経営者の利他の精神と従業員の社会保険料負担軽減策


経営とは確かに「誰かの役に立って対価をもらう」という利他の精神が根底にある活動です。経営者として従業員の社会保険料負担を心配されるお気持ちは、まさにその利他の精神の表れといえるでしょう。

経営における利他の精神の意義

経営の本質としての利他の心

経営の神様と呼ばれた稲盛和夫氏は、「利他の心」を経営理念の中核に据えました。「利他の経営」とは、自分のことだけを考えるのではなく、「自分が豊かになりたいと思うならば、周囲も豊かにするように考え、会社を経営する」ということです。

零細企業から始まった京セラが、半世紀以上にわたってただの一度も赤字に陥ることなく急成長を遂げたのは、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という利他の心に基づいた経営理念のおかげでした。

従業員の幸福を追求する意味

現代の企業経営において、従業員の社会的価値創造を支援することの重要性が高まっています。従業員自身が自分事として捉え、自ら取り組むことができる環境づくりが、企業の持続的な成長につながります。

社会保険料の現状と負担の実態

社会保険料の構造と企業負担

現在の社会保険料は、企業にとって大きな負担となっています。社会保険料の会社負担割合は給与の約15〜16%に達しており、具体的には以下のような内訳になります:

  • 健康保険料:労使折半で各4.95%
  • 厚生年金保険料:労使折半で各9.15%
  • 介護保険料(40歳以上):労使折半で各0.865%
  • 雇用保険料:企業負担0.6%(一般事業)
  • 労災保険料:企業が全額負担
  • 子ども・子育て拠出金:企業が全額負担0.34%

具体的な負担額の例

月収30万円の従業員を雇用する場合、企業の年間負担は約51万9,480円、月収50万円の場合は約91万9,800円に及びます。従業員50人の中小企業であれば、年間数千万円の社会保険料負担が発生することになります。

2025年以降の負担増加

2025年には社会保険料のさらなる値上げが予想されています。健康保険料の平均保険料率は現在の10%から10.5%程度まで上昇し、厚生年金保険料の標準報酬月額上限も65万円から75万円に引き上げられる見通しです。

社会保険料負担軽減の具体的な方法

合法的な削減方法

中小企業が実施できる社会保険料削減方法には以下があります:

算定基礎期間の調整

  • 4月〜6月の残業時間を減らす
  • 昇給を7月以降に実施する
  • この期間の給与額が年間の社会保険料を決定するため効果的です

給与構造の見直し

  • 出張手当の導入(実費弁償として社会保険料の対象外)
  • 非課税手当や福利厚生の充実
  • 給与と賞与のバランス調整

退職金制度の活用

  • 賞与の一部を退職金に回す(退職金には社会保険料がかからない)
  • 中小企業退職金共済制度の活用

選択制企業型確定拠出年金の導入

最も効果的な方法の一つが、選択制企業型確定拠出年金の導入です。

仕組みとメリット

選択制企業型確定拠出年金では、従業員が給与の一部を拠出することで、その分が社会保険料の算定対象から除外されます。

具体例として、月給30万円の従業員が毎月1万5,000円を拠出した場合:

  • 社会保険料:43,254円→40,377円(月額2,868円削減)
  • 企業の年間負担軽減:約34,416円

税務上のメリット

掛金は所得税・住民税の課税対象から除外され、年間約42,000円の負担軽減効果があります。従業員にとっても企業にとってもメリットがある制度です。

導入時の注意点

  • 導入・運営コストが発生する
  • 従業員への投資教育が必要
  • 60歳まで引き出せないため流動性が低い
  • 将来の厚生年金受給額が若干減る可能性

政府の支援策

2026年10月から3年間の時限措置として、パート従業員の社会保険料を企業が肩代わりした場合、その8割を政府が還付する制度の導入が検討されています。従業員50人以下の企業が対象となる予定です。

社会保険料削減時の注意点とリスク

従業員へのデメリット

社会保険料を削減すると、従業員の将来の年金受給額が減少する可能性があります。企業として従業員の老後生活にも配慮した制度設計が重要です。

制度変更のリスク

2024年の厚生労働省審議会では、役員報酬を極端に低く設定して社会保険料を圧縮するスキームの見直しが議論されています。今後、一部の節税手法が使えなくなる可能性があります。

経営者としての取り組み方針

バランスの取れたアプローチ

社会保険料の負担軽減を図りつつ、従業員の福利厚生と将来の保障も充実させるバランスの取れたアプローチが重要です。単なるコスト削減ではなく、従業員の満足度向上と企業の競争力強化を両立させる戦略的な取り組みが求められます。

財務改善との連携

人件費の最適化には、バックオフィス業務の効率化や社内規定の整備など、総合的な財務改善が必要です。その効果を人材投資に回すことで、従業員のモチベーション向上と企業の成長を実現できます。

助成金・補助金の活用

人材投資や制度導入に関する各種助成金・補助金の活用も検討しましょう。これらの制度を適切に利用することで、従業員の処遇改善と企業の負担軽減を両立できます。

まとめ

経営者として従業員の社会保険料負担を心配する気持ちは、まさに利他の精神の表れです。選択制企業型確定拠出年金の導入を中心とした複合的なアプローチにより、従業員の負担軽減と企業のコスト削減を両立することが可能です。ただし、制度導入にあたっては従業員の将来保障も考慮し、バランスの取れた福利厚生制度の構築を心がけることが大切です。

参考情報


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