あなたは部下の斬新すぎるアイデアに困ったことはありませんか?
IT業界で働く私たちは日々、イノベーションや創造的思考を求められます。しかし、時として常識を逸脱した発想が生まれ、それが思わぬ方向に暴走することも。今回ご紹介する吉野すぐる著『へんないいわけ事件簿』は、規範から逸脱した創造性の極端な例を通じて、私たちの思考の枠組みについて深く考えさせてくれる一冊です。
犯罪者たちの奇妙な言い訳から見える、人間の思考回路の不思議な仕組みを探ることで、健全な創造性とは何かを学べるはずです。
規範を逸脱した創造性とは何か
本書には122の奇妙な言い訳が収録されていますが、これらは単なる失笑を誘う事例ではありません。論理的には完全に破綻しているものの、その発想自体は極めて独創的であることに気づかされます。
「寒かったので火をつけた」という放火犯の言い訳を考えてみましょう。一般的な思考では、寒さの解決策は暖房器具の使用や厚着などが浮かびます。しかし、この犯罪者は「寒い」という感情から「火をつける」という短絡的な解決策を導き出しました。
これは規範や法律を完全に無視した思考ですが、ある意味で従来の枠組みを超えた発想とも言えるのです。私たちがプロジェクトで求められる「既存の概念にとらわれない発想」と、根本的な部分で共通点があります。
ビジネスの創造性との決定的な違い
では、犯罪者の奇妙な発想とビジネスで求められる創造性は、どこが違うのでしょうか。
最大の違いは目的と社会性にあります。ビジネスの創造的思考は、顧客満足や社会貢献を目的とし、法的・倫理的な枠組みの中で展開されます。一方、本書の事例は自己の欲求や感情を満たすためだけの、極めて個人的で身勝手な論理から生まれています。
「有名人を殴れば有名になれると思った」という言い訳も同様です。承認欲求という人間の基本的な欲求から出発していますが、社会的な因果関係を完全に無視して独自の論理を構築しています。
ITプロジェクトでも、技術的には素晴らしいアイデアでも、ユーザビリティや運用面を考慮していなければ失敗に終わります。創造性には方向性が重要だということを、これらの失敗例は教えてくれます。
負の創造性から学ぶ組織マネジメント
部下や同僚の突飛なアイデアに直面したとき、私たちはどう対応すべきでしょうか。本書の事例は、創造性が暴走する危険性を示すと同時に、適切な方向へ導くヒントも提供してくれます。
まず重要なのは、アイデアの発想力自体を否定しないことです。たとえ現実離れしていても、そこには既存の枠組みを超えようとする意欲があります。問題は、その創造性を社会的に有益な方向へ導けるかどうかです。
次に、論理的な検証プロセスの重要性です。本書の犯罪者たちは、自分の行動を自己の内部だけで完結した論理で正当化しています。チームワークでは、他者の視点を取り入れた多角的な検討が欠かせません。
最後に、目的の明確化です。なぜそのアイデアが必要なのか、誰のためになるのかを常に問い続けることで、創造性を健全な方向へ導けます。
思考の枠組みを理解する重要性
本書を読んでいると、人間の思考がいかに感情や欲望に左右されやすいかがよくわかります。これは犯罪者だけの話ではありません。私たちも日常的に、論理的でない判断を下すことがあります。
プロジェクトの企画段階で、技術的な可能性だけに注目して実現性を軽視したり、個人的な興味を優先して市場ニーズを無視したりすることはないでしょうか。
本書の奇妙な言い訳は、思考の落とし穴を極端な形で示してくれます。自分の思考パターンを客観視し、バランスの取れた判断力を養うための反面教師として活用できるでしょう。
創造性をポジティブに活かすために
規範を逸脱した創造性は、方向を間違えれば破滅的な結果を招きます。しかし、適切にコントロールされれば、革新的なソリューションを生み出す原動力となります。
重要なのは、創造的思考と論理的検証のバランスです。まず自由な発想で可能性を広げ、次に現実的な制約や社会的な意義を考慮して絞り込む。このプロセスを習慣化することで、健全な創造性を育めます。
また、多様な視点を持つメンバーとの議論も欠かせません。一人の思考には限界があり、時として盲点が生まれます。チーム全体での知恵の結集が、創造性を正しい方向へ導く鍵となるのです。
まとめ:創造性の光と影を理解し、健全な発想力を育む
『へんないいわけ事件簿』は、エンターテイメント性の高い読み物でありながら、創造的思考の危険性と可能性を同時に教えてくれる貴重な一冊です。
犯罪者たちの奇妙な発想は、規範を逸脱した創造性の極端な例として、私たちに多くの教訓を与えてくれます。創造性には方向性が重要であり、社会的な意義と論理的な検証なしには、単なる自己満足に終わってしまうということです。
私たちIT業界では、常に新しいアイデアや革新的なソリューションが求められます。本書から学べる教訓を活かし、健全で建設的な創造性を発揮していきましょう。きっと、より良いプロダクトやサービスの創造につながるはずです。

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