仕事や家庭で忙しい毎日を送る中で、ふと「自分にとっての幸せって何だろう」と考えることはありませんか?
40代になると、責任も重くなり、若い頃のような単純な喜びでは満足できなくなってきます。昇進や年収アップを目指してきたものの、それだけでは心が満たされない。家族との時間も大切にしたいけれど、なかなか思うようにいかない。
そんなあなたに読んでほしいのが、住野よるの「また、同じ夢を見ていた」です。この小説は、小学4年生の主人公が「幸せとは何か」という根本的な問いに向き合う物語。一見すると児童文学のようですが、実は大人こそが読むべき深いメッセージが込められています。
この記事では、なぜこの作品が多くの読者の心を掴み続けているのか、そして私たちが忘れがちな「幸せの本質」について、具体的な物語の内容とともに解説していきます。
小学生の主人公が投げかける、大人が忘れた根本的な問い
物語の主人公は、小学4年生の小柳奈ノ花です。彼女は周りの同級生を「馬鹿だ」と見下しているため、クラスで孤立しています。そんな彼女の口癖は「人生とは~のようなものね」という、どこか大人びた比喩表現。
ある日、国語の授業で「幸せとは何か?」を考える課題が出されます。奈ノ花は答えを求めて、三人の不思議な女性たちに相談することになるのです。
この設定が秀逸なのは、子供の純粋な疑問として「幸せ」を問い直している点です。私たち大人は、いつの間にか「お金があれば幸せ」「出世すれば幸せ」といった固定観念に縛られがちです。しかし奈ノ花の素朴な問いかけは、そうした思い込みを一度リセットして、本当の幸せについて考え直すきっかけを与えてくれます。
作者の住野よる氏は、漫画「クレヨンしんちゃん」から子供の目線で真実を描くことの重要性を学んだと語っています。確かに、子供だからこそ見えるものがあるのです。
三人の女性が示す、それぞれ異なる「幸せ」の形
奈ノ花が出会う三人の女性は、それぞれまったく違う「幸せ」の定義を持っています。
南さんは、リストカットを繰り返す女子高生です。両親を事故で亡くし、喧嘩別れしたことを深く後悔している彼女にとって、幸せとは「自分がここにいていいって、認めてもらえること」でした。
アバズレさんは、賢く美しい女性で「季節を売る」仕事をしています。彼女の幸せは「誰かのことを真剣に考えられること」。過去に奈ノ花のように周囲を見下し、孤立した経験を持つ彼女だからこその答えです。
おばあちゃんは、山の一軒家に住む優しい老婦人。人生の終わりにさしかかった彼女が語る幸せは「今、私は幸せだったって、言えること」でした。
この三つの答えを見ると、幸せに正解がないことがよく分かります。承認、愛情、満足感。
どれも大切な要素ですが、人によって重要度は変わるのです。
「人生は自分で書いた物語」という人生観の転換
物語の核心となるのが、南さんの言葉「人生は自分で書いた物語だ。推敲と添削、自分次第で、ハッピーエンドに書き換えられる」です。
この考え方は、私たち中間管理職世代にとって特に重要な示唆を含んでいます。40代になると、これまでの人生の選択の結果が形になって現れてきます。昇進できなかった後悔、転職のタイミングを逃した悔恨、家族との関係でうまくいかなかった部分。そうしたものに縛られがちです。
しかし南さんの言葉は、人生が固定されたものではないことを教えてくれます。今からでも「推敲と添削」は可能なのです。
奈ノ花が両親との喧嘩を乗り越えて和解を選択する過程は、まさにこの「物語の編集」の実践例。私たちも、自分の人生を主体的に捉え直し、より良い結末に向けて行動を起こすことができるはずです。
部下との関係に悩んでいるなら、コミュニケーションの取り方を変えてみる。家族との時間が足りないと感じるなら、働き方を見直してみる。そうした小さな「編集」の積み重ねが、人生の物語を豊かにしていくのです。
不完全だからこそ美しい、相互救済の人間関係
この作品で印象的なのは、登場人物たちが皆、何らかの傷や欠点を抱えていることです。南さんの自傷行為、アバズレさんの過去の自暴自棄、そして奈ノ花自身の孤立。誰一人として完璧ではありません。
しかし物語は、そうした不完全さこそが人間の美しさであることを教えてくれます。奈ノ花は南さんのアドバイスで両親との関係を修復し、南さんは奈ノ花の肯定によって生きる勇気を得る。お互いがお互いを救い合う関係性が描かれています。
職場でも同様です。完璧な上司や完璧な部下は存在しません。それぞれが異なる強みと弱みを持ち、補い合いながら成果を出していく。そこに人間関係の温かさがあるのです。
大人になった今だからこそ分かる、物語の深い意味
物語の終盤で、大人になった奈ノ花が「また、同じ夢を見ていた」と目覚める場面があります。この構造が示しているのは、人生の各段階で同じ問いに向き合い続けるということです。
20代で考えた幸せと、40代で考える幸せは違います。でも根本的な問い「自分にとっての幸せとは何か」は変わりません。経験を重ねた今だからこそ、より深く、より具体的に答えを見つけることができるのです。
住野よる氏がこの作品に「個人的に好きなものを詰め込んだ」と語っているように、商業的な成功を意識せずに書かれた純粋さが、多くの読者の心に響く理由なのかもしれません。
まとめ:あなたの人生の物語を、今から書き直してみませんか
「また、同じ夢を見ていた」は、表面的には小学生の成長物語ですが、実際は年齢を問わず読む人の心に深く刺さる普遍的な作品です。
三つの異なる幸せの定義は、私たちに選択肢があることを教えてくれます。人生を「自分で書いた物語」として捉える視点は、これからの人生をより主体的に生きるヒントを与えてくれます。そして不完全な人々の相互救済は、完璧を求めすぎる現代人に優しい気づきをもたらします。
忙しい日々の中で見失いがちな「本当の幸せ」について、静かに考えてみる時間を作ってみませんか。きっとあなたなりの答えが見つかるはずです。

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