# なぜ現在もサラ金問題が形を変えて続いているのか?『サラ金の歴史』が明かす金融の光と影
あなたは「昔のサラ金問題はもう解決した」と思っていませんか?
法改正によって高金利や暴力的な取り立てが規制され、大手消費者金融もイメージを一新して健全化したように見える現代。しかし実際には、金融の闇は形を変えて私たちの身近なところに潜んでいるのです。
SNSで横行する「ひととき金融」、109.5%という高金利が放置されている現実、そして新しいテクノロジーを悪用した個人間融資の台頭。これらの問題を理解するためには、サラ金の歴史を知ることが欠かせません。
小島庸平著『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』は、単なる過去の記録ではなく、現代社会への強烈な警鐘を鳴らす一冊です。この記事では、なぜサラ金問題が根絶されず、現代に姿を変えて継続しているのかについて、本書の核心的な洞察をお伝えします。
法規制では解決できなかった根本的な問題
多くの人が誤解していることがあります。それは「法律で規制すれば金融問題は解決する」という考え方です。
確かに貸金業法の改正により、暴力的な取り立てや異常な高金利は表面的には抑制されました。しかし本書が明らかにするのは、問題の根本が法規制の範囲外に残されているという現実です。
最も象徴的なのが金利の問題です。貸金業者には20%の上限金利が適用される一方で、業者以外の個人間融資には109.5%という驚異的な高金利が今でも合法的に認められているのです。
この法的な抜け穴が、現代の新たな金融問題の温床となっています。規制が厳しくなった正規業者を避けて、より規制の緩い個人間融資へと問題がシフトしただけというのが実態なのです。
あなたの周りでも、正規の金融機関では借りられない人が、結果的により危険な選択肢に向かってしまうケースを見たことはないでしょうか。
テクノロジーが生み出した新しい金融の闇
現代社会で最も深刻化しているのが、テクノロジーを悪用した新たな形の個人間融資です。
特に「ひととき金融」と呼ばれる問題は深刻です。これはSNSを通じて女性に金銭を貸し付け、その見返りに肉体関係を要求するという悪質な手法です。表面的には個人間の取引に見えるため、従来の法規制では対応が困難となっています。
さらに問題なのは、これらの新しい金融形態が、過去のサラ金が持っていた暴力性を、より巧妙で見つけにくい形で再現していることです。暴力的な取り立てこそありませんが、心理的・社会的な圧迫という形で被害者を追い詰めているのです。
また、信用スコアリングなどの「技術革新」も諸刃の剣です。一見すると科学的で公平に見える信用評価システムが、実際には新たな差別や排除の仕組みを生み出す可能性を本書は指摘しています。
IT業界で働くあなたなら、テクノロジーが必ずしも社会問題の解決につながらないことを実感されているのではないでしょうか。
「自助・自己責任」という日本社会の構造的問題
本書が最も重要な指摘をしているのは、日本社会に根深く存在する「自助・自己責任」という価値観が、金融問題の根本的な原因になっているという点です。
経済的に困窮した際、多くの日本人は公的な支援を受けることを恥と考え、「金を借りる」という選択肢に向かう傾向があります。この文化的背景が、常に「非制度的金融」への需要を生み続けているのです。
コロナ禍で多くの人が経済的困窮に陥った際も、公的支援制度の利用は限定的で、結果的に個人の借金で問題を解決しようとする人が多かったことを思い出してください。
この構造は、管理職として部下を持つあなたにとっても他人事ではありません。経済的に困窮した部下が、相談しやすい環境を作れているでしょうか? それとも「自分で何とかしろ」という圧力を無意識に与えていないでしょうか?
公的なセーフティネットが十分に機能せず、個人の「自己責任」に問題解決を委ねる社会構造こそが、金融の闇が形を変えて生き残り続ける土壌となっているのです。
歴史から学ぶ「見えない悲劇」への対処法
本書の書評を担当した浅木久仁子氏は、「今はまだ見えていない悲劇を、どれ程早く、気付き得るのか」という重要な問いを投げかけています。
これは単なる学術的な問いではありません。現在進行形で起きている金融問題の多くが、まだ表面化していない段階にあるということを意味しています。
過去のサラ金問題も、最初は「便利な金融サービス」として始まりました。社会問題として認識されるまでには長い時間がかかり、その間に多くの被害者が生まれたのです。
現在のSNSを使った個人間融資や、AI技術を活用した新しい金融サービスについても、同様の経過をたどる危険性があります。
重要なのは、歴史の教訓を活かして早期に問題を発見し、対策を講じることです。そのためには、表面的な技術の進歩や法制度の整備だけでなく、根本にある社会構造や文化的背景を理解する必要があります。
あなたが組織のリーダーとして、また社会の一員として、「見えない悲劇」に気づく感度を高めておくことが求められているのです。
未来への警鐘として読むべき理由
『サラ金の歴史』は過去の記録書ではありません。現代社会が直面している構造的な問題を理解するための必読書です。
本書を読むことで、あなたは以下のような洞察を得ることができます:
金融問題の本質が法規制だけでは解決できない理由を理解できるでしょう。また、テクノロジーの進歩が必ずしも社会問題の解決につながらない現実も見えてきます。
そして最も重要なのは、「自助・自己責任」という価値観が生み出すリスクについて深く考える機会を得られることです。
管理職として、また一人の社会人として、部下や同僚、家族が経済的困窮に陥った際に、どのような支援ができるのかを考えるきっかけにもなるでしょう。
現代社会では、問題が表面化してから対策を講じるのでは遅すぎます。歴史から学び、「見えない悲劇」を早期に発見し、予防することこそが私たちに求められているのです。
本書は、そのための重要な手がかりを提供してくれる一冊です。あなた自身、そしてあなたの周りの人々を守るためにも、ぜひ一度手に取ってみてください。
#NR書評猫323 小島庸平著『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』

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