不動産投資の「地雷物件」を見抜く建築士の目~なぜこの本は他の投資本と違うのか?

不動産投資に興味があるものの、「高利回りの罠」に引っかかるのが怖いと感じていませんか?

表面利回り10%の魅力的な物件を購入したものの、シロアリ被害や建物の傾きといった想定外の修繕費で収益が吹き飛んでしまう。そんな失敗談を聞いて、一歩踏み出せずにいる方も多いでしょう。

今回ご紹介する『一級建築士が教える 買ってはいけない収益物件の見分け方』は、そうした不安を解消してくれる一冊です。この本は、利回りや立地だけでは見抜けない建物の致命的な欠陥を、プロの建築士の視点から体系的に解説しています。

本記事では、なぜこの本が他の不動産投資本と一線を画すのか、著者の事業戦略と絡めながら詳しく解説していきます。

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この本が持つ「戦略的ニッチ」なポジション

不動産投資本の中での独自の立ち位置

一般的な不動産投資本は、利回り計算や立地選定、融資戦略といった「お金を増やす方法」に焦点を当てています。しかし、本書は全く違うアプローチを取っています。

この本の核心は「買ってはいけない物件を避ける」こと。つまり、負けない投資のための専門書なのです。

著者の大谷義武氏は、武蔵コーポレーション株式会社の代表取締役として、不動産の売買・仲介および賃貸管理を手がける実業家です。彼の他の著作を見ると、『年収1000万円から始める「アパート事業」による資産形成入門』や『利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50』など、いずれも物件購入後の運営や収益最大化をテーマにしています。

なぜ「建築的調査」に特化したのか?

ここで重要なのは、本書が意図的に「購入前の段階」に焦点を絞っている点です。大谷氏の事業戦略を理解すると、この選択の賢さが見えてきます。

武蔵コーポレーションは「プライベートアセットマネジメント」を標榜し、不動産投資の全工程をワンストップでサポートしています。つまり、物件選定から購入後の管理まで、包括的なサービスを提供する会社なのです。

本書は、この広範なサービスの中で最も重要な「入り口」の部分を担っています。いくら優れた管理ノウハウがあっても、最初に致命的な欠陥を持つ物件を選んでしまえば、すべてが台無しになってしまうからです。

一級建築士との共著が生み出す専門性

70項目を超える具体的なチェックリスト

共著者の小林孝弘氏は一級建築士として、本書で建物の物理的健全性を評価する専門知識を提供しています。これが本書を他の投資本と決定的に差別化している要素です。

本書では、以下のような専門的な検査項目が具体的に解説されています:

  • 建物の傾き測定:デジタル水平器を用いて6/1000以上の勾配は不合格
  • 新耐震基準の確認:1981年6月以降の基準に準拠しているかの判定
  • シロアリ被害の見極め:目視では分からない構造体への影響評価
  • 建築法違反のチェック:未申請の増改築や建ぺい率オーバーの発見方法

「見える化」された専門知識の価値

通常、こうした建築的な問題は専門家でなければ判断が困難です。しかし本書は、素人でも理解できる形で専門知識を体系化しています。

例えば、植栽が茂りすぎている、浄化槽の蓋が沈下している、鳩被害が放置されているといった管理不届きのサインまで、具体的に列挙されています。これらは一見些細に見えますが、物件の将来的なリスクを予測する重要な指標なのです。

著者の事業戦略と本書の関係性

信頼構築ツールとしての書籍

本書を単体で見れば優れた専門書ですが、著者の事業戦略の文脈で理解すると、さらに深い意味が見えてきます。

武蔵コーポレーションは「年間平均入居率97%以上」を維持する賃貸管理会社でもあります。実際に、入居率50%だった物件を3ヶ月で100%に改善させた実績もあります。

つまり、本書は潜在顧客に対する信頼構築ツールとしても機能しているのです。「この会社は建築的な専門知識も持っているから安心だ」という印象を与える効果があります。

サービス全体の入り口としての設計

興味深いのは、本書が意図的に不完全に設計されている点です。建物の評価方法は詳しく説明されていますが、融資戦略や購入後の管理方法については深く触れられていません。

これは欠点ではなく、戦略的な選択です。読者は本書を読むことで建築的リスクの重要性を理解しますが、投資を成功させるには他の知識や専門サービスが必要だと気づくように設計されています。

他の投資本との決定的な違い

「勝つ方法」ではなく「負けない方法」

多くの不動産投資本は「こうすれば儲かる」という成功法則を説いています。しかし本書は「こんな物件は買うな」というリスク回避に徹底的にフォーカスしています。

これは投資の世界では非常に重要な視点です。どんなに優れた戦略も、致命的な失敗を一度犯してしまえば取り返しがつかないからです。

実践的な現場知識の体系化

本書のもう一つの特徴は、実際の取引現場で培われた知識が体系化されている点です。理論的な解説だけでなく、具体的な数値基準や判定方法が示されています。

例えば、和式トイレから洋式への交換費用、バランス釜から給湯器への変更コストなど、実際にかかる修繕費用が具体的に記載されています。これにより、読者は物件の真の収益性を正確に計算できるようになります。

この本を最大限活用する方法

3段階の活用戦略

本書の価値を最大化するには、以下の3段階で活用することをおすすめします:

第一段階では、本書を通読して「建築的調査」の重要性を理解します。多くの投資家が見落としている重要な観点があることを認識するだけでも、大きな価値があります。

第二段階では、実際の物件見学時に本書のチェックリストを活用します。スマートフォンに要点をメモしておき、現地で確認しながら物件を評価する習慣をつけましょう。

第三段階では、本書で学んだ建築的調査を、他の投資判断要素と組み合わせます。利回り計算、融資戦略、賃貸需要の分析などと合わせて、総合的な投資判断を行うのです。

他の専門知識との組み合わせの重要性

本書は不動産投資に必要な知識の「一部」を深掘りしたものです。投資を成功させるには、税務、融資、管理といった他の専門分野の知識も必要になります。

しかし、どんなに他の分野に精通していても、最初の物件選定で失敗してしまえばすべてが無駄になってしまいます。その意味で、本書が扱う「リスク回避」の知識は、投資成功の絶対的な前提条件と言えるでしょう。

まとめ:なぜこの本は必読なのか

『一級建築士が教える 買ってはいけない収益物件の見分け方』は、不動産投資における「負けない戦略」を提供する貴重な一冊です。

この本の最大の価値は、他の投資本では学べない専門知識を、素人にも分かりやすい形で体系化している点にあります。建物の傾き、シロアリ被害、建築法違反といった問題は、発見が遅れれば数百万円単位の損失につながる可能性があります。

また、著者の事業戦略を理解することで、なぜこの本が「建築的調査」に特化しているのかも納得できるはずです。これは単なる専門書ではなく、実践的なリスクマネジメントツールとして設計されているのです。

不動産投資を検討している方、特に利回りや立地だけでなく物件の本質的な価値とリスクを深く理解したい方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

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NR書評猫1052 大谷 義武、 小林 孝弘 一級建築士が教える 買ってはいけない収益物件の見分け方

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