部下から信頼される上司になりたい、プレゼンで提案を通したい、そう思いながらも「なぜかうまくいかない」と感じていませんか。実は、その原因は個人の才能や経験不足ではなく、再現性のある「型」を知らないことにあるかもしれません。
守屋実氏の著書「新規事業を必ず生み出す経営」は、新規事業の成功を個人の閃きや運に頼らず、誰でも再現できる「型」によって実現する方法論を提示しています。この考え方は、新規事業だけでなく、チームマネジメントやプレゼンテーションなど、あらゆる業務に応用できる普遍的な価値を持っています。
本記事では、なぜ「属人性を排除した型化」が重要なのか、そしてそれを日常の管理職業務にどう活かせるかを解説します。読み終える頃には、部下との関係改善や提案の成功率向上に向けた具体的な行動指針が手に入るでしょう。
「いつまでも素人が同じ失敗を繰り返す」日本企業の病理
著者の守屋実氏は、日本の新規事業が「いつまでも素人が同じ失敗を繰り返す」非効率な状態にあると鋭く指摘します。これは新規事業に限った話ではありません。多くの管理職が部下指導やプレゼンテーションで同じような失敗を繰り返すのも、同じ病理が原因です。
個人の才能や経験に依存する組織では、成果が安定しません。優秀な人がいる時は成功し、その人がいなくなると途端に結果が出なくなる。こうした「属人的な成功」は、組織にとって大きなリスクなのです。
40代の管理職であるあなたも、おそらく経験があるでしょう。「あの先輩のようにうまく部下を指導したい」「成功している同期のプレゼン手法を真似したい」と思っても、なかなか同じ結果が出ない。それは、表面的な手法だけを真似て、根本的な「型」を理解していないからです。
守屋氏が提唱するのは、こうした属人性から脱却し、「誰が担当しても一定水準の結果を出せる組織知」を構築することです。この考え方を管理職業務に応用すれば、部下との関係も、プレゼンテーションの成功率も、劇的に改善できます。
失敗を「型化」する:新規事業版「7つの大罪」から学ぶ
本書が画期的なのは、失敗パターンを「7つの大罪」として体系化している点です。これらは新規事業の文脈で語られていますが、管理職の日常業務にも驚くほど当てはまります。
意志なき起業は、管理職でいえば「明確な方針なきチーム運営」です。なんとなく部下に指示を出し、なんとなく会議を重ねても、チームの成果は向上しません。
経験なき理屈は、現場を知らずに机上の理論だけで判断することです。部下の実際の業務内容や困りごとを把握せずに指導しても、的外れな助言になってしまいます。
顧客なき事業は、プレゼンテーションでいえば「相手のニーズを無視した提案」です。自分が伝えたいことばかりを並べ、聞き手が本当に求めている情報を提供できていない状態を指します。
これらの失敗パターンを「型」として認識することで、同じ失敗を繰り返すリスクを大幅に減らせます。守屋氏は「失敗の型化」と「成功の型化」の両方を提示することで、再現性のある成果創出を可能にしているのです。
「マーケットアウト」思考が管理職に与える革命的変化
本書が提唱する「マーケットアウト」の発想は、管理職にとって革命的な視点転換をもたらします。これは「作りたいものを作る」のではなく、「市場が求めているものを提供する」という顧客中心の思考法です。
管理職の文脈で考えると、「自分が言いたいことを言う」のではなく、「部下が本当に必要としている指導を提供する」ことを意味します。多くの管理職が犯しがちな間違いは、自分の成功体験や価値観を一方的に押し付けることです。
例えば、プレゼンテーションでも同じです。「自分が素晴らしいと思う提案を伝える」のではなく、「相手が抱えている課題を解決する提案を組み立てる」ことが重要なのです。
この「マーケットアウト」思考を身につけると、部下との関係が劇的に改善します。部下が本当に困っていることは何か、どんな支援を求めているかを真剣に考えるようになるからです。結果として、部下からの信頼も自然と高まり、チーム全体のパフォーマンス向上につながります。
「仮説・実証・参入」サイクルを日常業務に応用する
守屋氏が提唱する「仮説・実証・参入」のプロセスは、新規事業だけでなく、管理職の日常業務にも強力に応用できます。このサイクルを回すことで、試行錯誤の質と速度を飛躍的に向上させられます。
仮説段階では、「なぜこの部下のパフォーマンスが上がらないのか」「どうすれば今度のプレゼンが成功するか」といった問いに対する仮説を立てます。重要なのは、感情や直感ではなく、観察可能な事実に基づいて仮説を構築することです。
実証段階では、その仮説を小規模で検証します。部下指導であれば、まず一人の部下に対して新しいアプローチを試してみる。プレゼンテーションであれば、同僚に対して事前に内容を説明し、反応を確認する。こうした小さな実験を重ねることで、本格実施前にリスクを最小化できます。
参入段階では、実証で得られた手応えを基に、本格的に実行します。この段階では、実証で学んだ教訓を活かし、成功確率を高めた状態で臨めるのです。
このサイクルを習慣化することで、「なんとなく」や「勘」に頼った管理職業務から脱却し、論理的で再現性の高い成果を継続的に生み出せるようになります。
組織の「聖域」を作る管理職の戦略的思考
本書で特に印象的なのは、新規事業を既存事業の「汚染」から守るための「3つの切り離し」という考え方です。これは管理職にとっても重要な示唆を与えます。
評価の切り離しとは、新しい取り組みを従来の評価基準で判断しないことです。部下が新しいスキルを身につけようとしている時、短期的な成果だけで評価すると、挑戦する意欲を削いでしまいます。長期的な成長を見据えた評価基準を設けることが重要です。
意思決定の切り離しは、新しいプロジェクトや改善提案について、既存の方法論にとらわれずに判断することを意味します。「今までこうやってきたから」という理由だけで新しいアイデアを却下するのではなく、その提案の本質的な価値を見極める姿勢が求められます。
資金の切り離しは、管理職の文脈では「時間とリソースの配分」として理解できます。新しい取り組みに必要な時間や予算を、日常業務とは別枠で確保することで、イノベーションを促進できます。
これらの「切り離し」を実践することで、チーム内に新しいことに挑戦できる「聖域」を作ることができます。その結果、部下の創造性が発揮され、チーム全体の成果向上につながるのです。
「立ち上げのプロ」として成長する管理職の道筋
守屋氏は、新規事業を成功させるために「立ち上げのプロ」の存在が不可欠だと説きます。これは管理職にとっても重要な示唆です。あらゆる業務において「立ち上げのプロ」としての視点を持つことで、より高い成果を生み出せるようになります。
「立ち上げのプロ」とは、ゼロから何かを構築し、軌道に乗せることに特化した専門家です。管理職であれば、新しいチームの立ち上げ、新しいプロジェクトの推進、部下の新しいスキル習得支援など、様々な「立ち上げ」場面に遭遇します。
こうした場面で重要なのは、型化されたノウハウを活用することです。感情や直感に頼るのではなく、成功パターンを分析し、それを再現可能な形で実践する。失敗した場合も、その原因を分析し、次回に活かせる教訓として蓄積する。
この継続的な改善サイクルを回すことで、あなた自身が「立ち上げのプロ」として成長できます。そして、その専門性は部下からの信頼獲得や、上司からの評価向上に直結するでしょう。
型化思考が切り開く管理職としての新たな可能性
守屋実氏の「新規事業を必ず生み出す経営」が提示する「属人性を排した型化」の思想は、新規事業の枠を超えて、管理職のあらゆる業務に革命的な変化をもたらします。
個人の才能や経験に依存する非効率な状態から脱却し、再現性のある成果を継続的に生み出す。この考え方を身につけることで、部下との関係改善、プレゼンテーションの成功率向上、そして自身のキャリア発展において、確実な成果を手にできるでしょう。
重要なのは、この「型化」を単なる手法として捉えるのではなく、組織と個人の成長を促進する経営哲学として理解することです。あなたが型化思考を実践することで、チーム全体の生産性が向上し、組織の競争力強化にも貢献できます。
今こそ、「なんとなく」の管理職業務から卒業し、論理的で再現性の高い成果創出を目指す時です。本書が示す道筋を辿ることで、あなたは必ずや「結果を出し続ける管理職」として、新たなステージに進むことができるでしょう。

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