「なんだか、この人と話していると緊張してしまう…」
「上司に報告するとき、いつも言いたいことがうまく伝えられない」
「会議で発言すると、なぜか場の空気が重くなる」
こんな経験はありませんか?実は、話しにくい雰囲気を作ってしまう人には共通のパターンがあるのです。
永松茂久氏の『人は聞き方が9割』には、多くの人が無意識にやってしまっている「嫌われる聞き方」が詳しく解説されています。特に、職場でのコミュニケーションを改善したいと考えているあなたにとって、この本は相手が安心して話せる「安全な港」になるための具体的な指南書となるでしょう。
なぜ「聞き方」が職場の人間関係を左右するのか
コミュニケーションで重要なのは「話すこと」だと思われがちですが、実は「聞くこと」の方がはるかに重要です。永松氏は、人は本来「話したい生き物」であり、自分の話を聞いてもらいたいという根源的な欲求を持っていると指摘しています。
特に現代のビジネス環境では、リモートワークやオンライン会議が当たり前となり、相手の表情や反応がより重要になっています。画面越しでも、あなたの聞き方ひとつで、相手が話しやすいと感じるか、それとも話しにくいと感じるかが決まってしまうのです。
マズローの欲求5段階説でも、生理的欲求の次に重要とされるのが「安全の欲求」です。つまり、人は安心感を感じて初めて、本当に伝えたいことを話せるようになるのです。
あなたも無意識にやっている?9つの「嫌われる聞き方」
永松氏が本書で明かしている「嫌われない聞き方」の9つの禁止事項を見てみましょう。これらは、多くの人が善意でやってしまいがちな行動です。
1. 否定しない
相手の意見に対して「それは違う」と即座に反応していませんか?意見の相違は「間違い」ではなく「違い」として捉えることが大切です。
2. 自分の常識を押しつけない
「普通はこうでしょう」という正論は、時として相手を萎縮させてしまいます。正しければうまくいくというものではないのが人間関係です。
3. 話す相手と競わない
相手の話を上回る経験談や知識を披露したくなることがありますが、これは「マウンティング」として受け取られるリスクがあります。
4. 結論を焦らない
「要するに何が言いたいの?」と急かすのは禁物です。話が苦手な人には、思考をまとめる時間が必要です。
5. 答えや解決策をはじめから言わない
相手が求めているのは解決策ではなく共感かもしれません。「あなたはどうなったら嬉しい?」という質問で、相手自身が答えを見つける手助けをしましょう。
6. さえぎらない、話を変えない
話し手には物語の流れがあります。相手の脚本に沿って話を広げることが重要です。
7. 心を折るツッコミはしない
何気ないひと言が、相手にとって会話のトラウマになってしまう可能性があります。
8. 干渉しすぎない
どんなに親しい関係でも、相手のブラックボックスを尊重することが必要です。
9. 「ここだけの話」は絶対、人に言わない
信頼の基盤となる「話の墓場」になることで、相手はさらに安心感を持って話せるようになります。
「安全な港」になるための具体的なアクション
これらのNG行動を避けることで、あなたは相手にとって安心して話せる「安全な港」になることができます。では、具体的にどう行動すればよいのでしょうか?
まず重要なのは、聞く時の心の在り方です。永松氏は「聞き方は『スキル』より『メンタル』」だと述べています。テクニックよりも、相手に対する敬意と好奇心を持つことが大切なのです。
職場での実践例を挙げてみましょう:
- 部下が相談に来たとき、「でも」という言葉を使わずに最後まで聞く
- 会議で意見が対立したとき、「それは興味深い視点ですね」と一度受け止める
- オンライン会議では、意識的にうなずきや表情で反応を示す
永松氏が提唱する「魔法の傾聴」も参考になります。これは表情、うなずき、姿勢、笑い、感賛(感嘆+称賛)の5つの要素から成る実践的なフレームワークです。
職場のコミュニケーションが劇的に変わる理由
なぜこれらの聞き方を実践すると、職場のコミュニケーションが改善するのでしょうか?それは、安心感を与える人のところに、人は自然と集まるからです。
永松氏は実際の体験として、セミナーの最前列で「魔法の傾聴」を実践していたところ、有力な講演者たちから絶大な好意を得たというエピソードを紹介しています。特別な才能は必要ありません。ただ、相手を肯定し、安心感を与える聞き方をするだけで、周りの人との関係性が大きく変わるのです。
現代は「表現欲求が高まる時代」でもあります。SNSの普及により、多くの人が「話したい」「理解されたい」という気持ちを強く持っています。そんな中で、真摯に話を聞いてくれる人の価値は非常に高いのです。
今日から始められる「聞き方改革」
この本を読んで最も印象的だったのは、聞く力は話す力よりも習得が容易だということです。流暢に話すためには膨大な語彙力と訓練が必要ですが、効果的に聞くために必要な言葉は「へー」「はー」「そうなんですか」「なるほど」など、100個もあれば十分だと永松氏は指摘しています。
まずは身近な人から始めてみてください。今夜、家族や親しい友人の話をスマートフォンを置いて、全身全霊で聞くことから実践してみましょう。9つのNG行動を意識的に避け、相手の感情に焦点を当てて聞くのです。
そして職場では、「そうだよね、わかるよ」という共感の言葉を意識的に使ってみてください。この一言が、相手の心の扉を開く鍵となります。
『人は聞き方が9割』は、単なるコミュニケーション術の本ではありません。人の孤独を照らす一筋の光になる方法を教えてくれる実用書です。特に、職場での人間関係に悩むあなたにとって、この本は必読の一冊となるでしょう。

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