部下のやる気を削いでいるのは誰か?マイナス感情を取り除く組織マネジメントの新常識

部下のモチベーションが上がらない、チームの雰囲気がどこかギスギスしている、優秀な人材ほど辞めていく。そんな悩みを抱えていませんか?実は多くのマネージャーが「やる気を引き出す」ことに必死になる一方で、見落としている重要な事実があります。それは組織に蓄積された不満や不公平感といった「マイナス感情」こそが、チームの生産性を蝕む真犯人だということです。医師であり産業医、さらにロンドン・ビジネス・スクールでMBAを取得した経営コンサルタントでもある上村紀夫氏の著書『辞める人・ぶら下がる人・潰れる人』さて、どうする?は、この見過ごされがちな組織の病巣にメスを入れます。

Amazon.co.jp: 「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする? (Audible Audio Edition): 上村 紀夫, 菅沢 公平, Audible Studios: Audibleオーディオブック
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マイナス感情は組織にウイルスのように広がる

上村氏が3万件以上の産業医面談と年間1,000以上の組織調査から導き出した結論は明快です。不満や不公平感といったマイナス感情は、プラスの感情よりも強烈で、長期にわたる影響を及ぼし、そして組織全体にウイルスのように伝染しやすいのです。

実際の研究でも、組織に対して否定的な感情を抱いている状態で仕事をすると、モチベーションが下がるだけではなく、一緒に働いている仕事仲間にも影響を与えることが明らかになっています。特に注目すべきは、社長や管理職といった影響力のある立場の人間がネガティブ感情状態にあると、周囲もその影響を受けてしまうという事実です。あなたの焦りや不安は、気づかぬうちにチーム全体に伝染しているかもしれません。

人は利益より損失を2倍強く感じる

では、なぜマイナス感情はこれほど強力なのでしょうか。その答えは心理学における損失回避の原則にあります。人間は同等の利益を得る喜びよりも、損失を被る痛みを心理的に約2倍強く感じるという性質を持っているのです。

これをマネジメントに当てはめると、重要な示唆が得られます。人は「得すること」より「損したくない」という感情のほうが動機づけになりやすい傾向があります。つまり給与ボーナスや社内イベントといったプラスの感情は一時的な効果しかなく、すぐに「当たり前化」してしまう一方で、不公平な評価や過重な業務負担といったマイナス要因は、深く長く従業員の心に刻まれ続けるのです。

プラス施策が空回りする理由

多くの企業が従業員満足度向上のために、福利厚生の充実や表彰制度の導入、チームビルディングイベントの開催といったプラス施策に取り組んでいます。しかし上村氏は、これらの施策が期待した効果を生まないケースが多いと指摘します。

なぜでしょうか。理由はシンプルです。組織の健全性は、一時的な利益を追加するよりも、体系的に損失の源を特定し取り除くことによって、より効果的に改善されるからです。土台が崩れた家に豪華な家具を置いても意味がないように、マイナス感情が蔓延する組織でプラス施策を打っても効果は限定的なのです。

実際の調査でも、従業員が離職を考える理由として最も多かったのは「給与・報酬が期待に見合っていない」で45.4パーセント、次いで「評価・昇進の基準が不透明」が33.5パーセントでした。これらはまさに不満や不公平感という、マイナス感情の典型例と言えます。

マイナス感情の源泉を見極める

では具体的に、組織のどこにマイナス感情が潜んでいるのでしょうか。上村氏は、これらのマイナス感情が従業員の期待と会社が実際に提供するものとの間のギャップから生じると説明します。このギャップは報酬、職場環境、承認、キャリア機会など多岐にわたります。

あなたのチームを振り返ってみてください。主観的な評価や具体的根拠のない評価が行われていませんか。上司による一方的な判断で業務が割り振られ、部下が納得感を持てていないことはないでしょうか。組織サポートが低下すると、従業員の組織に対する否定的な態度が高まることが研究で明らかになっています。部下が会社や上司からのサポートを感じられない状態が続くと、不満は確実に蓄積していきます。

今日から実践できるマイナス除去の3ステップ

マイナス感情を減らすには、実はシンプルな方法があります。それはネガティブ感情を表現できて共有できる環境を作ることです。逆に、ネガティブ感情を表現できずに抱え込むと、減らないどころか増幅してしまいます。

第一に、定期的な1on1ミーティングで部下の不満や懸念を率直に聞き出す場を設けましょう。この際、評価面談とは切り離し、安心して本音を話せる雰囲気を作ることが重要です。第二に、評価基準を明確化し、透明性を高めることです。なぜその評価になったのか、具体的な根拠を示すことで不公平感を軽減できます。第三に、業務負荷や役割分担に偏りがないか定期的に見直すことです。特定の人に負担が集中していないか、客観的なデータで確認する習慣をつけましょう。

上村氏の著書が教えてくれるのは、リーダーシップとは部下を鼓舞することだけではなく、組織から不満や不公平感といった毒素を取り除く臨床医のような役割でもあるということです。プラスを足す前に、まずマイナスを引く。この優先順位を間違えないことが、健全で生産性の高いチーム作りの第一歩なのです。

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NR書評猫812 上村紀夫 「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?

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