あなたは職場での雑談を「時間の無駄」だと思っていませんか?実は、世界トップクラスのビジネスパーソンは、雑談を戦略的なツールとして活用しているのです。
特に注目すべきは、自己開示とエンパシー(共感)の力です。この2つのスキルを身につけることで、単なる世間話が、深い信頼関係と具体的な成果を生み出す強力な武器に変わります。
元Google人材育成統括部長のピョートル・フェリクス・グジバチ氏が著した『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』から、人間関係と成果を両立させる雑談術をご紹介します。
自己開示が生む信頼関係の魔法
自己開示とは、自分の趣味や価値観を相手に率直に伝えることです。多くの日本人は「プライベートは仕事に持ち込まない」と考えがちですが、実はこれこそが雑談を活用する最初のステップなのです。
例えば、会議前の何気ない時間に「実は昨日、子どもと一緒に料理を作ったんです。思った以上に集中力が必要で、仕事と似ているなと感じました」と話してみてください。この一言で、相手はあなたを「家族思いの人」「集中力のある人」として認識し、親しみやすさを感じるようになります。
自己開示の効果は相手がリラックスして話せる雰囲気を作ることにあります。人は自分をさらけ出してくれる相手に対して、同じように心を開きたくなるものです。この心理的な reciprocity(相互性)が、深い信頼関係の土台となるのです。
エンパシーで相手の心に寄り添う技術
エンパシー(共感)は、相手の感情や考えを理解し、適切に反応する能力です。単に「大変ですね」と言うのではなく、相手の状況を深く理解しようとする姿勢が重要になります。
具体的には、同僚が「プロジェクトが思うように進まなくて困っている」と話した時、「それは大変でしたね。どんな工夫をされたんですか?」と返すのです。この質問には2つの要素が含まれています。まず、相手の苦労を認める共感の気持ち。そして、相手の努力や知恵を尊重する建設的な関心です。
このような対話を続けることで、相手は「この人は私のことを理解してくれる」「私の意見を大切にしてくれる」と感じるようになります。信頼されることで、相手からより重要な情報や本音を聞き出せるようになり、結果として仕事がスムーズに進むのです。
人間関係と成果を同時に手に入れる実践法
自己開示とエンパシーを組み合わせることで、温かい人間関係と具体的なビジネス成果を同時に実現できます。これが本書で最も重要なポイントです。
営業シーンを例に考えてみましょう。クライアントとの商談前に、まず自分の失敗経験を話します。「実は以前、似たようなプロジェクトで大きな見落としがあり、チーム全体に迷惑をかけたことがあるんです」。この自己開示により、相手は「正直な人だ」「完璧主義者ではなく、相談しやすそうだ」と感じます。
次に、相手の課題について「それは本当に難しい状況ですね。どのような点が最も気になっていらっしゃいますか?」とエンパシーを示した質問を投げかけます。相手は理解してもらえていると感じ、本当の課題や不安を打ち明けてくれるでしょう。
この情報こそが、最適な提案を作るための貴重な材料となります。表面的な要望ではなく、相手の本音を理解することで、真に価値のあるソリューションを提供できるのです。
日本の職場文化でも活用できる具体的な方法
「欧米的なアプローチは日本では難しい」と感じる方もいるかもしれません。しかし、日本の文化に合わせた形で自己開示とエンパシーを活用することは十分可能です。
例えば、チームミーティングの開始時に「今朝は電車が遅れて、久しぶりに焦りました。みなさんは通勤で何かハプニングはありませんでしたか?」と話しかけてみてください。これは自然な自己開示であり、相手の状況にも関心を示すエンパシーの表現です。
また、部下から相談を受けた際には「君がそう感じるのも当然だと思うよ。私も若い頃、同じような経験をしたから」と共感を示した後、「どういう方向で解決したいと考えているんだい?」と相手の考えを尊重する質問を加えます。
これらの小さな積み重ねが、チーム全体の風通しを良くし、メンバーの主体性を引き出す結果につながるのです。
リモートワーク時代にこそ必要なスキル
コロナ禍以降、リモートワークが普及し、偶発的な雑談の機会が激減しました。だからこそ、意図的に雑談の時間を設計し、自己開示とエンパシーを活用することの価値が高まっています。
オンライン会議の冒頭5分間を「チェックイン」の時間として活用してみてください。「今週は在宅勤務で集中できたのですが、たまに孤独感も感じます。みなさんはいかがですか?」このような自己開示から始めることで、画面越しでも温かいコミュニケーションが生まれます。
画面越しでは表情が読み取りにくいからこそ、言葉による共感表現がより重要になります。「画面越しでも、○○さんの頑張りが伝わってきます」「そのアイデア、とても興味深いですね。もう少し詳しく聞かせてください」といった具体的な共感の言葉を意識的に使いましょう。
成果につながる雑談の新しい基準
本書が教えてくれる最も重要な教訓は、雑談を「無駄話」から「戦略的投資」へと発想転換することです。自己開示とエンパシーは、この投資を確実にリターンに変える具体的な手法なのです。
明日からの雑談では、天気の話の代わりに、自分の小さな体験や気づきをシェアしてみてください。そして、相手の話には必ず「それは○○だったでしょうね」という共感の言葉と「どのように感じられましたか?」という深掘りの質問を組み合わせてみてください。
この習慣を続けることで、あなたの周りには自然と信頼し合える人間関係が築かれ、仕事の成果も向上していくはずです。雑談という日常的な行為に、戦略的な意図を込めることで、キャリア全体が豊かになる可能性を秘めているのです。
#NR書評猫623 ピョートル・フェリクス・グジバチ 世界の一流は「雑談で何を話しているのか

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