## 会議で発言しても相手に伝わらない、部下からの信頼を得られない…その原因は組織の「構造」にあるかもしれません
あなたは今、こんな悩みを抱えていませんか?
「昇進したものの、部下とのコミュニケーションがうまくいかない」
「会議でプレゼンしても、なかなか提案が通らない」
「なぜ他の部署との連携がスムーズにいかないのか分からない」
実は、これらの問題の根本原因は、あなたの能力不足ではなく、組織の「構造」そのものにある可能性が高いのです。
本記事では、経営学の巨匠ヘンリー・ミンツバーグの最新作『ミンツバーグの組織論 7つの類型と力学、そしてその先へ』を通じて、組織の仕組みを理解し、あなたが直面している課題の本質を明らかにします。この記事を読むことで、組織の「見えない力」を読み解き、より効果的な戦略を立てることができるようになるでしょう。
組織の「見えない力」を理解する – なぜ同じ優秀な人材でも結果が変わるのか
組織には、表面的には見えない「7つの力」が働いています。この力を理解することで、なぜ同じ能力を持った人でも、所属する組織によって成果が大きく変わるのかが分かります。
統合の力は、リーダーが組織を一つにまとめようとする求心力です。スタートアップ企業や創業間もない会社でよく見られ、カリスマ的な社長の下で迅速な意思決定が行われます。
効率の力は、業務を標準化し合理化しようとする力です。大企業の製造部門や、マニュアル化が進んだ組織で強く働きます。あなたの会社でも、「手順通りに」「ルールに従って」という言葉をよく聞くなら、この力が支配的かもしれません。
熟達の力は、専門家が自らのスキルを磨き自律性を確保しようとする力です。病院の医師や法律事務所の弁護士のように、高度な専門知識を持つ人材が多い組織で見られます。
協働の力は、メンバーが互いに協力し革新的な解決策を見出そうとする力です。広告代理店のプロジェクトチームや、新商品開発部門で強く働きます。
これらの基本的な4つの力に加え、組織をより複雑にする3つの力があります。分離の力は組織を管理しやすい単位に分割しようとし、文化の注入の力は共有された価値観で組織を統合しようとします。そして対立の浸食の力は、個人や部署間の利害対立が組織を引き裂こうとする力です。
組織の「構造」が「戦略」を決める – なぜ優秀な企業でも変化に対応できないのか
多くの経営者は「戦略を決めてから組織を作る」と考えがちですが、実際は逆です。組織の「構造」が、その組織が取れる「戦略」を大きく制約するのです。
この関係性を理解するには、Appleの歴史を見るのが最も分かりやすいでしょう。創業期のAppleは、スティーブ・ジョブズという強力なリーダーが全てを決定する「パーソナル型組織」でした。この構造では、ジョブズのビジョンがそのまま戦略となり、迅速で大胆な意思決定が可能でした。
しかし、世界的な巨大企業となった現在のAppleは、各機能部門が高度に専門化・標準化された「プログラム型」の要素を持つ組織へと変貌しています。この構造変化により、効率的な大量生産は可能になりましたが、創業期のような破壊的なイノベーションは生まれにくくなっています。
あなたの組織でも同じことが起きています。効率性を重視する部署では、新しいアイデアは「前例がない」「リスクが高い」という理由で却下されがちです。一方、イノベーションを求める部署では、細かな計画や予算管理がおろそかになる傾向があります。
あなたの会社の「本当の姿」を診断する方法
組織の構造と戦略の関係を理解したら、次は自分の会社を診断してみましょう。以下の質問に答えることで、あなたの組織の「本当の姿」が見えてきます。
意思決定プロセスをチェックする
- 重要な決定は誰が下しているか?
- 新しい提案が通るまでに何段階の承認が必要か?
- 現場の意見は経営陣に届いているか?
情報の流れを観察する
- 部署間の情報共有はスムーズか?
- 会議の目的は情報共有か、それとも意思決定か?
- 重要な情報は誰から誰に伝わっているか?
評価制度を分析する
- 何が評価されているか(効率性、創造性、協調性など)?
- 昇進する人にはどんな特徴があるか?
- 失敗に対してどのような反応が示されるか?
これらの観察から、あなたの組織でどの「力」が最も強く働いているかが分かります。そして、その力の方向性と、組織が目指すべき戦略との間にズレがあるなら、それが様々な問題の根本原因となっている可能性が高いのです。
組織の「見えない制約」を乗り越える実践的なアプローチ
組織の構造を理解できたら、次はその制約を乗り越える具体的な方法を学びましょう。
構造に逆らわず、活用する
組織の構造を変えることは簡単ではありません。しかし、その構造を理解し活用することで、より効果的に仕事を進めることができます。
効率性を重視する組織では、新しいアイデアを提案する際に「コスト削減効果」や「業務効率化」という観点から説明するのが効果的です。一方、専門性を重視する組織では、「技術的な優位性」や「専門知識の向上」という視点でアプローチしましょう。
組織の「境界」を意識する
多くの問題は、異なる構造を持つ部署や組織の境界で発生します。営業部門(効率性重視)と開発部門(創造性重視)の対立、本社(統制重視)と現場(自律性重視)の溝などがその例です。
この境界を意識し、相手の組織文化や価値観を理解した上でコミュニケーションを取ることで、問題の多くは解決できます。
小さな変化から始める
組織全体を変えることは困難ですが、自分の部署やチーム内の小さな変化なら可能です。まずは、チーム内の情報共有方法を改善したり、メンバーの強みを活かす役割分担を検討したりしてみましょう。
現代の組織課題を読み解く – パーパス経営が失敗する理由
近年、多くの日本企業が「パーパス経営」に取り組んでいますが、その多くが形骸化に悩んでいます。この現象も、組織の構造と戦略の関係から説明できます。
経営層が素晴らしいパーパス(存在意義)を掲げても、それが現場に浸透しない理由は、組織内で「対立の浸食」という力が働いているからです。事業部間の予算獲得競争や、部署間の利害対立が、パーパスの共有を阻害しているのです。
このような状況では、さらなる理念の唱和や研修ではなく、部門間の対立構造を明らかにし、利害を調整するための具体的な仕組みを作ることが必要です。
具体的な対策例
- 部門横断的なプロジェクトチームの設置
- 成果指標の見直し(個別部門の成果だけでなく、全社最適の観点を含める)
- 情報共有の仕組みづくり(定期的な部門間ミーティングなど)
組織を「読む力」が、あなたのキャリアを変える
組織の構造と戦略の関係を理解することで、あなたは単なる「指示待ち人間」から、「組織を読める戦略的思考者」に変わることができます。
昇進への道筋が見える
どのような人材が評価され昇進しているかを観察することで、あなたの組織が本当に求めている能力や行動パターンが分かります。それに合わせて自分の行動を調整することで、より効果的にキャリアを積むことができるでしょう。
部下との関係が改善する
部下が置かれている構造的な制約を理解することで、より適切な指導やサポートが可能になります。「なぜこの部下は指示通りに動かないのか」という疑問の答えが、組織の構造にあることが多いのです。
家庭でのコミュニケーションにも応用できる
組織論で学んだ「構造と戦略の関係」は、家庭内のコミュニケーションにも応用できます。家族それぞれの価値観や行動パターンを理解し、それに合わせたアプローチを取ることで、より良い関係を築くことができるでしょう。
まとめ – 組織の「見えない力」を味方につけよう
ミンツバーグの組織論は、組織という複雑な存在を理解するための強力なツールです。特に、組織の「構造」が「戦略」を規定するという視点は、現代の中間管理職にとって極めて重要な洞察を提供します。
あなたが直面している課題の多くは、個人の能力不足ではなく、組織の構造的な制約によるものかもしれません。その制約を理解し、上手に活用することで、より効果的なリーダーシップを発揮することができるでしょう。
組織の変化は続いています。今後も新しい技術や価値観が組織のあり方を変えていくでしょう。しかし、組織の「見えない力」を読み解く能力は、どんな時代でも通用する普遍的なスキルです。
この力を身につけることで、あなたは単なる管理職から、組織を戦略的に動かせる真のリーダーへと成長することができるのです。


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