会議の報告書を書こうとして真っ白なパソコン画面の前で固まってしまった経験はありませんか?部下に送るメールの文面が思い浮かばず、何時間も悩んだことはありませんか?実は、多くのビジネスパーソンが抱える「書けない」という悩みには、明確なパターンと解決策が存在するのです。さわらぎ寛子氏の著書『自分の言葉で書く』は、そんなあなたの悩みを5つのタイプに分類し、それぞれに具体的な処方箋を提示してくれます。
あなたの「書けない」はどのタイプ?5つのパターンを診断する
文章が書けないという悩みは人それぞれ異なります。本書では、書けない原因を5つのパターンに分類し、それぞれに特化した解決策を提示しています。まずは自分がどのタイプに当てはまるかを確認してみましょう。
1つ目のタイプは「何を書けばいいかわからない」という状態です。会議の報告書を書こうとしても、何から書き始めればいいのか見当もつかない。企画書の冒頭で手が止まってしまう。こうした悩みを抱える方は意外と多いものです。
2つ目は「書きたいことが多くてまとまらない」というタイプです。頭の中にはたくさんのアイデアがあるのに、それを整理できずに文章が散漫になってしまう。結果として何を伝えたいのか分からない文章になってしまいます。
3つ目は「思いや考えを言葉にできない」という状態です。自分の中では明確な意見や感情があるのに、それをうまく言語化できない。この状態は特にもどかしく、コミュニケーションの障害になりがちです。
4つ目は「書いてもこれでいいのか判断できない」というタイプです。一応文章は書けるものの、自信が持てない。上司に提出する前に何度も読み返し、結局提出期限ギリギリになってしまう方はこのタイプかもしれません。
5つ目は「相手に伝わっている気がしない」という悩みです。書いた文章を読んだ相手の反応が薄かったり、意図と違う受け取られ方をしたりして、コミュニケーションがうまくいかない状態です。
タイプ1の処方箋:3つの質問で書くべきことを明確にする
何を書けばいいかわからないという悩みに対して、本書は非常にシンプルで実践的な解決策を提示しています。それは「誰に」「どんな気持ちになって」「どんな行動をしてほしいか」という3つの質問に答えることです。
例えば、部下への業務改善の提案メールを書く場合を考えてみましょう。「誰に」は担当部署の山田さん、「どんな気持ちになって」は前向きに受け止めて改善に協力したいと思ってほしい、「どんな行動をしてほしいか」は来週の会議までに現状の課題を整理してきてほしい、と具体化できます。
この3つの要素を明確にすることで、文章の方向性が定まり、何を書くべきかが自然と見えてくるのです。漠然と「報告書を書かなければ」と思っているよりも、はるかに書きやすくなるでしょう。
読み手の顔を思い浮かべながら、その人にどう感じてもらい、何をしてもらいたいのかを考える。この視点こそが、書くことの本質なのです。
タイプ2の処方箋:あえて「書かないこと」を決める勇気
書きたいことが多すぎてまとまらないという悩みは、一見贅沢な悩みに聞こえるかもしれません。しかし実際には、情報過多によって読み手に何も伝わらないという深刻な問題を引き起こします。
本書が提案する解決策は、意図的に「書かないこと」を決定するという逆転の発想です。すべてを詰め込もうとするのではなく、今回の文章で本当に伝えるべきことを1つか2つに絞り込む。そうすることで、メッセージの焦点が鋭くなり、読み手の心に届きやすくなります。
企画書を書く際、調査した情報をすべて盛り込みたくなる気持ちは分かります。しかし、読み手である上司が本当に知りたいのは、膨大なデータではなく、そこから導き出された結論と提案です。補足情報は資料として別添にし、本文では核心部分だけを簡潔に述べる。この割り切りが、説得力のある文章を生み出します。
削ることは足すことよりも難しい作業です。しかし、その勇気を持つことで、あなたの文章は格段に読みやすく、伝わりやすくなるでしょう。
タイプ3の処方箋:言語化の入口を見つける2つのテクニック
思いや考えを言葉にできないという悩みは、多くのビジネスパーソンが抱える根深い問題です。特に管理職として部下とのコミュニケーションが増えると、自分の考えを的確に言語化する能力の重要性を痛感する場面が増えるでしょう。
本書では、この難題に対して具体的な2つのアプローチを示しています。1つ目は「うまく言葉にできないんですけど」と前置きしてから話してみることです。完璧な表現を求めずに、とにかく口に出してみる。そのプロセスで徐々に言葉が形になっていくのです。
2つ目は「何が一番」か、「なぜ」そう思うのかを自問自答することです。表層的な思考の奥にある真意を掘り起こす作業が、言語化への道を開きます。例えば、新しいプロジェクトについて漠然と「違和感がある」と感じている場合、「何が一番気になるのか」と自問してみると、「スケジュールが厳しすぎる」という具体的な懸念が浮かび上がってきます。
さらに「なぜスケジュールが気になるのか」と掘り下げると、「過去に似たプロジェクトで品質問題が起きたから」という経験に基づいた理由が明確になります。この段階まで来れば、建設的な提案として文章化することが可能になります。
タイプ4と5の処方箋:他者の力を借りて完成度を高める
書いても自信が持てない、相手に伝わっている気がしないという悩みに対して、本書は「他者の視点」を活用することの重要性を説いています。
タイプ4の悩みに対しては、完璧を目指す前に「仮の状態」で他者からのフィードバックを早期に求めることが推奨されています。一人で悩み続けるよりも、信頼できる同僚や上司に途中段階で見てもらう。そうすることで客観的な視点を得て、修正の方向性を見定めることができます。
管理職として忙しい日々を送る中で、完璧な文章を一人で仕上げようとするのは時間の無駄かもしれません。むしろ、70%の完成度で一度他者に見てもらい、そのフィードバックを元に仕上げる方が、結果的に質の高い文章になることが多いのです。
タイプ5の悩みに対しては、反復的なプロセスが鍵となります。まずは「自分がこう書きたい」という内なる声に従って一気に書き上げる。その後で他者の反応を参考に修正を重ねる。このサイクルを繰り返すことで、伝達の精度が高まっていきます。
最初から相手に合わせた文章を書こうとすると、かえって自分らしさが失われ、当たり障りのない文章になってしまいます。まずは自分の言葉で書き、それを磨いていくという順序が重要なのです。
今日から実践できる「書ける自分」への第一歩
さわらぎ寛子氏の『自分の言葉で書く』が教えてくれるのは、書けないという悩みは決して才能の問題ではなく、適切な方法を知らないだけだということです。5つのパターンに分類された処方箋は、それぞれの悩みに対する具体的で実践可能な解決策を提供してくれます。
明日からの報告書作成、部下へのメール、企画書の執筆。これらすべての場面で、本書の処方箋は威力を発揮するでしょう。何を書けばいいか分からなければ3つの質問に答え、書きたいことが多すぎれば削る勇気を持ち、言葉にできなければ自問自答を重ね、自信がなければ他者に見てもらい、伝わらなければ反復して磨く。このシンプルなステップが、あなたの「書けない」を「書ける」に変えてくれます。
文章を書くという行為は、単なる業務ではなく、あなたの考えや思いを相手に届けるコミュニケーションです。本書の処方箋を実践することで、職場での信頼関係が深まり、プレゼンテーションの説得力が増し、家族とのコミュニケーションも改善されていくでしょう。

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