# なぜ現代の組織も同じ過ちを犯すのか?『続・日本軍兵士』が暴く「精神論」の罠
あなたの職場で「気持ちがあれば何でもできる」「根性で乗り切れ」といった言葉が飛び交っていませんか?
実は、このような精神論偏重の組織運営は、80年前の日本軍でも同様に行われ、悲惨な結果を招いていました。吉田裕著『続・日本軍兵士 帝国陸海軍の現実』は、なぜ「精神力」に頼った組織が破綻するのか、その構造的な問題を鮮明に描き出しています。
本書を読むことで、現代のマネジメントにも通じる重要な教訓を得ることができるでしょう。
1. 「精神力」が科学的判断を阻害した恐怖
合理性を排除した意思決定の危険性
日本軍の最大の問題は、科学的・合理的な判断よりも精神論を優先したことでした。
本書によると、日本軍は「精神力」を過度に重視し、物資補給や兵士の生活環境といった基本的なインフラを軽視していたのです。この結果、戦病死が全死者の6割を占めるという異常事態が発生しました。
現代の組織でも同様の現象が見られます。データに基づいた意思決定よりも、上司の「勘」や「経験」が重視される場面はありませんか?
具体的な失敗事例から学ぶ
日本軍の機械化の遅れは深刻でした。米軍がジープを活用していた時代に、日本軍は馬、牛、象、そして徒歩に頼っていたのです。
これは単なる物資不足の問題ではありません。合理的な判断を精神論で覆い隠していた結果なのです。
2. 兵士の「人間性」を無視した組織の末路
基本的生活環境の軽視がもたらした悲劇
本書が明かす最も衝撃的な事実の一つは、軍艦に食事用のテーブルすらなかったという事実です。
乗員の居住性や生活環境が完全に軽視されており、兵士は人間として扱われていませんでした。これは現代の「超ブラック企業」と呼ばれる組織の体質と驚くほど類似しています。
内部のいじめと自殺率の高さ
1938年の時点で、日本の軍隊は世界で最も自殺率が高いと指摘されていました。
兵営内の「内務班」では苛烈な私的制裁(いじめ)が横行し、これが命令絶対服従の兵士育成のために黙認されていたのです。このような組織風土が、兵士の精神的な破綻を招いていました。
3. 「間口ばかりの軍隊」が示す組織の本質的問題
見栄と実力のギャップ
夏目漱石の言葉を引用して、本書は日本軍の根本的な問題を指摘しています。
国力に見合わない「一等国」としての体面を保とうとした結果、間口ばかりが立派で奥行きのない軍隊が生まれたのです。
これは現代の企業経営にも通じる教訓です。表面的な成長や拡大を追求するあまり、基盤となる人材育成やインフラ整備を軽視していませんか?
「処置」という名の人間軽視
最も深刻だったのは、自力で動けない傷病兵に対する「処置」という行為でした。これは自殺を促したり、殺害したりすることを指しており、人間の尊厳を完全に無視した行為でした。
「生きて虜囚の辱めを受けず」という思想の浸透により、このような非人道的行為が常態化していたのです。
4. 現代組織への警鐘として読むべき理由
精神論が隠蔽する構造的問題
本書が示す教訓は、精神論は往往にして構造的問題を隠蔽するということです。
「頑張れば何とかなる」という精神論によって、本来解決すべき制度的・システム的な課題が先送りされてしまうのです。
人間軽視の組織文化の危険性
日本軍の悲劇は、兵士を「人間」として扱わず、「道具」として使い捨てにしたことにあります。
現代の組織でも、従業員の健康や福祉を軽視し、短期的な成果のみを追求する傾向があります。このような組織文化は、長期的には必ず破綻を招くでしょう。
結論:歴史から学ぶ組織運営の本質
『続・日本軍兵士』が描く日本軍の実態は、単なる過去の出来事ではありません。
精神論偏重、人間軽視、見栄と実力のギャップ ー これらの問題は、現代の組織にも共通して見られる普遍的な課題なのです。
本書を読むことで、あなたは組織のリーダーとして、そして一人の人間として、何を大切にすべきかを深く考える機会を得ることでしょう。歴史の教訓を活かし、真に持続可能で人間的な組織づくりを目指していきましょう。
#NR書評猫360 吉田裕著[続・日本軍兵士 帝国陸海軍の現実」

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