「営業目標は達成できているけど、このやり方で本当に大丈夫だろうか」「エンタープライズ企業への営業がうまくいかない」「マーケティング施策は打っているのに、狙った大手企業から反応がない」
あなたの会社でも、こんな悩みを抱えていませんか。特にSaaS企業で成長を目指すフェーズにいる場合、従来の営業手法だけでは限界を感じることが増えてきます。従来のマーケティング由来のインサイドセールスでは大手企業の攻略が難しく、どうしても既存の手法に頼りがちになってしまうのです。
そんな中、注目を集めているのが「BDR戦略」です。本記事では、小林竜大氏の著書『SaaS企業のための「BDR戦略」入門』から、特に「いつBDRを始めるべきか」「どのように組織をつくるか」「戦略的なアプローチとは何か」という実践的なポイントをお伝えします。この記事を読めば、あなたの会社がBDR施策を成功させるための具体的な道筋が見えてくるはずです。
BDRを始める最適なタイミングを見極める
多くのSaaS企業が「いつBDRを始めればいいのか」というタイミングに悩みます。著者の小林氏は、IPO前後の成長フェーズにある企業こそBDR施策を検討すべきだと指摘しています。
具体的には、シリーズAの資金調達後など成長フェーズで、ミッドマーケットからエンタープライズ開拓に乗り出す企業が適期です。ARR目標達成のためにマーケティング投資を強化する段階で、BDRに着手するケースが増えています。
しかし、タイミングを誤ると成果が出ずに短期で施策停止に陥りがちです。なぜなら、リストやツールの準備、マーケ部門との連携体制など、BDR導入前に整えるべき事項があるからです。拙速な施策開始による失敗を防ぐには、組織規模や市場環境を踏まえた適切な開始時期の見極めが不可欠なのです。
例えば、SDRとBDRでフィールドセールスのアサインルールやマネジメント、初回商談や二次商談における提案フロー、案件フェーズ設計などの基本的な運用ルールや体制も整備できていない中でBDRを始めると、商談化率が伸びずROIが合わないため施策を停止せざるを得なくなります。
戦略的なターゲット定義とペルソナの策定方法
BDR成功の鍵を握るのが、ターゲット定義とペルソナ策定です。これは従来の営業と異なるBDRならではの計画であり、戦略的アプローチの核心部分となります。
BDRのミッションは、ターゲット顧客を定義してペルソナを作成し、戦略的なシナリオを立ててアプローチすることです。マーケ由来のリードを扱うSDRとは根本的に異なり、未接点の大企業に対して能動的に働きかける新規開拓手段として位置づけられます。
ターゲット戦略としてのABM、つまり特定のターゲット企業群に絞ったマーケティング戦略の立案方法が重要になります。放っておいても来ない大手顧客を掴むには、ABMとインテントデータを駆使して狙った企業や人物にピンポイントで接触し商談機会を創出するアプローチが必要です。
具体的には、契約金額の大きいエンタープライズ企業をターゲットとし、そこで意思決定に関わる人物のペルソナを詳細に描きます。従来のテレアポ的なアウトバウンドでは限界があるところを、戦略的に新規のリード獲得を行う必要があるのです。
マーケ・IS・FSの役割分担を明確にした組織設計
BDRを立ち上げる際の戦略設計と社内体制づくりは、成功を左右する重要なポイントです。著者の小林氏は自身の経験から、短期間での営業組織構築に定評がある人物であり、そのノウハウが本書に凝縮されています。
重要なのは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスそれぞれの役割分担を明確にした組織設計です。BDRチームの役割定義やKPI設定、例えば商談化率やアポイント獲得数などについて具体例が挙げられています。
サブスクリプション型でARR成長を目指すSaaS企業にとって、エンタープライズ企業を攻略する鍵としてBDR戦略が不可欠です。従来のプッシュ型インサイドセールス手法ではエンタープライズ企業にリーチできる可能性が低いため、より戦略的に新規のリード獲得を行う必要があります。
組織設計においては、BDR部隊をどこに配置するか、誰がマネジメントするか、どのようなチーム編成にするかといった具体的な検討が必要です。また、BDRを内製するか外注するかという選択肢についても、自社のリソース状況や目標に応じた判断材料を持つことが重要になります。
BDR経由の商談の特性を理解した運用設計
BDR経由の商談はSDR経由の商談と性質が異なる点を理解することが、運用設計において極めて重要です。
マーケ経由でリードを獲得するSDRとは異なり、BDRは未接点企業、いわゆるリード情報が全くない状態から様々な手段を用いて潜在顧客へアプローチします。そのため、初回接点から受注までの道のり、つまりリードタイムが想像以上に長くなります。
特にエンタープライズセグメントに関しては商談創出すら難易度が高く、求めている人物のオプトイン情報、つまりリードを獲得することすら困難な領域です。BDR経由で獲得したアポや商談をSDR経由で獲得したアポや商談と同じ提案フローや提案内容で展開してしまうと、受注までのリードタイムを加味せずに営業組織における翌月の月次受注計画内に盛り込んでしまう失敗が起きやすくなります。
冷静に考えれば誰もが分かる内容にも関わらず、このような運用上の課題が発生しやすいのがBDR施策の特徴です。そのため、BDR経由の商談には特別な提案フローとフォロー体制を設計する必要があります。
DMUを意識したアプローチ戦略の構築
大手企業に対しては決裁者に直接リーチするのではなく、複数の関係者を段階的に攻略する必要があります。これがDMU、つまり意思決定単位を意識したアプローチ戦略です。
DMUマップを描いて影響力のある人脈を攻める戦術が紹介されています。エンタープライズ企業では、現場担当から決裁層まで、複数の意思決定者が存在します。この複雑な意思決定構造を理解し、それぞれの役割や関心事に合わせたアプローチを設計することが成功の鍵となります。
ターゲット顧客で温度感が高くない相手に対して、提案力次第で商談化を目指すのがBDRの特徴です。そのため、比較サイト経由のリードでは決裁層に届かないので、BDRでは手紙施策などの具体的なアプローチ手法が有効になります。
商談創出までの具体的プロセスを詳細に設計し、アポイント獲得から初回商談の設定、フォローアップのコツまで、現場目線の細かな工夫が求められます。商談数や案件化率を高めるためのチーム内フィードバックなど、PDCAを回す仕組みづくりも欠かせません。
KPI設定と継続的な改善の仕組みづくり
BDR施策を成功させるには、適切なKPI設定と継続的な改善の仕組みが不可欠です。短期的に成果が出なくても適切にKPIをモニタリングし、施策を改善するPDCAが欠かせません。
商談化率、アポイント獲得数、リードタイムなど、BDR特有のKPIを設定し、定期的に測定することで改善の方向性が見えてきます。中堅以上の商談獲得単価をSMB開拓時のCPAと同等で設定してしまうような失敗を避けるためにも、現実的な目標設定が重要です。
BDRの概念や基礎情報が分からない中で施策を開始してしまうと、事業成長のためのエンタープライズ開拓が単なるテレアポ施策になってしまったり、短期で施策自体をペンディングしてしまう可能性が高くなります。そのため、基本を押さえた上で、データに基づいた継続的な改善を行う体制が必要なのです。
また、外注を活用する場合でも、自社にノウハウを蓄積する内製の重要性が説かれています。まずはアウトソースで立ち上げつつ徐々に内製化するなど、段階的アプローチも有効な選択肢となります。
『SaaS企業のための「BDR戦略」入門』は、BDR施策の導入タイミングから組織づくり、具体的な運用方法まで、実践的なノウハウが詰まった一冊です。特に成長フェーズにあるSaaS企業にとって、エンタープライズ顧客を戦略的に獲得するための道筋を明確に示してくれます。
本書で学んだ知識を実践することで、従来のマーケティング施策では届かなかった大手企業との商談機会を創出し、ARR成長を加速させることができるでしょう。BDR戦略は単なる営業手法ではなく、これからのSaaS企業の成長に欠かせない戦略的アプローチなのです。

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