引きこもりYouTuberが教えてくれた「本当の正義」とは?染井為人『正義の申し子』が描く現代社

あなたは普段、SNSで炎上している投稿を見かけたとき、どんな気持ちになりますか?正義感に燃えて批判に参加したくなる、それともどこか違和感を覚えるでしょうか。現代社会では、誰もが簡単に「正義」を振りかざせる時代になりました。しかし、その「正義」は本当に正しいものなのでしょうか。

染井為人著『正義の申し子』は、引きこもりのYouTuberと悪徳請求業者という異色の組み合わせを通じて、現代における「正義」の本質を鋭く問いかける作品です。一見すると対立する二人の青年が、最終的に辿り着く「本当の正義」とは何か。この物語は、日々のストレスや人間関係に悩むあなたに、きっと新しい視点を与えてくれるでしょう。

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引きこもりYouTuberと悪徳業者の奇妙な関係

物語の主人公は、現実世界では引きこもりの19歳青年・純です。彼は家族関係に悩み、現実では自信を持てない毎日を送っています。しかし、タイガーマスクを被って「ジョン」としてYouTube活動をするとき、彼は別人のように変貌します。

ジョンの正体は、50万人以上のフォロワーを持つ人気YouTuber。彼が得意とするのは、悪徳請求業者に電話をかけて相手をおちょくる動画です。特に関西弁の男・鉄平とのやりとりは爆発的な人気を博し、大きな収入源となっています。

一方の鉄平は21歳の元暴走族で、現在は架空請求業者として働いています。知性には欠けるものの身体能力に自信を持つ彼は、ジョンからの嫌がらせに激怒し、リアルで対決しようと動き出します。

この設定だけ聞くと単純な善悪の対立に思えますが、物語が進むにつれて、どちらも完全な善人でも悪人でもない複雑な人物であることが明らかになります。

SNS時代が生み出す新しい正義感

現代社会では、小学生のなりたい職業上位にYouTuberが挙がるほど、オンラインでの活動が身近になりました。しかし、この作品はSNSの光の裏に潜む闇を鋭く描き出します。

ジョンが体現する「告発系YouTuber」という存在は、現代の承認欲求と正義感の複雑な関係を象徴しています。悪徳業者を晒すという行為は一見正義に見えますが、その動機には再生数やフォロワー数への執着も隠れています。

純がマスクを被ることで人格が変わる描写は、現代人がオンラインとオフラインで異なる自己を演じる現象を極端な形で表現しています。これは多くの人が経験する、デジタル空間での自己表現の難しさと共通するものです。

物語は、オンラインでの無責任な行動が現実世界にどのような影響を及ぼすかを警告し、デジタル時代の倫理観について深く考える機会を提供してくれます。

憎めない悪役が教えてくれること

この作品の大きな魅力の一つは、登場人物たちの人間的な魅力です。特に鉄平は、悪徳業者でありながら多くの読者が最終的にファンになってしまうキャラクターとして描かれています。

鉄平の魅力は、その不器用で素直になれない性格にあります。悪いことをしているという自覚がありながらも、根っからの悪人ではない彼の姿は、人間の複雑さと可能性を示しています。

ジョンと鉄平の関係も、単純な敵対関係から始まって、次第に奇妙なバディ関係へと発展していきます。二人の掛け合いは「漫才のように面白い」と評され、コメディ映画を見ているような軽快さがあります。

この人間関係の変化は、相手の立場や事情を理解することの重要性を教えてくれます。最初は互いを敵視していた二人が、困難を共に乗り越える中で理解を深めていく過程は、現実の人間関係にも通じる普遍的なテーマです。

読後に残る人間らしさと希望のメッセージ

一見するとダークでカオスな物語に見える『正義の申し子』ですが、実は最終的に深い希望と温かさに満ちたメッセージを読者に届けます。

物語の核心にあるのは「献身」という概念です。作品は最終的に、告発や制裁ではなく、目の前で困っている人を助けることこそが「本当の正義」であると提示します。これは子供のヒーロー「アンパンマン」の行動に象徴される、ごく当たり前だけれど忘れがちな人間の善性です。

純が現実世界で抱える怒りや不満が「ジョン」という別人格を生み出したという解釈は、現代人が抱える内的な葛藤を表現しています。しかし、物語は彼らを単純に糾弾するのではなく、人間の成長と変化の可能性を信じる姿勢を示します。

登場人物たちの不器用さや葛藤、そして彼らが困難を通じて成長していく姿は、読者に深い共感を呼び起こします。特に、二人が最終的に辿る予想外の結末は、人間関係の可能性と成長の尊さを教えてくれます。

多くの読者が「希望のある物語」として受け取り、読後にほのぼのとした気持ちになったと評価していることからも、この作品が持つ温かいメッセージが伝わってきます。

現代社会を生きる私たちへの問いかけ

『正義の申し子』は単なるエンターテイメント作品を超えて、現代社会を生きる私たちへの深い問いかけを含んでいます。

物語は「正義とは人間の数だけある」という認識のもと、それぞれの登場人物の主観的な正義を描きます。これは、日常生活で私たちが直面する価値観の違いや、多様性を受け入れることの重要性を示唆しています。

また、SNS時代における承認欲求の肥大化や、オンラインでの匿名性が生み出す問題についても、リアルで切実な警鐘を鳴らしています。同時に、デジタル技術が人々をつなぐ力も持っていることを示し、技術をどう使うかは結局のところ人間次第であることを教えてくれます。

疾走感のある展開とユーモラスな描写の中に、深い人間洞察と社会批評が込められているこの作品は、読者が娯楽を通じて自然と社会的なテーマに向き合える構造になっています。

結論

染井為人著『正義の申し子』は、現代社会における「正義」の多面性を探りながら、最終的に人間の普遍的な善性と成長の可能性を信じる、希望に満ちた物語です。

引きこもりYouTuberと悪徳請求業者という異色の設定から始まる物語は、読者に予測不能な展開とユーモアを提供しつつ、深い人間ドラマと社会批評を織り交ぜています。登場人物たちの人間らしい魅力と成長、そして「献身」という真の正義の概念は、読後に温かい感動と前向きな気持ちを残してくれます。

日々のストレスや人間関係に悩む現代人にとって、この作品は自己と社会、そして他者との関係について深く考える機会を提供してくれるでしょう。痛快なエンターテイメントとして楽しみながら、人生の本質的な価値について考えさせてくれる、まさに現代に必要な一冊です。

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NR書評猫389 染井 為人 正義の申し子

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