「最後まで読んでも、真相がわからない…」
「写真を見た瞬間、すべてが変わった」
そんな読書体験をしたことはありませんか?
40代を迎え、仕事や家庭で様々なプレッシャーを感じる中、単なる暇つぶしではなく、知的な刺激を求める読書を望んでいる方も多いでしょう。道尾秀介の最新作『いけない2』は、まさにそんなあなたにピッタリの一冊です。
この記事では、各章に隠された巧妙な仕掛けと、読者を騙す叙述トリックの構造を詳しく解説します。ただし、これから読む方のために、核心部分はあえて曖昧に表現していますので、安心してお読みください。
第一章「明神の滝に祈ってはいけない」に隠された時系列の罠
第一章では、行方不明になった姉を追う妹の視点と、避難小屋の管理人・大槻の視点が並行して描かれます。多くの読者は、この二つの視点が同じ時間軸で進行していると思い込むでしょう。
しかし、道尾秀介が仕掛けた巧妙な罠があります。章末の写真に写る「干支だるま」が、物語中で示唆される年と異なることで、時系列のずれが暗示されているのです。
このトリックの巧妙さは、読者の「時系列は順序通りである」という先入観を逆手に取っている点にあります。私たちは普段、小説を読む際に登場人物の視点が混在していても、同じ時間軸で物語が進んでいると無意識に想定してしまいます。
さらに注目すべきは、冒頭の祈る少女の写真です。一見すると美しい祈りのポーズに見えますが、実は重要な手がかりが巧妙に隠されています。右手の中指に注目すると、物語の真相が見えてくるのです。
このような細部への徹底したこだわりが、道尾秀介作品の真骨頂といえるでしょう。
第二章「首なし男を助けてはいけない」が描く視覚的矛盾の恐ろしさ
第二章では、夏祭りの日に少年たちが肝試しを計画する中で事件が起こります。引きこもりの伯父が作った「首吊り人形」が物語の鍵となりますが、ここでも視覚情報と文章描写の矛盾が巧妙に仕掛けられています。
章末の写真に写る人形の「指」の描写が、本文中の「指などはなく、手足の先はただ布が丸く縫い合わせられているだけ」という記述と明らかに矛盾しているのです。
この矛盾が示すものは何でしょうか?写真に写っているのが本当に人形なのかという根本的な疑問が浮かび上がります。
特に印象的なのは、無垢な少年・真の「殺しちゃったの?」という言葉です。この一言が、過去の罪悪感を抱える伯父にとって、どれほどの重みを持ったか。善意から発せられた言葉が、予想もしない悲劇を招くという人間関係の複雑さが浮き彫りになります。
第三章「その映像を調べてはいけない」における情報の隠蔽と誤導
第三章では、年老いた容疑者・千木孝憲が息子を殺害したと自白する事件が描かれます。しかし、遺体が見つからず捜査は難航します。
ここでの叙述トリックは、情報の隠蔽と意図的な誤導です。読者は当初、孝憲が息子を殺害したと認識しますが、真実は全く異なります。
章末の写真に写るコスモスの花畑が重要な手がかりとなります。息子が「一番好きだった花」であるコスモス。その美しい花の下に隠された真実とは一体何なのでしょうか。
また、自宅の座卓に飾られた一輪挿しのコスモスも見逃せません。何気ない日常の描写に隠された深い意味を読み取ることが、この章の謎を解く鍵となります。
DVという現代社会の深刻な問題も絡み合い、家族の絆とその歪みを描いた重層的な物語構造となっています。
終章「祈りの声を繋いではいけない」で明かされる全体像
終章では、これまでの3つの物語が一つに繋がり、全ての謎が解き明かされる役割を担います。各章で独立していると思われた事件が、実は密接に関連していたという驚愕の真実が明らかになります。
特に印象的なのは、各登場人物の「祈り」が皮肉な形で成就する様子です。緋里花の両親の「見つかりますように」という祈り、桃花の「姉が見つかりますように」という祈り。これらがどのような形で叶うのかは、読者に深い余韻を残します。
章末の写真に写る鳴り響くスマートフォンが象徴的です。現代社会において、私たちは常に誰かとつながっていながらも、本当の意味でのコミュニケーションを取れているのかという問いかけが込められています。
体験型ミステリーとしての革新性
『いけない2』の最大の特徴は、読者が能動的に謎解きに参加することです。従来のミステリ小説では探偵役が真相を解き明かし、読者はそのプロセスを受動的に追うのが一般的でした。
しかし、この作品では読者自身が探偵の役割を担います。各章末の写真を手がかりに、自分の目で真実を見抜く必要があります。この参加型の読書体験が、従来の小説とは一線を画す革新性を生み出しています。
QRコードでヒントサイトに誘導する仕掛けも用意されており、読者の挑戦を多角的にサポートする構造となっています。考察サイトでの議論や、読了後の感想戦も含めて、一つの作品を中心としたコミュニティが形成される可能性を秘めています。
道尾秀介マジックの到達点
道尾秀介氏は、デビュー以来「道尾マジック」と称される独自の作風で、ジャンルの垣根を超えた新しい形の小説を世に送り出してきました。
『いけない2』は、視覚情報を物語の核に据えることで、読者が能動的に作品と対峙し、自らの知覚と解釈を試されるという、従来の小説の枠を超えた読書体験を提供します。
単なる驚きのためのトリックではなく、人間の心の奥底に潜む「悲しみ」「悪意」「絶望」といった感情を深く抉り出すための手段として機能している点が、この作品の文学的価値を高めています。
人間の本質的な葛藤や不条理を深く描いた作品として、単なるミステリの枠を超えた普遍的なテーマを内包しているのです。
まとめ:知的な読書体験を求める大人のあなたへ
『いけない2』は、忙しい日常の中で質の高い読書体験を求める大人にこそ読んでいただきたい一冊です。
各章に散りばめられた巧妙な仕掛けは、読者の先入観を巧みに利用し、最後まで予想がつかない展開を提供します。真相に気づいた瞬間の衝撃と快感は、他では味わえない特別な体験となるでしょう。
ただし、読後感は決して爽やかではありません。人間の心の闇や社会の不条理を描いた重厚なテーマが根底にあるため、深く考えさせられる余韻が長く続きます。
それでも、知的な挑戦を求める読書家にとって、この作品が提供する体験は間違いなく価値あるものです。あなたも、道尾秀介が仕掛けた巧妙な罠に挑戦してみませんか?
#NR書評猫296 道尾秀介著[いけない2」


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