1日5つの不満を書くだけで、なぜ提案が通るようになるのか

部下が何を考えているのか、なかなかわからない。会議で提案しても「いまひとつ響かない」という手応えのなさ。上司への説明も、どこかズレている気がする……。

最近昇進したばかりのあなたにとって、こうした「相手の本音が見えない」という悩みは、日々の仕事の中で積み重なっていませんか。

実は、その悩みへのヒントが、通信販売業界のヒットメーカーが書いたマーケティング本に隠れていました。カタログハウスで350点以上の商品をデビューさせた吉川美樹さんの著書です。本書のテーマは「商品開発」ですが、その核心にあるのは「相手の本音を、データではなく自分の身体で感じ取る」という洞察力の鍛え方です。これはIT系の管理職として、部下やステークホルダーとの信頼関係を築きたいあなたにこそ、強く刺さる内容だと思います。

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会議室のヒアリングでは、本音は出てこない

マーケティングの世界では長年、大規模アンケートや市場調査が「正しい答え」を教えてくれるという前提で仕事が進められてきました。しかし吉川さんはこれに異を唱えます。調査から得られるのは、すでに顕在化しているニーズの確認に過ぎない、と。

これはIT企業の管理職の仕事にも、そのままあてはまります。1on1ミーティングや部門会議で「何か困っていることはある?」と聞いても、部下から返ってくるのは当たり障りのない答えばかり、という経験はありませんか。

聞かれたから答えているだけなのです。本当の不満や悩みは、日常のちょっとした場面にこそ隠れています。

吉川さんが発見した半径1メートルの視点とは、まさにこの日常の中の本音を見つけ出す技術です。

毎日5つの不満を書き留める「ネタ帳」の力

吉川さんが本書で紹介する最も基本的なトレーニングが、毎日5つの生活の不満をネタ帳につけるというシンプルな習慣です。

朝起きてから夜寝るまでの行動を頭の中でなぞり返し、「こうだったらもっと便利だったのに」「あれ、ちょっと使いにくかったな」という些細な不快感を、言葉にして書き留めていく。これを毎日繰り返すことで、次第に不満を見つけるセンサーが磨かれていくというのです。

この習慣を管理職の仕事に置き換えてみてください。たとえば、部下が送ってくるメールの文面、会議後の表情、誰かに声をかけられたときの反応。こうしたシグナルを意識して記録していく習慣を持つだけで、チームの状態が格段に見えやすくなります。

困っているかもを言語化する

このワンステップが、信頼関係の土台になるのです。

別の人間になりきることで見えてくる景色

吉川さんの手法の中で特にユニークなのが、曜日別にまったく違う人間になりきるという観察トレーニングです。

たとえばある曜日は専業主婦として、別の曜日は共働きで子どもを保育園に送り迎えする母親として一日を過ごすように意識する。チラシを手に取って欲しいものランキングをつけてみる。これによって、ターゲット層の購買心理や生活動線を、データではなく感覚として自分の中にインストールしていくのです。

「そんな遊び、仕事に関係あるの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、これはれっきとした洞察力の訓練です。

管理職として応用するなら、「今日は新入社員の目線で仕事を眺めてみる」「ベテランエンジニアとしてこの仕様書を読んだらどう感じるか」と、意識的に相手の立場で一日を過ごしてみる。それだけで、提案の切り口や伝え方が驚くほど変わってきます。

なりきる練習が、共感力を育てる

人間拡声器になれれば、提案は自然と通る

吉川さんは自らのことを「ターゲットの心の声を代弁する人間拡声器」と表現しています。

これは非常に重要な言葉です。ヒット商品を生み出す人間が持っているのは独創的なアイデアではなく、多くの人がぼんやりと感じている不満をはっきりと言語化する力だ、というのです。

IT部門の管理職として経営層や他部門に提案をするとき、あなたの提案は誰の声を代弁していますか。

「技術的に優れているから採用すべき」という論理ではなく、「現場の人間がこう感じていて、このツールを入れることでその不満が解消される」という伝え方のほうが、圧倒的に相手の心に刺さります。毎日不満を記録し、相手の立場で考える訓練を積んだ先に待っているのは、「この人は私たちのことをわかってくれている」という信頼感です。そしてその信頼感こそが、提案を通す最大の武器になります。

半径1メートルの観察が、チームの信頼を生む

吉川さんが本書で繰り返し強調するのは、自分自身の生活者としての感覚を大切にするということです。100の商談より1つの暮らしの不満にヒントがある、という言葉は、商品開発だけでなく、部下やチームと向き合う姿勢にも通じます。

分厚い調査レポートや組織サーベイの結果よりも、昨日の朝礼での部下の一言や、ランチのときにぼそっとこぼされた愚痴の方に、本質的な問題が隠れていることは珍しくありません。

日常の小さなシグナルを見逃さない

この姿勢を続けることで、部下はあなたのことを「ちゃんと見てくれている上司」として信頼するようになります。管理職としての存在感は、声の大きさや権威によってではなく、こうした積み重ねによって醸成されていくものです。

今日からできる「半径1メートル」実践ステップ

吉川さんの手法を日常業務に取り入れるための、具体的なステップを整理してみましょう。

最初の一週間は、1日の終わりに「今日チームの誰かが不便そうにしていた場面」を3つ書き出す習慣を始めてみてください。専用のノートでも、スマートフォンのメモでも構いません。次の週は、その記録を見返しながら「もしも自分がその部下だったら、何を求めているだろうか」と考えてみます。これが、なりきりトレーニングの入口です。

3週目以降は、次回の提案資料を作る際に「この内容は誰のどんな不満を解消するものか」を冒頭の一文に書き加える練習をしてみましょう。

観察→言語化→提案への変換

このサイクルを回し続けることで、提案の精度は確実に上がっていきます。

吉川美樹さんの著書は、商品開発という現場から生まれた本ですが、その本質は「人の本音を観察し、言語化し、行動に変える」という普遍的なスキルを磨くための実践書です。管理職として信頼を築きたい、提案を通したい、部下やステークホルダーの本音を引き出したいと思っているあなたに、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

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