍵となります。完璧を目指して三日坊主になるよりも、7割の成功率で続けられる方が、最終的には大きな成果につながるのです。

今日から始める隙間時間革命

本書を読み終えたら、まずは自分の1日にどれだけの隙間時間があるかを観察してみてください。意外なほど多くの隙間時間が存在することに気づくはずです。

そして、自分にとって重要だが後回しにしてきたことを一つ選び、隙間時間でそれを進めるイフゼンルールを設定してみましょう。「会議が早く終わったら、プロジェクトのアイデアを5分間メモする」「移動中の電車では、業界の最新記事を1本読む」といった具合です。

1万時間という膨大な時間は、今日のたった5分から始まります。本山裕輔氏の『仕事ができる人がキリの悪い時間にやっていること』は、その5分の価値を教えてくれる、すべてのビジネスパーソンに読んでほしい一冊です。

あなたの人生を変えるのは、特別な才能や大きな決断ではなく、今日の隙間時間をどう使うかという小さな選択かもしれません。

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NR書評猫1104 本山裕輔 仕事ができる人がキリの悪い時間にやっていること

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