あなたは部下から「新しいアイデアがあります」と提案されたとき、どう反応していますか?「面白いね、検討してみよう」と言いながら、心の奥では「また現実離れした話か」と思っていませんか?
実は、多くの企業で新規事業が失敗する理由は、アイデアの質でも担当者の能力でもありません。経営トップの「覚悟」の欠如にあるのです。
IT企業の中間管理職として、部下からの提案を受ける立場にある方こそ、この事実を理解する必要があります。本記事では、ミスミで30年以上新規事業を手がけた「新規事業のプロ」守屋実氏の著書から、なぜトップの覚悟が新規事業成功の鍵なのかを解説します。
経営トップの「覚悟」とは何か?単なる意気込みではない
守屋氏が言う「覚悟」とは、感情的な意気込みではありません。全社的なコミットメントを伴う、構造的な変革への決意です。
多くの企業では「新規事業をやろう」と言いながら、既存事業と同じ評価基準で判断したり、短期的な利益を求めたりします。これでは新規事業が成功するはずがありません。
真の覚悟とは、新規事業のために既存の組織構造そのものを変える意志を持つことです。あなたが管理職として部下の提案を受ける際も、この視点が必要になります。部下のアイデアを既存の枠組みで判断するのではなく、新しい可能性を育む環境を作れるかどうかが問われているのです。
なぜ個人の才能に頼る経営は限界なのか
日本の多くの企業では、新規事業を「いつまでも素人が同じ失敗を繰り返す」非効率な状態で進めています。これは、個人の才能や閃きといった属人的な要素に依存しているからです。
あなたの部署でも、「あの人はアイデアマンだから」「彼のセンスに任せよう」といった判断をしていませんか?しかし、これでは組織として継続的に成果を出すことはできません。
守屋氏は、この問題を解決するために「型」(フレームワーク)による新規事業創出を提唱しています。「マーケットアウト」「仮説・実証・参入」といった再現可能な手法を組織に定着させることで、誰が担当しても一定水準の結果を出せるシステムを構築するのです。
「本業の汚染」から守る3つの切り離し
新規事業が失敗する最大の原因は、既存事業の論理や評価基準による「本業の汚染」です。あなたも経験があるでしょう。せっかく部下が新しいアイデアを持ってきても、「でも、これって売上に貢献するの?」「リスクが高すぎるんじゃない?」という既存事業の常識で判断してしまうことが。
守屋氏が提案する「3つの切り離し」は、この汚染を防ぐ具体的な処方箋です:
- 資金の切り離し:新規事業の予算を本業の業績から独立させる
- 意思決定の切り離し:新規事業専用の意思決定プロセスを設ける
- 評価の切り離し:立ち上げ期には赤字が当然という前提で評価基準を設定
これらは単なる組織図の変更ではありません。新規事業を育むための「聖域」を社内に構築する経営手法なのです。
部下のアイデアを活かすために管理職ができること
「でも、私は社長じゃないから組織は変えられない」と思うかもしれません。しかし、中間管理職だからこそできることがあります。
まず、部下の提案を既存の常識で即座に却下しないことです。「面白いけど難しいかな」ではなく、「どうすれば実現できるか」を一緒に考える姿勢を示しましょう。
次に、小さな実験を許可する環境を作ることです。大きな予算は確保できなくても、部下が仮説検証できる最小限のリソースを提供できるはずです。
そして何より重要なのは、あなた自身が変化への「覚悟」を示すことです。部下は上司の姿勢を敏感に察知します。あなたが新しいことに挑戦する意志を示せば、部下も安心してアイデアを提案できるようになります。
成功事例から学ぶトップダウン型イノベーション
守屋氏がミスミで手がけた成功事例は、すべて創業経営者が明確な「モノサシ」を示し、自らリスクを取って推進した結果です。経営トップが「やる」と決めて、組織全体でコミットしたからこそ成功したのです。
ラクスルの成功も同様です。社長が新規事業に対する明確な方針を示し、全社的な支援体制を構築したことが成功の要因でした。
これらの事例が示すのは、新規事業の成功は偶然ではなく、経営システムによって必然的に生み出されるということです。個人の才能に依存するのではなく、組織として継続的にイノベーションを創出する仕組みを作ることが重要なのです。
今すぐ始められる「覚悟」の第一歩
守屋氏の教えを実践するために、今日からできることがあります。
部下との1on1で必ず「新しいアイデアはない?」と聞くことから始めてください。そして、出てきたアイデアに対して「それは面白い。どうすれば検証できるか一緒に考えよう」と応えるのです。
これは小さな変化に見えますが、部下からの信頼を得る重要な第一歩です。あなたが新しいことを歓迎する姿勢を示せば、部下はより積極的にアイデアを提案するようになります。
また、自分自身も新しい取り組みに挑戦することが大切です。管理職として安全な選択ばかりしていては、部下に変化を求めることはできません。小さなことでも構いません。新しいツールを試す、異なる手法でプレゼンしてみる、といった挑戦から始めましょう。
新規事業の成功は、経営トップの覚悟から始まり、その覚悟を具現化するシステムによって実現されるものです。あなたが中間管理職として示す「覚悟」は、部下のモチベーションを高め、組織全体の変革につながる重要な要素なのです。守屋氏の教えを参考に、まずは自分の行動から変えてみてください。その小さな変化が、やがて大きなイノベーションの種となるはずです。

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