あなたは部下の若手社員の行動に困惑していませんか?昇進にも給与アップにもあまり興味を示さず、「最近の若者はやる気がない」と感じている管理職の方も多いでしょう。しかし、その原因は彼らの怠惰さではなく、時代が生み出した根本的な価値観の違いにあるのです。
尾原和啓著『モチベーション革命』は、現代の若者を「乾けない世代」という新しい概念で説明し、彼らのモチベーションを理解するための画期的な視点を提供しています。この記事を読めば、部下との接し方が劇的に変わり、チーム全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。
「乾いている世代」と「乾けない世代」の決定的な違い
戦後復興期から高度経済成長期を経験した40代以上の私たちは、物質的な豊かさへの強い渇望を原動力として働いてきました。家や車、昇進といった「達成」と、それによって得られる「快楽」が明確なモチベーションの源泉だったのです。
しかし、現在の30代以下の世代は異なります。彼らは生まれたときから社会のインフラや物質的な豊かさがほぼ満たされた環境で育っているため、上の世代が経験したような「埋めるべき空白」や「渇望」が存在しないのです。
この世代間のギャップは、単なる気質の違いではありません。時代がもたらした生存戦略の変化として捉える必要があります。物質的な獲得競争が生存の鍵だった時代から、情報と物が飽和した現代では、より持続可能な内的充足を追求することが新しい「生き残り」の戦略となっているのです。
5つの幸せ要素から見る価値観のシフト
心理学者マーティン・セリグマンが提唱した人間の幸福の5つの要素「達成」「快楽」「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」を使って、世代間の違いを分析すると興味深い事実が見えてきます。
乾いている世代(40代以上)が重視するのは:
- 達成:昇進、業績向上、目標達成
- 快楽:報酬、地位、物質的満足
一方、乾けない世代(30代以下)が価値を見出すのは:
- 意味合い:仕事の社会的意義、使命感
- 良好な人間関係:チームワーク、職場の人間関係
- 没頭:好きなことに集中できる環境
この違いを理解せずに、従来の昇進や給与というインセンティブだけで若手のモチベーションを上げようとしても、思うような結果は得られません。
マネジメントの新常識:価値観に合わせたアプローチ
では、具体的にどのように接すれば良いのでしょうか。例えば、ある若手社員が昇進にあまり熱心でない場合を考えてみましょう。
従来のアプローチ:
「向上心がない」と判断し、昇進のメリットや給与アップを強調する
新しいアプローチ:
その社員が仕事に「意味合い」や「良好な人間関係」を求めている可能性を考慮し、仕事の社会的意義やチームの連携の楽しさを強調する
実際に私の部下にも、プロジェクトの成果よりもチームメンバーとの協力プロセスにより大きな満足を感じる若手がいます。彼には単に売上目標を伝えるのではなく、「この仕事がお客様にどう役立つか」「チーム一丸となって取り組む意義」を説明することで、格段にモチベーションが向上しました。
「偏愛」と「没頭」が生み出す新しい価値
AIが多くの定型業務を代替していく時代において、人間が持つべき価値は何でしょうか。本書は「偏愛」と「没頭」という概念で、その答えを示しています。
これは、単純な効率性や生産性を追求するのではなく、個人的な「好き」や「こだわり」を深く掘り下げることが独自の価値を生み出す源泉となるという考え方です。
例えば、仕事中に好きな音楽を聴き、そのプレイリストをSNSで共有していた社員がいたとします。旧来の価値観では「仕事に集中していない」と評価されがちでしたが、そのプレイリストが多くの共感を呼び、結果的に会社のブランディングに貢献する可能性もあるのです。
このような一見非効率な「没頭」や「偏愛」の中にこそ、未来の価値が眠っていると本書は示唆しています。
実践:チームマネジメントを変える3つのステップ
乾けない世代の部下との関係を改善するための具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:価値観の把握
定期的な1on1ミーティングで、部下が仕事に何を求めているかを聞き出しましょう。昇進や給与よりも、社会貢献や人間関係を重視している可能性があります。
ステップ2:仕事の意義の共有
プロジェクトを説明する際は、売上目標だけでなく「この仕事が社会にどう貢献するか」「チームでやり遂げることの意味」を必ず伝えるようにしましょう。
ステップ3:個人の「偏愛」の活用
部下の個人的な興味や得意分野を業務に活かせる機会がないか、積極的に探してみてください。それが新しいアイデアや改善案につながることもあります。
これらのアプローチは、従来の管理手法と比べて時間がかかるかもしれません。しかし、一度部下の価値観を理解できれば、長期的に安定したモチベーションを維持してもらえるはずです。
世代間ギャップを武器に変える
「乾けない世代」という概念は、現代の若者の価値観を単なる批判ではなく、時代の必然として理解するための強力なツールです。彼らの行動を非難するのではなく、その背景にある価値観のシフトを理解することで、マネジメントの質は格段に向上します。
物質的な豊かさを追求してきた私たち「乾いている世代」と、内面的な充足を重視する「乾けない世代」。この違いを理解し、それぞれの強みを活かすことができれば、これまでにない創造的なチームを作ることが可能になるでしょう。
明日からの部下との接し方を変えるきっかけとして、ぜひ本書を手に取ってみてください。あなたのマネジメントスタイルに、きっと新しい視点をもたらしてくれるはずです。
#NR書評猫532 尾原和啓 モチベーション革命

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