隙間時間は4パターンしかない―本山裕輔『仕事ができる人がキリの悪い時間にやっていること』が示す戦略的時間活用

「隙間時間を有効活用しよう」というアドバイスは誰もが聞いたことがあるでしょう。しかし、いざ10分や15分の中途半端な時間ができたとき、何をすればいいか迷ってしまい、結局スマホを眺めて終わってしまう。そんな経験はありませんか?本山裕輔氏の『仕事ができる人がキリの悪い時間にやっていること』は、この悩みに明快な答えを提示してくれます。隙間時間には実は4つのパターンしかなく、それぞれに最適な行動があるというのです。この体系的なアプローチが、多くのビジネスパーソンの時間の使い方を変えつつあります。

Amazon.co.jp: 仕事ができる人がキリの悪い時間にやっていること eBook : 本山 裕輔: 本
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隙間時間を見事にパターン化した画期的な分類法

本書の最大の特徴は、とらえどころのない隙間時間を、たった2つの軸で4つのパターンに整理した点です。その2つの軸とは、「突発型か予測型か」と「集中しやすいか集中しにくいか」です。

この分類により、どんな隙間時間も必ず4つのいずれかに当てはまります。急に会議がキャンセルになって1時間空いた場合、移動中の30分、病院での待ち時間、大事なプレゼンの前の15分。これらすべてが、この4つのパターンのいずれかに分類され、それぞれに最適な活用法が示されているのです。

従来の時間管理術が「もっと集中しろ」「やる気を出せ」といった精神論に頼りがちだったのに対し、本書は状況を客観的に分類し、その状況に最適な行動を選ぶという極めて合理的なアプローチを取っています。これにより、迷う時間を減らし、即座に行動に移せるようになるのです。

パターン1:突発型×集中しやすい―最高のチャンス

このパターンは、予期せず時間ができたものの、環境的にも精神的にも集中できる状態です。例えば、会議が急遽キャンセルになって1時間空いた場合や、予定していた訪問先から急に延期の連絡が入って午後がまるまる空いた場合などがこれに当たります。

本書では、このパターンを隙間時間活用の最高のチャンスと位置づけています。普段は後回しにしがちな重要だが難易度の高いタスクに着手する絶好の機会なのです。

具体的には、未着手のプロジェクト企画書の作成、複雑な問題の解決策の検討、重要な意思決定の熟考など、まとまった集中力と思考力を必要とする作業に取り組むべきだと説明しています。こうした作業は、細切れ時間では進められないため、通常は特別に時間を確保する必要があります。しかし、突発的にこのような時間が生まれたら、それは天からの贈り物と捉え、最大限に活用すべきなのです。

中間管理職の立場であれば、チームの中長期的な戦略立案、部下の評価制度の見直し、新規プロジェクトの構想など、日々の業務に追われて手をつけられていない重要課題に取り組むチャンスとなります。

パターン2:突発型×集中しにくい―無理をしない選択

予期せず時間ができたものの、集中できる環境や精神状態ではない場合です。例えば、急に10分だけ空いたが次の予定が気になって落ち着かない、疲れていて頭が働かない、騒がしい環境で集中できないといった状況がこれに当たります。

このパターンで無理に難しい仕事をしようとするのは逆効果です。本書では、この状況では簡単に済む事務処理、メールの整理、机の上の片付け、3分間の瞑想やストレッチなど、軽い作業やリフレッシュに使うことを推奨しています。

特に注目すべきは、生成AIとの壁打ちという提案です。ChatGPTなどの生成AIに悩みを相談したり、アイデアの種を投げかけたりすることで、後でまとまった時間ができたときに活用できる材料を仕込んでおくのです。これは現代的で実践的なアドバイスといえます。

また、仕事の振り返りも有効な使い方として挙げられています。今日うまくいったこと、改善すべきことを簡単にメモしておくだけで、後日の業務改善に役立ちます。

重要なのは、この時間帯に無理をせず、自分の状態に合った行動を選ぶことです。集中できないのに無理に難しい仕事をしようとして失敗すれば、かえって罪悪感や疲労感が増してしまいます。

パターン3:予測型×集中しやすい―計画的に使う宝の時間

あらかじめ発生することがわかっており、かつ集中できる環境の時間です。新幹線や飛行機での移動時間、定期的な通勤時間、毎週決まった時間に空いている枠などがこれに当たります。

このパターンの最大の利点は、事前に準備ができることです。移動時間に読む資料を用意しておく、取り組むべきタスクを決めておく、必要なツールをダウンロードしておくなど、計画的に使えるため効率が格段に上がります。

本書では、このような時間には読書や書き物といった、ある程度まとまった思考を必要とする作業が向いていると説明しています。新幹線での2時間の移動中に専門書を1冊読み切る、飛行機の中でプレゼン資料を仕上げるといった使い方が典型例です。

中間管理職にとっては、業界のトレンドをキャッチアップするための記事や書籍を読む、部下へのフィードバック内容を整理する、次のプロジェクトのアイデアを練るなど、戦略的思考を必要とする作業に最適です。

また、この時間を自己投資に使うのも有効です。資格試験の勉強、語学学習、最新技術のキャッチアップなど、長期的なキャリア形成につながる活動を習慣化できます。

パターン4:予測型×集中しにくい―現実的な期待値を持つ

あらかじめわかっているが、集中しにくい時間です。病院の待合室での待ち時間、子どもの習い事の送迎の待ち時間、大事なプレゼンや面接の直前のソワソワした時間などがこれに当たります。

この状況の特徴は、時間の長さが読めないことや、精神的に落ち着かないことです。病院の待ち時間は5分かもしれないし1時間かもしれません。プレゼン前は緊張で集中できません。

本書では、こうした時間には無理に仕事をしようとせず、Web記事や動画で情報をインプットする、スマホで完結できる簡単な事務処理をする程度に留めることを勧めています。あるいは、プレゼン前のような場合は、3分間の瞑想や軽い有酸素運動で心を落ち着かせるか、割り切ってプレゼン準備に専念するという選択肢も示されています。

重要なのは、この時間帯に高い成果を期待しないことです。この状況で難しい仕事に取り組もうとして失敗すれば、かえってストレスが増します。現実的な期待値を持ち、できる範囲のことをする。それが長期的には最も生産的なアプローチなのです。

イフゼンルールで迷いをなくす

本書がさらに一歩進んでいるのは、事前に行動計画を立てておく「イフゼンルール」の活用を推奨している点です。これは「もし○○の状況になったら、△△する」という形式であらかじめ行動を決めておく方法です。

例えば、「もし会議が早く終わったら、プロジェクトのアイデアを5分間メモする」「もし移動中の電車で座れたら、業界の最新記事を1本読む」「もし急に10分空いたら、3分間の瞑想をする」といった具合です。

この方法の優れた点は、その場で何をするか考える必要がないことです。隙間時間ができたとき、多くの人は「何をしようか」と考えている間に時間が過ぎてしまいます。しかし、事前にイフゼンルールを設定しておけば、その状況になった瞬間に自動的に行動に移せるのです。

心理学の研究でも、イフゼンルールを設定した人は目標達成率が2倍から3倍に上がることが示されています。これは、意志の力に頼らず、状況が行動を自動的に引き起こす仕組みを作るからです。

本書は、この科学的に裏付けられた方法を隙間時間活用に応用することで、無理なく継続できる時間術を提案しているのです。

中間管理職に特に有効な4パターン活用法

IT企業の中間管理職であれば、日々様々なパターンの隙間時間に直面しているはずです。本書の4パターン分類は、特にこうした立場の方々に威力を発揮します。

突発型×集中可能な時間が生まれたら、部下の育成計画の見直し、チームの業務プロセス改善の検討、新技術導入の可能性調査など、戦略的に重要だが後回しにしがちなタスクに取り組めます。

突発型×集中困難な時間には、部下へのちょっとした励ましメールを送る、Slackやチャットの未読メッセージを整理する、デスク周りを片付けて次の仕事の準備をするなど、短時間で完結する作業が適しています。

予測型×集中可能な時間、例えば定期的な移動時間には、マネジメント関連の書籍を読む、業界トレンドをキャッチアップする、部下の評価コメントを練るなど、思考を必要とする作業を習慣化できます。

予測型×集中困難な時間、例えば重要な会議の前後には、会議の要点を簡単にメモする、次のアクションを箇条書きにする程度に留め、無理をしないことが大切です。

このように、自分が直面する隙間時間のパターンを見極め、それぞれに適した行動のレパートリーを持っておくことで、一日を通じて無駄なく効果的に時間を使えるようになります。

「隙間時間の解像度を高める」という新しい視点

本書を紹介したSUNMARK WEBのレビューでは、本書を「隙間時間の解像度を飛躍的に高める本」と評しています。これは本書の本質を的確に捉えた表現です。

多くの人にとって、隙間時間は「なんとなく空いた時間」というぼんやりした認識に過ぎません。しかし本書は、その時間を2つの軸で4つに分類することで、それぞれの特性を明確にしました。これにより、「この時間は何に使えるのか」「何に使うべきか」が明瞭になったのです。

解像度が上がるということは、より精密に、より適切に対応できるようになるということです。カメラの解像度が上がれば細部まで見えるように、隙間時間の解像度が上がれば、それぞれの時間の特性が見え、最適な使い方ができるようになります。

この視点の転換こそが、本書が多くの読者に支持される理由なのです。

完璧を目指さない、継続できる時間術

本書のもう一つの優れた点は、完璧主義に陥らない現実的なアプローチを取っていることです。

隙間時間を使えなかったからといって自分を責める必要はない、と本書は繰り返し伝えています。大切なのは、自分の状態と残り時間に応じて「その時ベストな過ごし方」を選ぶことです。

集中できない状態で無理に難しい仕事をしようとするより、軽い作業や休息を選ぶことも立派な時間活用です。むしろ、そうした柔軟な選択ができることが、長期的に高いパフォーマンスを維持する秘訣なのです。

7割の成功率で続けられる方が、完璧を目指して三日坊主になるよりもはるかに大きな成果につながります。本書が示す4パターンの分類とイフゼンルールは、まさにこの「無理なく続けられる」時間術を実現するための仕組みなのです。

今日から始める4パターン実践

本書を読み終えたら、まず自分の一日を振り返り、どのパターンの隙間時間が多いかを観察してみてください。通勤時間が長い人は予測型×集中可能の時間が多いでしょうし、会議が頻繁にある人は突発型の時間が多いはずです。

次に、それぞれのパターンで自分は何をするかを3つずつ決めておきましょう。そして、それをイフゼンルールの形で書き出します。「もし○○の状況になったら、△△する」という形式です。

最初は完璧を目指す必要はありません。4つのパターンのうち、自分が最も頻繁に直面するパターンから始めればよいのです。一つのパターンでイフゼンルールが習慣化したら、次のパターンに移ります。

本山裕輔氏の『仕事ができる人がキリの悪い時間にやっていること』は、隙間時間という漠然とした概念を明確な4つのパターンに整理し、それぞれに最適な行動指針を示してくれる実践的な一冊です。

あなたの一日にある様々な隙間時間が、この4パターンのどれに当てはまるか。その認識が、あなたの時間の使い方を根本から変えるかもしれません。

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NR書評猫1104 本山裕輔 仕事ができる人がキリの悪い時間にやっていること

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