やることを半分に減らしたら、人生が豊かになった〜一川誠『ぼくら大切なことに使える時間はもう、あまりないから』が教える幸福への道

「やらないより、やったほうがまし」。そう思って抱え込んでいるタスクは、ありませんか?

私は40代のIT企業管理職として、常に何かに追われていました。部下のマネジメント、プロジェクトの進行管理、経営会議の資料作成、顧客対応。さらに自己啓発のための読書、業界セミナーへの参加、人脈作りのための飲み会。「できることは全部やらなければ」と思い込んでいました。

しかし、千葉大学大学院教授で実験心理学者の一川誠さんによる『ぼくら大切なことに使える時間はもう、あまりないから』を読んで、その考えが根本から間違っていたことに気づかされました。本書が教えてくれたのは、タスクを減らすこと、余白を作ること、そして過去を振り返ることこそが、幸福な人生を作る唯一の方法だという真実です。

ぼくら大切なことに使える時間はもう、あまりないから
「人生には限りがある」――この事実を、あなたはどれほど実感しているでしょうか?日々の忙しさに追われ、「そのうち会おう」「いつかやろう」と先延ばしにしていることはありませんか。実はそれが、あなたの幸せや充実感を奪っているとしたら、どうしますか...

「やったほうがまし」は本当か?

ある日曜日の夜、私はタスクリストを眺めていました。50個以上のタスクが並んでいます。仕事のタスク、家庭のタスク、自己啓発のタスク。すべて「やらなければならない」と思っていたものばかりです。

一川さんの言葉が胸に刺さりました。「やらないより、やったほうがまし程度のタスクは、すべて捨てるべきだ」。

この指摘を受けて、私は一つ一つのタスクに向き合いました。本当にやる必要があるのか?やらなかったら、どんな問題が起きるのか?誰のためにやっているのか?

驚いたことに、本当に必要不可欠なタスクは、全体の半分もありませんでした。残りの半分は、「やっておいたほうがいいかも」「誰かが評価してくれるかも」「将来役に立つかも」という曖昧な理由で抱え込んでいたものだったのです。

たとえば、業界の勉強会への参加。毎月2~3回参加していましたが、正直に言えば、そこで得た知識をすぐに仕事に活かせることはほとんどありませんでした。人脈作りのためと思っていましたが、具体的な成果につながったこともありません。

自己啓発書の多読も同じでした。月に10冊読むことを目標にしていましたが、読んだ内容の大半は記憶に残っていません。「読書家」というイメージを維持したいという虚栄心だったのです。

こうした「やったほうがまし」程度のタスクを、私は思い切って削除しました。タスクリストは50個から25個に減りました。

余白が生み出した驚くべき変化

タスクを半分に減らすと、不思議なことが起こりました。スケジュール帳に「余白」が生まれたのです。

以前は、朝から晩までびっしりと予定が詰まっていました。9時から10時まで会議、10時から11時までミーティング、11時から12時まで資料作成。休憩時間はゼロ。週末も子どもの習い事の送迎、買い物、家事で埋まっていました。

今は違います。午前中に重要な会議を2つ入れたら、午後は余白にしています。週末も、土曜日は予定を入れますが、日曜日は何も予定を入れません。

最初は不安でした。この空き時間、何をすればいいのか。生産性が下がるのではないか。同僚に負けてしまうのではないか。そんな恐怖がありました。

しかし、一川さんの説明によれば、この余白こそが幸福を生み出す源泉なのです。余白があることで、体験を振り返り、記憶として定着させることができる。そして、記憶の蓄積こそが、人生の満足度を決めるのだと。

実際に余白を持つようになって、私の日常は劇的に変わりました。会議が終わった後の30分間、私はオフィスの窓際に座って、ただぼんやりとしています。会議の内容を思い返し、誰がどんなことを言っていたか、自分はどう感じたかを、ゆっくりと反すうするのです。

この時間が、記憶を深く定着させてくれます。以前は、会議が終わった瞬間に次の予定に向かっていたので、会議の内容をほとんど覚えていませんでした。今は、一週間前の会議の内容も、具体的に思い出すことができます。

小さな変化が日常を特別にする

一川さんが提唱する2つ目のアプローチは、日常に「小さな変化」を取り入れることです。

私の生活は、完全なルーチンでした。朝7時に起床、同じ電車に乗り、同じオフィスに向かい、同じデスクで仕事をする。ランチは会社近くの同じ3つの店をローテーション。帰宅後は夕食、入浴、就寝。この繰り返しでした。

一川さんによれば、単調なルーチンは脳によって自動化され、記憶に残りにくいそうです。だからこそ、「今年の前半、何をしていたか思い出せない」という現象が起こるのです。

そこで私は、意図的に小さな変化を日常に取り入れることにしました。月曜日は東口から出社、火曜日は西口から出社。水曜日は階段を使い、木曜日はエレベーターを使う。金曜日は行ったことのないレストランでランチ。

本当に些細な変化です。でも、この小さな変化が、日常を特別なものに変えてくれました。

東口から出社した日には、いつもと違う景色が見えました。見慣れない花屋があり、そこで妻へのプレゼントを買いました。階段を使った日には、同僚と偶然出会い、思いがけない情報交換ができました。新しいレストランでは、美味しい料理に出会い、その店が私のお気に入りになりました。

これらの小さな出来事が、具体的な記憶として残るのです。「何月何日に何をしていたか」と聞かれても、これらの変化を手がかりに思い出すことができます。

仕事でも、小さな変化を意識するようになりました。いつも同じ会議室を使うのではなく、違う会議室を予約してみる。いつも同じメンバーで打ち合わせをするのではなく、違う部署の人を呼んでみる。資料のフォーマットを変えてみる。

こうした小さな変化が、仕事に新鮮さをもたらします。そして何より、その体験が記憶に残りやすくなるのです。

一川さんの言う「認知的な負荷」とは、脳に少し頑張ってもらうということです。自動化された処理ではなく、意識的に考えることで、その体験が特別なものとして認識されます。

振り返る時間が記憶を深める

3つ目のアプローチは、過去の体験に「思いを馳せる」ことです。これが、私にとって最も大きな変化をもたらしました。

現代社会は、常に新しい情報が流れてきます。SNSをチェックし、ニュースを読み、動画を見る。次から次へと新しい刺激を求めて、過去を振り返る時間など持たない。これが、私たちの一般的な過ごし方ではないでしょうか。

私もそうでした。通勤時間は常にスマートフォンを見ていました。ニュースアプリ、SNS、YouTubeの動画。常に何かを消費していました。過去の出来事を思い返す時間など、一切ありませんでした。

一川さんは、過去の体験を意図的に振り返ることの重要性を説きます。出来事の後に、その体験を反すうすることで、記憶のネットワークが強化され、長期記憶として確固たるものになるのです。

私は、毎日30分の「振り返りの時間」を設けることにしました。夜、就寝前の30分間、スマートフォンを見ずに、ただその日の出来事を思い返すのです。

朝起きた時の気分、通勤途中で見た景色、午前中の会議での部下の発言、ランチで食べた料理の味、午後の仕事での発見、帰宅後の家族との会話。一つ一つの出来事を、ゆっくりと思い出していきます。

この習慣を始めてから、驚くべき変化がありました。日々の体験が、驚くほど鮮明に記憶に残るようになったのです。

以前は、「今日、何をしていたか」と聞かれても、ぼんやりとしか思い出せませんでした。今は、朝から晩までの出来事を、具体的に思い出すことができます。

さらに、週末には「週の振り返り」の時間も設けています。日曜日の夕方、1時間かけて、その週にあった出来事を振り返ります。月曜日は何をしていたか、火曜日は誰と話したか、水曜日にどんな発見があったか。ノートに書き出しながら、ゆっくりと思い返すのです。

この週の振り返りによって、一週間が「ぼんやりと過ぎ去った時間」ではなく、「具体的な出来事の積み重ね」として認識されます。充実感が生まれます。「ちゃんと生きていた」という実感が湧くのです。

家族との時間の質が変わった

余白と振り返りの習慣は、家族との関わり方も変えました。

以前は、週末に家族で遊園地やショッピングモールへ行くことが、良い父親の証だと思っていました。派手なイベントを用意し、子どもたちを楽しませることが重要だと考えていたのです。

しかし、月曜日になって振り返ると、何をしていたか思い出せないことに気づきました。遊園地に行ったことは覚えていても、子どもたちがどんな表情をしていたか、何を話していたか、具体的な記憶がないのです。

今は違います。週末の予定を意図的に減らし、家族とゆっくり過ごす時間を作っています。午前中は家族で朝食を作り、午後は近所の公園で遊ぶだけ。派手なイベントはありません。

でも、この何気ない時間が、驚くほど記憶に残るのです。朝食を作りながら息子が話してくれた学校の話、公園で娘が見つけた四つ葉のクローバー、ベンチに座って妻と話した将来のこと。一つ一つの瞬間が、具体的なエピソードとして心に刻まれています。

そして、夜寝る前に、その日の出来事を家族で振り返る時間も作りました。「今日の一番楽しかったことは?」と子どもたちに聞きます。息子は公園で投げたフリスビーのこと、娘は朝食のパンケーキが美味しかったことを話してくれます。

この振り返りの時間が、家族の記憶を共有する機会になっています。同じ出来事でも、それぞれが違う視点で見ていたことに気づきます。その発見が、家族の絆を深めてくれるのです。

部下との関係も深まった

仕事でも、振り返りの習慣が大きな効果をもたらしました。

以前は、部下との1対1の面談が終わると、すぐに次の予定に向かっていました。面談の内容は議事録に残すものの、自分自身がその内容を深く咀嚼しているわけではありませんでした。

今は、面談が終わった後、必ず15分間の振り返り時間を設けています。その部下は何に悩んでいたか、どんな表情をしていたか、自分はどんなアドバイスをしたか。ゆっくりと思い返します。

そして、その日の夜、もう一度振り返ります。自分のアドバイスは適切だったか、他に何かできることはなかったか、次回はどんな話をすべきか。深く反すうするのです。

この振り返りによって、部下一人一人の状況が、驚くほど具体的に記憶に残るようになりました。次の面談では、前回の内容を踏まえた会話ができます。「前回話していた案件、その後どうなった?」と自然に聞けるのです。

部下からも変化を指摘されました。「最近、ちゃんと覚えていてくれるんですね」と。以前は、面談の内容をほとんど覚えていなかったのでしょう。今は、一か月前の面談の内容も思い出せます。

この変化が、部下との信頼関係を深めています。「この上司は、自分のことをちゃんと見てくれている」と感じてもらえるようになりました。

月に一度の「大きな振り返り」

週の振り返りに加えて、月に一度、「大きな振り返り」の時間も設けるようになりました。

月末の日曜日、2時間かけて、その月にあった出来事を振り返ります。仕事での成果、失敗、学び。家族との時間で印象に残ったこと。読んだ本、出会った人、新しい発見。

ノートに書き出しながら、一つ一つの出来事を丁寧に思い返します。そして、それぞれの出来事から何を学んだか、次の月にどう活かすかを考えます。

この月の振り返りによって、一か月が「あっという間に過ぎた」という感覚がなくなりました。具体的な出来事の積み重ねとして、一か月を認識できるようになったのです。

さらに驚くべきことに、この振り返りの習慣によって、過去の記憶がより鮮明になりました。一川さんの研究によれば、反すうすることで記憶のネットワークが強化されるそうです。

実際に、半年前の出来事も、具体的に思い出せるようになりました。以前は、「半年前に何をしていたか」と聞かれても、ほとんど思い出せませんでした。今は、毎月の振り返りノートを見返すことで、その時の出来事、感情、学びがすべて蘇ってきます。

人生の密度が濃くなった実感

余白を作り、小さな変化を加え、振り返る時間を持つ。この3つの習慣を始めてから、私の人生に対する実感が大きく変わりました。

以前は、一年が終わる時に「今年は何をしていたんだろう」という虚無感を抱いていました。確かに忙しく働き、色々なことをしていたはずなのに、具体的な記憶がない。充実していたという実感も湧かない。

今は違います。毎月の振り返りノートを見返すと、その月にあった具体的な出来事が蘇ってきます。1月は新規プロジェクトが始まり、2月は部下が昇進し、3月は家族で温泉旅行に行った。一つ一つのエピソードが、鮮明な記憶として残っています。

そして何より、「生きている」という実感が強くなりました。記憶に残る体験を重ねることで、人生の密度が濃くなったように感じるのです。

一川さんが指摘する通り、幸福度は記憶の蓄積によって決まります。いくら多くの活動をしていても、それが記憶に残らなければ、幸福感は生まれません。逆に、活動の量は少なくても、それが深く記憶に刻まれれば、人生の満足度は高まるのです。

「やらないこと」を決める勇気

一川さんの本が教えてくれた最も重要なことは、「やらないこと」を決める勇気でした。

現代社会は、「もっと、もっと」と要求してきます。もっと働け、もっと学べ、もっと成長しろ。その声に応えようと、私たちは予定を詰め込み、休む間もなく活動し続けます。

でも、その結果得られるのは、虚無感だけです。記憶に残らない日々は、生きた証を残しません。どれだけ多くのことをこなしても、充実感は得られないのです。

だからこそ、「やらないこと」を決める勇気が必要です。「やったほうがまし」程度のタスクを削り、スケジュールに余白を作る。一見すると非効率に見えるこの選択が、実は人生を豊かにする唯一の方法なのです。

私は、タスクを半分に減らしました。その結果、仕事の質は上がり、家族との関係は深まり、人生の満足度は格段に向上しました。

今日から始める3つの実践

あなたも、今日から実践できることがあります。

まず、タスクリストを見直してください。そして、「やらないより、やったほうがまし」程度のタスクを、思い切って削除しましょう。本当に重要なタスクだけを残すのです。

次に、日常に小さな変化を加えてみてください。いつもと違う道を歩く、新しいレストランに入る、違う時間に起きてみる。本当に些細な変化でかまいません。その変化が、日常を特別なものに変えてくれます。

そして、毎日30分、振り返りの時間を持ってください。スマートフォンを置いて、その日の出来事をゆっくりと思い返す。それだけで、記憶の質が劇的に変わります。

幸福は余白の中にある

一川誠さんの『ぼくら大切なことに使える時間はもう、あまりないから』が教えてくれるのは、幸福への道です。

それは、効率を追求することでもなく、多くのことをこなすことでもありません。余白を作り、変化を加え、振り返る時間を持つこと。この3つの実践こそが、記憶を深め、人生を豊かにする唯一の方法なのです。

私は、この本に出会って人生が変わりました。タスクを減らし、余白を作り、振り返る時間を持つようになってから、充実感と幸福感が格段に増したのです。

あなたも、この本を手に取ってみてください。そして、余白を作ることから始めてみてください。幸福は、余白の中にあります。

ぼくら大切なことに使える時間はもう、あまりないから
「人生には限りがある」――この事実を、あなたはどれほど実感しているでしょうか?日々の忙しさに追われ、「そのうち会おう」「いつかやろう」と先延ばしにしていることはありませんか。実はそれが、あなたの幸せや充実感を奪っているとしたら、どうしますか...

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